上京の街を〝まるごと美術館〟に

2020年11月6日 

リビング編集部

神社仏閣や町家が美術館に変身!地元・上京区の活性化を願う一人の行動から始まった「まるごと美術館」は、今秋5回目を迎えます。その内容と、開催にかける思いを主催者に取材しました。

撮影/桂伸也 ほか

上京区の寺や神社にアートを展示し、街全体を美術館として巡ってもらおうという「まるごと美術館」。2018年から春と秋に開催され、5回目となる今秋は11月7日(土)から始まります。

会場となるのは、「妙顕寺」「妙覚寺」「妙蓮寺」の3カ所。「当初は10カ所以上で行う予定でしたが、社会情勢を鑑みて小規模で実施することとなりました」。そう話すのは、実行委員会代表の菅真継(すがまさつぐ)さんです。

「各会場には、竹細工や藁アート、和紙作品など、伝統工芸を用いたアーティストの作品を中心に展示しています。ほかにも写真インスタレーションや室内に作られた日本庭園も見どころ。もちろん歴史ある寺院の建築や宝物、ライトアップされた庭園もじっくり鑑賞してもらいたいですね」

会場となる「妙顕寺」にて構想を練る菅さん(左)と作庭家の皆川拓哉さん(右)。会期中、皆川さんによる「部屋庭」が同寺院内に展示されています

地元を思う気持ちが形に

昨秋は来場者1万人以上を数えた「まるごと美術館」。始まりは、菅さんがたった一人で起こした行動でした。

5年前、生まれ育った上京区の商店街を久しぶりに歩いた菅さんはショックを受けます。なじみの店はシャッターを閉じ、人もまばらでさびれた雰囲気。

「何とか街に活気を取り戻したい」。そう思いを巡らせているときに気が付いたのが、上京区の寺院の多さでした。

「とても立派なのに、あまり人が訪れていないお寺がたくさんあることに驚いたんです」。これらの寺院にもっと人を呼べれば、と菅さんは動き始めます。ライトアップなどの提案をいくつかの寺に持ち掛けましたが、初めはどこも渋い反応だったそう。

「お寺側にしたら、よくわからない者がいきなり何を言い出すのかと戸惑われたと思います」

しかし、菅さんはあきらめませんでした。何かできることはないかと、お寺の掃除や境内の草むしり、雑用などを進んで行うように。「手伝いをしているうち、お寺の内情やできること、できないこともわかりました」。そうして1年半、提案を練り直し、ついに寺院からもゴーサインが。

「地域のために始めたんですが、最後は意地。ただの負けず嫌いですね」と笑う菅さん。思いを共にするメンバーとともに、「まるごと美術館」の開催に向けて奔走します。「ライトアップの方法もネットで調べて、セッティングも全部自分たちでやりました」

思いを込めた手作りのイベントは回を重ねるごとに注目され、多くの人が訪れるように。

「寺や商店街だけではなく、伝統産業などさまざまなものが衰退しています。でも、見せ方を変えてアプローチすればきっと魅力は伝わるはず」と菅さん。

「今は活動を広げにくい状況ではありますが、ゆくゆくはお寺周辺の店舗などとも連携して、もっと街の魅力が伝わるイベントにしていきたいですね」

前回までの寺院での展示例。上京区の伝統産業をモチーフとした作品も。「今回も職人技が凝らされた作品が並びます。寺院の静かな雰囲気の中で鑑賞を楽しんで」(菅さん)

「まるごと美術館」2020年秋季

<会場>
①妙覚寺 ②妙顕寺 ③妙蓮寺

<開催日時>
11月7日(土)~12月6日(日)(②③は11月14日(土)から)
日中拝観/午前10時~午後4時(①は午後3時まで)
夜間拝観/午後5時30分~午後8時(①②は午後6時から) 

拝観料
各会場800円(③の日中拝観料は500円)※小学生以下無料
詳細は下記ホームページへ ※人数により入場制限あり。マスク着用で入場を 

問い合わせ
TEL:050(5372)4935(運営委員会)
https://www.kyoto-marugoto.com/

(2020年11月7日号より)