ウェルビーイングのための住まい

2022年5月20日 

リビング編集部

近頃、さまざまな分野で注目されている〝ウェルビーイング〟。身体的・精神的・社会的によい状態のことです。それには、住まいも大切に。家族みんなが心豊かに生きるための〝ウェルビーイングな家〟について、考えてみませんか。

※住宅の写真はいずれもイメージ

一時的ではなく幸せな状態が続くこと

「〝happiness(ハピネス)〟が瞬間的に感情が動く一時の幸せであるのに対し、〝well-being(ウェルビーイング)〟は幸福な状態が持続することを指します」と、京都大学大学院教授の三浦研さん。強い幸せではないものの、本質的な心身の安寧を保てている状態が〝ウェルビーイング〟だといいます。「『幸福学』を研究する慶應義塾大学大学院教授の前野隆司さんによると、幸せの構成要素は『自己実現と成長』『つながりと感謝』『前向きと楽観』『独立とマイペース』。これらを踏まえ、〝ウェルビーイングな住まい〟を考えてみましょう。さらに、高齢期の生活にも着目します」

京都大学 大学院工学研究科 建築学専攻
建築環境計画学講座
教授 三浦研さん

https://www.miuraken.archi.kyoto-u.ac.jp/

アクティビティーも大切に 
人とより良くつながる場を

幸せな状態を続けるためには先を見据えた家づくりが大事ですが、先行きに不安な気持ちも湧いてくるかもしれません。

「心配事ばかりにとらわれず、前向きに過ごせるような工夫も大切です。例えば、趣味のためのスペースや、アクティビティーができる空間をつくること。ハンモックを取り付けたり、バーベキューができる庭やバルコニーを設けたりするのもいいですね。家族にとっての楽しい暮らしをイメージしてみると、ポジティブな気持ちで住まいについて考えられると思います」(三浦さん)

家族はもちろん、親戚や友人など、家に招く人も気持ちよく過ごせる空間。それも〝ウェルビーイングな家〟のポイントになるそう。「住まいは人とのつながりの場です」と三浦さん。居心地の良い部屋に集えるようにしたいですね。

「加えて、今は家にいながらオンラインで多くの人とつながれる時代です。Wi―Fiなどの通信回線もライフラインの一つと考えて整備しましょう。

他者だけではなく、環境との関わりにも目を向けて。リフォームや住み替えといった環境の変化は、人に影響を与えるもの。より良い住まいは、自分自身をプラスに変えてくれますよ」

子どもも大人も日々成長 
一人で過ごせるスペースも大事

人生において、長い時間を過ごす家。

「誰もがそれぞれの人生を生きる役者さんだとすると、住まいはその〝舞台〟。子どもに限らず、大人も日々成長します。大道具・小道具を準備するように、オンライン学習や在宅ワーク用のスペースを設けるなど、自己実現のための用意を」(三浦さん)

家族それぞれの一人の時間を持つことも、〝ウェルビーイング〟につながるとか。

「成長に伴いきょうだいの部屋を分けるのも一つ。また、おうち時間が長くなり、生活時間の重なりが増えた家庭は多いのではないでしょうか。リタイア後の夫婦も、一緒に家にいる時間が長くなりがちです。子ども部屋をリフォームして書斎に変えるなど、一人の時間が過ごせる場所をつくってみては」

段差やトイレ、高齢期に向けて今から工夫

家づくりに取り組む人は、30~40代が多いとのこと。「家を建てた当初の若いうちは気にならなくても、将来的に住みづらくなる箇所が出てくる可能性があります。〝ウェルビーイングな家〟として暮らし続けられるよう、定年時くらいのタイミングで住まいを見直しましょう」と三浦さん。

まずはヒートショックへの注意。窓やトイレ、浴室などの断熱性を高めるリフォームや、暖冷房設備の導入により、室内の温度差を整えることができます。

そして、転倒防止のためバリアフリーへ。段差をなくす、手すりを取り付ける、玄関にスロープを設置するといった対策法があります。

「トイレも気に掛けてほしいポイントです。年を重ねると夜間頻尿に悩む人が増えるので、寝室とトイレが隣り合った間取りが理想的。便座をドアと直角に配置すると、車いすでも移動しやすいです」

排水経路は後から変更しづらい場合もあるので、これから家を建てる人は意識を。また、昔と今では耐震基準が違うため、耐震性もチェックしておきたいところです。

「こうしたリフォームに使える補助金もあります。今年は新たに『こどもみらい住宅支援事業』(※)が始まったので、活用を検討しては。人生100年時代といわれる今。高齢になり判断力が落ちたり、介護が必要になる前に、将来も幸せに暮らせる家の準備をしてもらえたらと思います」

※新築・リフォームとも対象。

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(2022年5月21日号より)