公園が新たな役割を担っています

2025年4月25日 

リビング編集部

身近な憩いの場である公園。近年、より地域で親しまれる空間へと変化しています。今回は、府内の五つのスポットを紹介。公園で人と人がつながったり、文化を発信したり。新たな役目を持った拠点として、スタートしているようです。

地域住民主体で運営交流施設がオープン

京阪「墨染」駅から徒歩5分の場所にある「北鍵屋(きたかぎや)公園」。昨年11月、2282㎡の公園に「セブン-イレブン伏見北鍵屋公園店」と、公園利用者の誰もが利用できる「地域交流施設」がオープンしました。

「地域の人たちに親しまれてきた公園ですが、施設の老朽化、清掃や草刈りを行う公園愛護協力会の担い手不足が、課題となっていました」とは、京都市建設局の大野さん。

そこで、2022年から藤森学区の住民、京都市、公募で選ばれた民間企業「セブン-イレブン・ジャパン」の3者により、地域の課題解決や公園の将来像・使い方の検討を開始。約2年間の共同研究を経て、「地域交流施設」の設置が決まりました。管理運営していくのは、地域住民が主体となった「北鍵屋公園運営委員会」です。

コンビニの出店については「公園内に24時間人がいることとなり、夜間の公園利用者にとってもメリットに」と大野さん。

北鍵屋公園(京都市伏見区)

2024年に発足した北鍵屋公園運営委員会。3月には「きたかぎやオープンパーク」を開催、トークセッションやクイズ大会が行われました。地域交流施設の前で(写真提供/伏見の写真館これから)
店舗に京都市産木材を活用した「セブン-イレブン伏見北鍵屋公園店」。トイレは公園利用者も使用が可能。駐車場は一部を緑化(写真提供/セブン-イレブン・ジャパン)

子育て世代の意見を反映

同運営委員会のメンバーには、子育て世代も。親が子どもを見守りやすいようなレイアウトの工夫や、人工芝の設置、遊具の選定などで、アイデアが生かされているとか。

多世代が交流できる場所にしていきたいと、同公園のコンセプトは「みんなでつなげる、みんなの居場所」です。

地域交流施設には、畳の小上がりスペースや授乳スペース、ウッドデッキも導入(写真提供/京都市)
うんていとすべり台を備えた複合遊具(右)。選定には子どもの意見を取り入れたそう。左は新しく設置した人工芝

DATA
伏見区深草北鍵屋町990-3。問い合わせは、京都市建設局みどり政策推進室=TEL:075(222)4114=へ

京都市内六つの公園で
「Park-UP事業」が進行中

「北鍵屋公園」の取り組みは、地域が主体となって、公園の将来像や使い方を検討し、柔軟に管理運営していく、京都市の「Park-UP(パークアップ)事業」の第一弾。ほかにも、竹間公園(中京区)や船岡山公園(北区)など、市内六つの公園で進行中(※)。公園の魅力向上に加え、地域コミュニティーの活性化も目指し、住民が主体となって公園の運営が進められています。

※2025年3月の取材時

農家や企業、住民が連携 人と人のつながりが生まれる場に

公園を拠点に、町全体の魅力向上を目指す─。そんな取り組みが、久御山町で行われています。

久御山町役場から徒歩5分の「久御山中央公園」。「同園を再整備することで、町の強みである『農業』と『工業』、そして『住民』を結びつけようという『久御山まちのにわ構想』が2019年に策定されました」とは、久御山町役場都市整備部建設課の山本貢大さん。

町内の農家や企業、地域住民などが、同構想のプロジェクト推進会議に参加。2020年、実証実験として、「まちのがっこう」というイベントを開催。町内サークルなどによるステージ発表、地域の飲食店や農家が出店するマルシェが実施されました。

「公園の中央にあった噴水を、木の板で覆ってステージにしたところ、使い勝手が良さそうだったので、これを機に噴水は撤去し、常設のステージに。分断されていた児童広場との間に階段も取り付け、新たな動線を作りました」。

久御山中央公園(久御山町)

久御山中央公園で行われた「まちのがっこう」の様子

同イベントの2回目からは、地域住民で構成された団体「KUMIDAN(くみだん)」が催しの運営主体に。

「ステージ発表を目標に町民たちがレッスンを頑張ったり、出店者同士顔なじみになったり。子どもも大人も、新しいことに挑戦できて、つながりが生まれる場所になれば」とは、同団体代表の平野典子さん。

公園は、ほかにもイルミネーションの実施や、地域の学生が行うステージイベントなどで活用されているのだとか。

「2026年に広場のある公園北側を、2027年にグラウンドの工事を予定。こちらも住民の方の意見を聞きながら、整備を進めていきます」(山本さん)

