どうして猫は愛される?

2021年2月12日 

リビング編集部

近年続いている〝猫ブーム〟。人をトリコにする猫の魅力とは? 2月22日の「猫の日」を前に、その秘密に迫ります。

※リビング読者にアンケート。有効回答数900。本文( )内は読者のイニシャル イラスト/macco

あなたは猫が好きですか? 読者にアンケートを行ったところ、59%が「好き・大好き」という結果に。「ペットフード協会」の調査によると、2017年には全国の猫の飼育数が犬を抜いて、現在も増加傾向にあるとされています。

猫の何が今、人を引き付けるのでしょう。まずは愛猫家の読者から挙がった「猫が好き」な理由を紹介。2面では、「猫の心理」の専門家がその理由を読み解きます。

「猫が好きではない」「興味がない」人も、意外な発見があるかも。

理由その❶ツンデレがたまらない!

普段はツンとクールなのに、たまに見せる〝デレ〟の甘えに、思わずキュンとなる飼い主は多いよう。

普段のほどよい距離感と、たまの甘えん坊が好き(KMさん)

愛猫・わらびちゃん

気分によってすり寄ってきたり、そっけなく行ってしまったり、そのツンデレがかわいい(KYさん)

愛猫・マロンちゃん

理由その❷自由気まま、こびないのがいい

気まぐれ、わがまま、自己中心的、なども。人間ではマイナスな性質も、猫ではプラスに捉えられるのは不思議です。

自由であるがままでいてくれるところ(Yさん)

愛猫・このみちゃん

誰にでも愛想よくしない。気ままなところも好き(YHさん)

愛猫・まろんくん

理由その❸〝スリスリ〟などしぐさがかわいい

体をすり付けてくる様子をはじめ、ひざに乗ってくる、脚でフミフミするなど猫独特のしぐさに夢中になる人も多数。

しぐさが見ていて飽きません(MMさん)

愛猫・クロちゃん

さりげなくスリスリしてくるところがいとおしい(SMさん)

理由その❹ふわふわ、モフモフが最高!

温かく柔らかい猫の体。それを覆う毛並みの手ざわり。ふれているだけで飼い主は幸せな気分に。

例えるなら、上等の毛皮でできた袋にお湯が入っているような。気持ちよい〝たぷん〟感です(NKさん)

愛猫・福くん

そのほかにも!

  • 毎日腕枕で一緒に寝てくれる(HMさん)
  • じっと見つめる大きな目(NYさん)
  • のどをゴロゴロ鳴らすところ(TFさん)
  • 甘える人をちゃんと選んでいる(MFさん)
  • すべてに癒やされる(HHさん)
  • 頭がいいところ(TSさん)
  • 身のこなし、体のラインが美しい(MCさん)
  • 本当にすべてがかわいい!(ISさん)

などたくさんの意見がありました。

〝ネコ心〟の専門家に聞く!
人はなぜに魅了されるの?

1面で紹介した読者の「猫が好きな理由」を、人の心理と猫の特性から深掘り。京都大学文学研究科心理学研究室で猫の心理を研究する「CAMP NYAN(キャンプニャン)」に解説してもらいました。教えてくれたのは、メンバーの千々岩眸(ちぢいわひとみ)さん、荒堀みのりさん、高木佐保さんです。

自由気ままな性格に人は憧れる?

―猫が「ツンデレ」「自由気まま」といった性質が多いのはなぜ?

荒堀さん(以下荒) 猫がペットとなったのは人が農耕を始めたとき。穀物を狙うネズミを目的として人に寄ってきたと思われます。狩猟犬など能力を求めて人が交配に関わることも多かった犬とは違い、猫は自然繁殖がほとんど。だから、自由気ままな性質も残ってきたのでしょう。

高木さん(以下高) 祖先であるリビアヤマネコは単独で行動する動物。群れるのが好きではない、ということも受け継いでいると思います。

―そんな性質に魅力を感じる人も多いようですが。

千々岩さん(以下千) ストレスフルな現代社会では、猫の気ままな生き方に憧れる人も多いのでは。「猫の飼い主は内向的な人が多い」とも言われています。自分と同じマイペースな気質を好むのかもしれませんね。

