からだのギモンシリーズ 六月病、気象病、食中毒

2021年6月18日 

リビング編集部

近頃、体に不調が出やすい…。それには、今の時期の気候が関係しているかもしれません。気を付けたい健康のトラブルについて、専門家に聞きました。

イラスト/オカモトチアキ

心と体に不調が起こる〝六月病〟〝気象病〟

憂鬱(ゆううつ)になる、不安になる、イライラするといった心の不調。これらの症状は〝六月病〟の可能性があるといいます。

「〝六月病〟は医学用語ではありませんが、適応障害の一種。いわゆる五月病よりも時期が遅れて現れる不調です」とは、京都府立医科大学精神機能病態学准教授の富永敏行先生。

適応障害とは、環境にうまく順応できず心身に不調が生じるもの。仕事や日常生活にも支障を来します。

「心の不調は自分では気づきにくいですが、長く放置しているとうつ病に移行することも。日々のセルフケアマネジメントも大切です」

また、だるい、疲れやすい、眠れない、食欲が落ちるなど、体の不調も現れやすいとか。

「こちらも医学用語ではありませんが、〝気象病〟に当てはまる症状ですね。急激な気圧の変化や寒暖差などが原因で心身に不調が出ることを指します。けがの痕など元々あった慢性の痛みが強まったり、頭痛、めまい、眠気が生じる場合もあります」

心と体の不調は互いに影響を及ぼす場合もあるそう。悪化しないよう、早めの対処が大切です。

〝六月病〟チェックポイント

気圧変動で崩れる自律神経のバランス

気象病の原因となるのが〝自律神経の乱れ〟。自律神経には交感神経と副交感神経があり、互いにバランスをとって働いています。

「交感神経は運動時や緊張状態で働き、副交感神経は休養やリラックスしているときに働きます。この二つはアクセルとブレーキの関係で、日中は交感神経が、夜間は副交感神経が優位に。気圧が変動すると、気圧を感じるセンサーの役割をする『内耳(ないじ)』がうまく機能しなくなります。そうして交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、気象病が引き起こされます。

慢性の痛みを抱えている人の場合、気象病によって交感神経が過剰に興奮すると、本来ならば感じない刺激にも過敏になって痛みを強く感じるようになります」(富永先生)

祝日がなくリフレッシュしづらい6月

仕事や生活面に変化がある人が増える4月から、数えて3カ月目にあたる6月。

「〝三日・三月・三年〟という言葉があるように、3の節目はストレスがたまって仕事などへの意欲がなくなりやすい時期。4月の新年度から緊張しながらこなしてきたものの、疲労が蓄積してくるのが6月です。これが〝六月病〟が引き起こされる一因となります」と富永先生。

「加えて、6月は祝日がない月。休みが少なく、心身のリフレッシュをする機会が減る人が多いのではないでしょうか」

さらに、気候による体調不良も関係。

「今年は梅雨入りが早かったですが、梅雨は低気圧の影響から体調を崩しやすいです。特に京都は蒸し暑く、過ごしにくい土地。そうした体調不良はメンタル面にも関わってきます」

家でもできる気分転換でストレス発散を

〝六月病〟〝気象病〟には、ストレスへの対策が大事とのこと。

「抱えている問題を具体的に解決できるのがベスト。仕事や人間関係が原因なら、上司に仕事の進め方を相談するなど工夫をしてみては」(富永先生)

とはいえ、根本的な解決は難しいことも。

「そうしたときは気分転換でストレスの発散を。例えば、出かけない日であっても、家の中でメイクをしてみたら気持ちが明るくなったという話も聞きます。

質の良い睡眠をとるのもいいですね。寝る前にスマートフォンを見ない、寝室の照明を落とすなどを気を付けると効果的です。ただし、無理に寝ようとすると心に負担が掛かります。こうしたストレスは一人で抱え込まず、まずは周りの人に話してみましょう。うまく解決できないときは医師に相談してください。

コロナ禍で在宅勤務や外出を控えるなど、オン・オフの切り替えが難しくなっている人も多いと思います。そのような今こそ、自律神経を整えるため、規則正しい生活を送ることが肝心です」

六月病対策には…

  • 家でできるストレッチをする
  • 軽いウオーキングをする
  • 夜更かしをせず、質の良い睡眠をとる
  • ゆっくりと湯船につかる
  • 友達とオンラインで会話をする
  • 趣味で新しいことに挑戦する
  • 苦手だと感じる人にも自分からあいさつをしてみる


高温多湿で食中毒の原因菌が増殖

今の時期、食中毒も気を付けたい病気の一つ。

「腹痛、下痢、嘔吐(おうと)、発熱、血便などの症状があります」と話すのは、京都府立医科大学消化器内科学准教授の髙木智久先生。

食中毒の主な原因は細菌とウイルス。高温多湿な梅雨は、特に細菌の増殖が活発になります。

「コロナ禍で外食が減ったこともあり、2020年の食中毒の発症数は過去5年間で最も低い結果に。ですが、家庭での事案は増えています。テイクアウトの機会も多くなっていると思うので注意してください。

下痢や嘔吐は体の防御反応なので、市販の下痢止めに頼るとかえって治りが遅くなる場合もあります。たいていは一過性ですが、持病があると重篤になる危険も。病院やクリニックでは整腸剤が処方されたり、脱水症状がみられるときは点滴が行われます」

多くは食事をしてから1~2日後に発症するという食中毒ですが、菌の種類によって数時間後、1週間後に症状が現れることも。

「肉類は大腸菌、カンピロバクター、サルモネラといった菌が食中毒の原因に。そのほか、魚や生野菜など、生もの全般は特に注意が必要です。また、カレーを室温で放置することでウエルシュ菌が増殖し、発症するケースも多いです」と髙木先生。

「菌を〝つけない〟〝増やさない〟〝やっつける〟が食中毒予防の基本。それに加えて、抗菌作用のある梅干し、わさび、ネギ、ニンニク、ショウガなどの食材を取り入れるのもいいと思います」

「まずは手を洗うこと。調理前、生ものを扱う前後、食事をする前など、こまめに洗うようにしましょう。調理器具もきれいに洗うことも大事。生の肉や魚を切ったまな板などから、ほかの食材へ菌が付着する危険があります」(髙木先生)

「作った料理、テイクアウトしたもの、いずれもなるべくすぐに食べるように心掛けて。細菌は10℃以下だと増殖がゆっくりに、マイナス15℃以下だと増殖が止まるとされているので、保存する際はすぐに冷蔵庫や冷凍庫へ。ただし、菌が死滅するわけではないので気を付けてください」(髙木先生)

「菌を死滅させるには加熱処理が大切。買ってきた総菜や、冷蔵庫・冷凍庫で保存していたものなども、再度十分に火を通しましょう」(髙木先生)

教えてくれたのは

京都府立医科大学
大学院医学研究科
消化器内科学 准教授
医療フロンティア展開学
准教授
髙木智久先生

京都府立医科大学
大学院医学研究科
精神機能病態学
准教授
富永敏行先生

(2021年6月19日号より)