個人宅の玄関先が小さな図書館に。本の貸し借りを通じて、住民同士の交流をはかる活動を取材しました。
撮影/児嶋肇
泉涌寺のほど近く、清水焼の工房も多くある東山区東林町。路地を歩いていると、一軒の玄関先に小さな木箱が。中には本が25冊ほど。
「子どもの絵本や京都文化の雑誌などを入れています。誰でも自由に借りられますよ」。そう話すのは、この家に住む小原亜紗子さん。民間団体「東山区まちじゅう図書館プロジェクト実行委員会」の代表です。
「東山エリアに小さな私設図書館をたくさん作り、本を通じて人々のつながりを作りたい」。その目標を掲げ、同会を発足したのが2020年5月。きっかけは、自身の出産・育児でした。
5年前、第1子の妊娠中にこの地に引っ越してきた小原さん。周囲の人は親切で、暮らしやすいところだと感じたそう。しかし、育児が始まると壁にぶつかります。
「初めての育児で常に緊張していました。子どもとうまく関われているのか不安で、孤独感を抱いていたんです」
そんな小原さんを救ったのは、一冊の絵本。近所に住む、船津茂子さんがプレゼントしてくれたものでした。
「子どもは1歳になったころでしたが、その本を読んであげたらとても喜んで。『本を読むだけでも子育てになるんだ』と、ほっと救われた気がしました」
絵本を通して子どもの成長も感じられるようになったという小原さん。子どもがもっと本に触れる機会を増やしたいと思うように。ところが、この東山の五条通以南のエリアは図書館が遠く、近隣には気軽に児童書を買える書店もないそう。そんな中、コロナ禍に突入。
「出かけにくい状況下で、地域で本の貸し借りができれば、という思いが強くなりました」
その思いに賛同した船津さん、ママ友の山内麻子さんとともに同会の活動をスタートしました。
親子でくつろげる図書スペースも完成
まずは、小さな〝図書箱”を作成してメンバー3人の自宅に設置。それぞれが図書館の名前も考えました。夫が陶芸家の山内さんは、「コハクガマ図書館」と名付けて絵本のほか陶芸・芸術に関する書籍や図録を設置。船津さん宅の「おふね図書館」で借りられるのは、昭和から平成にかけての絵本の数々。自身の子どもや孫のために買いそろえたものです。小原さんの「ラッコ図書館」も含め、個性が光ります。
「本を借りるほか、近所の人が読まなくなった蔵書を寄付してくれたり、図書館をきっかけにコミュニケーションが増えました」と小原さん。週に1~2人は利用者があるそう。
「子育て中のお母さんなら、絵本を見て『ここも育児をがんばっているんだな』と共感してもらえるのでは。もちろん、大人もどんどん活用してもらいたいです」
さらに、小原さんは自身の仕事場の2階をリノベーション。昨年12月に読書スペースがある「ルーミー図書館」も開館しました。「社会が落ち着けば、ここで親子が楽しめるイベントも行いたいですね」と話します。
今年はもう2カ所、図書箱の設置先が増える予定。「おいおいはカフェやショップとも提携し、本を置いてもらえれば。本の貸し借りで人がつながり、この東山エリアがさらに盛り上がればすてきだな、と思います」
自宅に図書箱を置きたい、という人も随時募集中とか。活動の詳細は、フェイスブック=https://www.facebook.com/higashiyama.machitosho=で。
「ルーミー図書館」
- 東山区今熊野椥ノ森町1―10
- 午前9時30分~午後4時30分、不定休
- 連絡先:TEL:075(203)0748(小原さん)
(2022年3月12日号より)
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