 普段クールだから甘えてくれたらうれしさ倍増、という「ツンデレ」のギャップにひかれる人も多いのでしょう。

―気ままな猫も、飼い主に愛情を持っているのでしょうか。

 猫と飼い主の関係を調べた研究によると、ある程度愛情があって甘えていると考えられます。

 一方でべったり甘える猫もいますね。飼い猫は元野良猫が多いのですが、人に拾われるということは警戒心が薄く、甘えん坊な性質ということ。近年はそういったタイプが増えているみたいです。

猫に触れているだけで癒やされる効果が

―スリスリなどのしぐさが好き、という意見も多くありました。

 一般にはマーキングのための行為と言われますが、猫自身が「なでてほしい」「スキンシップがしたい」といった時が多い気がします。

―フワフワ、モフモフの手触りに夢中な人も。

 人が猫のようなふわふわして柔らかなものに触れると、オキシトシンというホルモンが分泌されます。これにはリラックス効果があり、母親が赤ちゃんに授乳するときにも出ているんですよ。

―わが子を抱いているような気持ちになるんですね。

 飼い主が猫に話しかける声を分析すると、子どもや赤ちゃんへ話すのと同じトーンだったという研究結果も。

 顔の中心にある大きな目、赤ちゃんに似た鳴き声など、猫にはまさに人間の乳幼児のような特徴があります。それが人の「守ってあげたい」気持ちをくすぐるのでしょう。

教えてくれたのは

CAMP NYAN(Companion Animal Mind Project)

京都大学文学研究科心理学研究室において犬・猫の心理を研究するプロジェクト。その中でも猫を専門としているチームです。

前列左/高木さん、中央/荒堀さん、後列左/千々岩さん

KYOTO&CAT
京都と猫にまつわるマメ知識を紹介

猫に官位を与えた天皇

平安時代、清少納言が仕えた中宮定子の夫・一条天皇は、なんと「五位」という高い官位を愛猫に与えたのだとか。「枕草子」には、天皇がその猫に〝乳母〟を付けるなど溺愛ぶりが描かれています。

日本最古の長編小説にも登場

紫式部によって書かれた「源氏物語」。猫はその中で重要な役割を果たしています。青年貴族の柏木は思いを寄せていた女三宮の姿を偶然目撃。つながれていた猫がひもで部屋の御簾を引っかけたことが原因でした。その後ふたりは結ばれ、第2の主人公・薫が誕生します。

寺の堂内を招き猫が埋め尽くす

2019年、京都に新たな猫スポットが誕生。法華宗大本山妙蓮寺の末寺、護国寺中京別院「猫恋寺(みょうれんじ)」です。二条城近く、民家のような堂内には招き猫約1000体がずらり! 住職・市瀬俊照(いちのせしゅんしょう)さんが手描きする招き猫の御朱印が人気だそう。完全予約制。連絡先/090(8238)0307(住職・市瀬さん)

ツシマヤマネコに京都で会える

昨年12月、京都市動物園にやってきたのがツシマヤマネコのキイチ。しばらく他園にいて久しぶりに戻ってきたそう。日本では対馬にのみ生息するツシマヤマネコ。その数は100頭前後とされ、絶滅危惧種に指定されています。同園ではキイチを含め計4頭を飼育中。

人と猫がともに幸せであるように

コロナ禍で在宅時間が増え、猫を飼い始めた人もいるそう。でも、飼う前に知っておくべきことがあります。

「令和元年度には約1000頭の猫を収容しました」。そう話すのは、京都市南区にある「京都動物愛護センター」所長の田邊輝雄さん。所有者不明の犬・猫の収容・保護を行っている同センター。猫の場合、収容される多くが野良猫の産み落とした子猫だそうですが、中には飼うのが困難になった人から引き取ってほしいという相談もあるのだとか。

「飼育費用の負担のほか飼い主の高齢化、生まれた子どもがアレルギーになった、転勤で飼えなくなった、などの理由が挙げられます。飼う際には、自身のライフステージや環境の変化も見越して考えてもらえれば」

収容頭数の約2割は譲渡されますが、多くは衰弱死ややむを得ず殺処分に。

「まずは収容数を減らすべく、終生飼養や室内飼育、避妊・去勢といった啓発を実施。また、地域住民が合同で野良猫を適切に飼養する『まちねこ活動』も推進しています。人と猫が幸せに共存できるよう、行動していただければと思います」(田邊さん)

京都動物愛護センター
所長 田邊輝雄さん

(2021年2月13日号より)