上の写真のような看板や標識。町で見かけること、ありますよね。9月1日は「防災の日」。災害が起きる前から避難場所や避難所について改めて確認し、把握しておきましょう。
〝緊急的に〟〝一定期間〟 役割が異なる避難の場
「避難場所」と「避難所」。その役割の違いを知っていますか。
「避難場所」は、災害の危険から身を守るために、〝緊急的に〟避難する場所。正式には「指定緊急避難場所」といいます。市町村によって、「一時避難場所」「広域避難場所」といった名称が使われる場合も。公民館や公園、学校のグラウンド、河川敷などが指定されており、災害種別ごとに使い分けられています。例えば、火事と地震のときは利用できて、洪水や高潮の際は対象外となる河川敷があるなど。身近な避難場所がどの災害に対応しているかについても把握しておきたいですね。ほか、「津波避難ビル」など特定の災害に特化した避難場所がある地域もあります。
一方、「避難所」は、災害による被害を受けた人や受ける可能性のある人が、危険性がなくなるまで〝一定期間〟避難生活をする場所です。災害で家に帰れない人がいる期間にも開設されます。公民館や学校の体育館など市町村が指定し、広く一般の人が利用するのが「指定一般避難所」。高齢者や障がいのある人、妊産婦など災害時要配慮者のための「指定福祉避難所」などがあるところも。これらも市町村で呼称が異なります。
2013年6月に災害対策基本法が改正され、市町村長は避難場所と避難所を区別して指定し、住民へ周知することが義務化されました。避難場所・避難所、災害を表すピクトグラムも制定されていて、看板や誘導標識に用いられています(上、下の写真参照)。
避難場所や避難所の所在地などについては各市町村のホームページなどで公開されているほか、京都府の「きょうと危機管理WEB」でもチェックできます。ハザードマップなどと合わせて、確認しておいて。
(1面記事確認・京都府 危機管理部 災害対策課)
普段は市民の憩いの公園 防災機能を備えた避難場所
子どもが遊んだり近隣の人がひと休みしたり。普段は憩いの場である公園ですが、防災機能を備え、災害時に利用できるところもあります。
再整備され防災設備が新設
京都市「錦坊城公園」
京都市では、施設が老朽化した公園の再整備や防災機能の充実化を進めています。災害時の地域の集合場所でもある「錦坊城公園」(中京区)もそのうちの一つ。昨年11月から工事が始まり、2024年7月に再開園されました。
遊具などとともに新設されたのが、「かまどベンチ」や「マンホールトイレ」。普段はベンチとして使われる「かまどベンチ」は、座板を外すと炊き出し用のかまどに姿を変えます。ふたを開けるとトイレとして使用できる「マンホールトイレ」も。これら防災設備は、住民の希望もあり設置されたそう。
災害時に使用できる
「マンホールトイレ」
地震被害などによる断水時であっても、トイレとして機能するのが「マンホールトイレ」。下水道に直接つながっているなど災害時に使用が可能。避難所や公園などに設置されています。「衛生的なトイレを確保できるよう、京都市ではマンホールトイレの設置とともに、トイレを囲う上屋や和・洋式の便座の備蓄を進めています」(京都市行財政局)
豪雨のときに役立つ調整池もあります
長岡京市「西代(にしんだい)里山公園」
遊具のほかホタルを育てる「ホタル広場」や「農業体験農園」などがある、自然豊かな「西代里山公園」。長岡京市で、一時的な屋外の避難場所(広域避難場所)に指定されています。
芝生の多目的広場は豪雨時に雨水がためられる調整池になっています。イベント広場には「かまどベンチ」や、仮設テントとして救護室などに使える「防災あずまや」が。管理棟は、停電時も対応できるように太陽光パネルが設置されています。公園の隣には、防災ヘリが離着陸できるヘリポートもありますよ。
ユニバーサルデザイン化で要配慮者にもやさしい避難所に
災害発生後、長引くこともある避難所生活。
「東日本大震災の際も長期の避難所生活で、高齢者や障がい者といった要配慮者が体調を崩す、または悪化し死に至る災害関連死が問題になりました」と、京都府健康福祉部地域福祉推進課の担当者。「災害時、要配慮者の方は必要なケアが受けられず生活機能が低下しがちです。また、健康であっても、慣れない生活の中で誰もが要配慮者になりえます。ですが、要配慮者のための『福祉避難所』の数は限りがあります。
そこで、京都府では一般避難所のユニバーサルデザイン化を推進。京都府総合防災訓練などで、みんなが過ごしやすい避難所環境づくりを呼びかけています」(下記参照)
そうしたハード面を整えるほか、避難所生活を支援できる人材育成にも力を入れています。福祉専門職で構成された「京都府災害派遣福祉チーム」、通称「京都DWAT(ディーワット)」を設立。避難所環境の整備や要配慮者のケアなど、福祉的な視点で支援を行っています。災害発生時の派遣のほか、平常時には地域の防災イベントにも参加するそう。
「こうした組織も活用して、平常時から避難所運営訓練などで配慮が必要な地域の人を把握したり、環境整備の重要性を理解したりして備えていただければと思います」
避難所では、困っている人を気にかけて共同生活を
もし、避難所生活をすることになったら…。被災者支援のNPOでの活動経験もある京都大学防災研究所准教授の松田曜子さんに避難所での心構えについて聞きました。
「避難所運営の行政職員は数人で交代制というケースが多いので、地域の事情を知っている自治会などが主体となって運営できると良いですね」
被災地での経験があるような外部ボランティアも活用してほしいとか。
「現場では困っている人ほど意見を言い出せない場合も。生活している人は困り事を相談して。運営する人は他の人やボランティアを頼って一人で抱え込まないように。誰かに任せきりにするのではなく、共同生活を送る上で周りの人を気にかけたいですね」
また、災害に備えて「地域で避難所運営の訓練をするのもおすすめ。過去に小学校で避難所体験をしたときは『支援物資が足りない、どうする?』『つえを持った人は仮設トイレまで行ける?』など課題に対して知恵を出し合いました。想像力を普段から働かせることで、いざという災害時に生かせると思います」
教えてくれたのは
京都大学 防災研究所
巨大災害研究センター
准教授 博士(工学)
松田曜子さん
(2024年8月31日号より)
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