子育て中、ほっと一息つける場に

2024年11月1日 

リビング編集部

2021年に上京区で始まった子ども服の交換会。今では市内8カ所に広がり、出品物も増えて〝地域のクローゼット〟としてたくさんの子育て中の親に活用されています。リサイクルだけではない、会に込められた思いを主催者に聞きました。

撮影/深村英司

畳に置かれたたくさんの子ども服やベビー用品。9月21日に左京西部いきいき市民活動センターのふれあいサロンで行われた「ベビー&キッズ用品交換会」には、乳幼児を連れた母親が次々に訪れていました。同会は、不要な子ども服などを持ち寄り、その中から欲しいものを無料でもらえるという内容。初めての人もいれば、「ここでもらったベビーカー、もう使わないから」と戻して別の物を持って帰る人も。まさに〝地域のクローゼット〟です。

「こんにちは」「お子さんは何歳?」とにこやかに話しかけているのは、武田みどりさん。同イベントを主催する市民団体「At-Kyoto(アットキョウト)」の代表です。新生児用品を探しにきた夫婦には、「これもあったら便利」とアドバイス。出産前のプレママに先輩ママを紹介するなど、母親同士をつなぐこともあるのだとか。

参加者は持ってきた物を自分で並べ、自由に欲しい物を探します

「家で子育てをしていると、認められたりほめられたりすることって少ないですよね。ここでは不要な服が喜ばれたり、自分の経験が他のお母さんの役に立ったり。来てよかった、と感じられる場になれば」と武田さん。

「物をもらうだけでもいいし、ちょっと立ち寄るだけでもいい。来た人みんなにとって居心地のいい場にしたいんです」

何度か来ているという近隣の母親は、「子ども服はすぐ着られなくなるのでありがたい存在。他の人とおしゃべりすることもあるけれど、服を見るだけでも気軽に来られます」と話していました。

子どもたちは本を読んだりおもちゃで遊んだりして過ごしていました
近隣住民が「良かったら」と持ってきてくれた本も

〝お母さんたちの孤独を何とかしたい〟

同団体は、第3子がダウン症である武田さんが、同じくダウン症の子を育てる家族3組とともに立ち上げました。2014年から年に1度、ダウン症の人と一緒に歩くことで知識の啓発と当事者の相互援助につなげる「バディウォーク®」を開催しています。

「子どもがダウン症と分かって、自分だけでは行き詰まることもあり、他者とのつながりが必要と感じたんです。それ以前はママ友作りも苦手で、お母さんたちが集まる場に行ったことがありませんでした」という武田さん。「自分と同じように、人の輪に一歩踏み出すのが苦手なお母さんも行きやすい場を作りたい」。そう思っていた矢先、社会はコロナ禍に。

「2019年から務めている民生委員の活動の中でもお母さんたちの孤独が増しているのを感じて。考え出したのが『ベビー&キッズ用品交換会』でした。物の交換がメインだから無理に話さなくてもいい。その場に行くだけで『みんな同じようにがんばっている』と安心できるのではと」

地元の上京区から始めた同イベント。他地域から来た参加者からも要望があり、現在では上京、左京、東山、伏見の4つの区、8カ所で毎月開催(場所により2カ月に1度や毎週開催のところも)。各エリアのいきいき市民活動センターや図書館、子ども食堂との共催もあるそう。

廃材を使って創作を行う団体「スタジオぐるり」のワークショップを同時開催することも。「大人も子どもも、楽しく過ごせるように」(武田さん)

「『月に一度、あの場がある』と思ってもらえる、お母さんたちの心のよりどころになれば。他の子どもの成長を見聞きできる貴重な機会にもなります。これからも地域で受け継がれ、根付いてほしいですね」

開催予定など詳細は同団体のホームページ=https://at-kyoto.net=で。問い合わせは武田さん=TEL:090(5057)5932=へ。

代表の武田さん(左)。取材日に運営の手伝いに来ていた友人の辻さんと

(2024年11月2日号より)