園内のグラウンドゴルフ場では、町出身の大学生グループによる防災をテーマにしたキャンプイベントも開催

DATA
久御山町田井新荒見地内。問い合わせは、久御山町役場都市整備部建設課=TEL:075(631)9961=へ

高さ約3.3mのバーチカルが登場 スケートボードが楽しめます

2021年に開催された東京オリンピックで正式種目になったことを機に、注目が高まっているスケートボード。こういったアーバンスポーツ(※1)を楽しめる場所として、4月20日、「京都市宝が池公園運動施設アーバンスポーツパーク」がオープン。

高さ約3.3mのバーチカル(※2)を設置した「メインパーク」と、初心者でも利用しやすい「ミニパーク」の2つで構成されています。

「京都市宝が池公園運動施設アーバンスポーツパーク」(京都市左京区)

鴨川をイメージした傾斜面(中央)や、ハーフパイプ状のバーチカル(奥)のある「メインパーク」
テニスコートに隣接した初心者向けの「ミニパーク」。3人制バスケ専用のコートも

「これまで、スケートボードの利用ができる公園は、京都市内では南区の火打形(ひうちがた)公園しかありませんでした。2022年度にスポーツを応援する市民の方から寄付をいただいたことがきっかけで、このパークの開業が決定。市内2カ所目です」とは、京都市市民スポーツ振興室担当者。

「子どもも大人も気軽に楽しめるのがアーバンスポーツの魅力。この場所が、文化の発信地となり、京都のアーバンスポーツがいっそう盛り上がってほしいですね」

(※1)スケートボードや3人制バスケ、ダブルダッチなど、都市を舞台にしたスポーツのこと
(※2)スケートボードなどの競技で使用するハーフパイプ状(U字型)の構造物

DATA
京都市左京区松ケ崎東池ノ内町2。問い合わせは、京都市市民スポーツ振興室=TEL:075(222)3135=へ

近郊エリアにも注目

農業体験ができる〝緑の拠点〟へ 障害者の就労支援としても利用

3月15日、京田辺市にある田辺公園の新エリアとしてオープンした「京田辺クロスパーク」。〝緑と農に親しむ公園〟がテーマです。京都府農業総合研究所の跡地を活用したのだそう。

田辺公園「京田辺クロスパーク」(京田辺市)

ビニールハウスでの農業体験の様子。「スタッフと接することで、利用者が障害者に対して理解を深められる場所にもなれば」

「跡地の利用を検討した当時は、障害者の仕事場不足も問題になっているときでした。そこで、自然を生かしながら、障害者の就労支援施設の役割も担う公園として整備を進めることに」とは、京田辺市建設部公園緑地課の篠嵜さん。

同パーク内に栽培用の露地やビニールハウスを導入。公園利用者は、種まきや手入れ、収穫などの農業体験ができます。「ビニールハウスでは水はけのよい砂栽培を採用しているので、日常管理が簡単。障害のあるスタッフが担当しています。利用者も農具を使わずハサミで収穫作業ができますよ」

こだわりの砂場、果樹や竹林が残るプレーパークも。〝誰もがのびのびと遊べる場に〟という思いで、創意工夫を発揮できる遊び場を作っていくといいます。

今後は、子どもからシニアまでが交流できる〝緑の拠点〟へと、近隣の学校や企業との連携を進めていくそうです。

中央に位置する砂場。砂場について研究する、同志社女子大学特任教授の笠間さんのアドバイスのもと、造形しやすい砂が使われているそう
同園エントランス

DATA
京田辺市興戸小モ詰7-3、TEL:0774(29)9124

「センター棟」を新設 子どもの年齢に合わせた広場も

 長岡公園(長岡京市)
2025年9月に完成予定!

センター棟の愛称は、「fuRari」(ふらり)」に。市民からの投票で決まりました

「長岡公園」は、長岡京市に本社を置く村田製作所との包括連携協定の一つとして、9月の完成を目指し、再整備が進んでいます。

約4haの敷地に多目的グラウンドやテニスコートなどを有する同園も、施設などの老朽化が進み、利用者が限られていたといいます。今回の整備では、〝多様な人々が集う場〟を目指して、大きな屋根のあるセンター棟を新設。太陽光パネルと村田製作所製の蓄電池が設置され、太陽光エネルギーも利用していくそう。

隣接して、乳幼児向けの広場と、芝生の築山やすり鉢形状を取り入れた広場も造られるとか。

「子どもを少し離れた場所からでも見守れるよう、見渡しの良い空間に生まれ変わります」(長岡京市建設交通部公園緑地課の担当者)

子どもがボール遊びなどで活用していたグラウンドや、大人の利用者が多いテニスコートなどは、そのまま残る予定。「幅広い年代の方にとって、いっそう快適な場所になれば」

傾斜を生かした造りの広場も

DATA
長岡京市天神2丁目。問い合わせは、長岡京市公園緑地課公園整備係=TEL:075(955)3146=へ

(2025年4月26日号より)