患者力を高めよう

2023年8月25日 

リビング編集部

患者力を高めよう

真に納得できる治療を受けるには、医師だけではなく〝患者のスキル〟も欠かせないといわれています。今必要とされるこの「患者力」について、詳しく専門家に教えてもらいました。

イラスト/松元まり子

医師任せになっていませんか

病気で医療機関にかかるとき、診察にはどのような態度で臨んでいますか? 読者にたずねたところ、「医師に基本的に任せる」と答えた人は約67%。一方、「自分の意見や調べた情報も話して相談する」人は約30%でした(※)。

「海外に比べて日本の患者は医師に質問することが少ない傾向にあります。しかし、わからないことを聞き、自分の意見を伝える〝患者力〟を持つことは治療の上で重要なことです」。そう話すのは、京都府医師会の松村由美先生。

この〝患者力〟という言葉、近年医療の現場で注目されているようですが、具体的にはどのような力を指すのでしょうか。

「〝患者力〟とは、自分の体は自分のものとして、治療方針の決定に関与するということです。『医師に対して必要なことは質問する』『自分の考えや要望を伝える』といったことのほか、『自分に合った病院や医師を選ぶ』というのもそのひとつ。

医師の言うことに疑問や不安があっても、何も言わずに後悔することがあったら、それは『質問しなかった』自分にも責任があります。治療については十分に納得した上で、決定することが大切です」

※2023年6月にリビング読者にアンケート。有効回答数888。本文()内は読者のイニシャル

思いやりのあるコミュニケーションを

現代の医療の主流となりつつある「SDM(シェアード・ディシジョン・メイキング)」からも、患者力の大切さがわかると松村先生は話します。

「SDMとは、患者と医師が対話をしながら治療法を決定していく『共同意思決定』のこと。例えば、生活習慣病は日々の食事や運動、ストレスなどが要因となりますが、それらは患者しか知りえない情報。医師に伝えて助言を受けた方が、改善しやすいのです。

以前に比べ治療法の選択肢が広がっているがんについても、仕事や家庭の事情などを医師と共有し、希望を伝えることで、より納得できる治療が受けられる場合があります。自分の病歴や体質を最も知っているのは自分自身。臆することなく医師と話し合いましょう」

医師は病気を治すためのパートナー、と松村先生。「社会人の基本的なマナーと同じで、互いに遠慮しすぎたり高圧的な態度を取ったりするのではなく、相手を思いやり、信頼しようとすることが患者力のベースになります」

患者力を高めるための具体的なアドバイスを紹介します。

患者力アップのための

受診の心得&アドバイス

決定するのは患者自身

患者力の柱である「医師の説明をきちんと聞く・質問する」「治療に必要な情報や要望を伝える」「自分に合う病院・医師を選ぶ」について、それぞれ具体的にどのようなことを心掛ければよいのか、松村先生に教えてもらいました。

「医療に限らず、日常において〝自分のことは自分で決める〟というスタンスは大切ですよね。その意識を持つようにすれば、よりよい治療につながると思います」

読者から寄せられた疑問・不安についても、アドバイスをしてもらいました。

医師の説明をきちんと聞く・質問する

「医師の言葉をきちんと理解しようとし、わからないことは納得いくまで質問しましょう。大勢の患者が待っていると遠慮してしまうかもしれませんが、質問をまとめておく、メモを取るなど工夫をすると、診察もスムーズに進みます」

POINT

  • わかりにくければ「こういうことですか?」と確認する
  • 質問があればあらかじめ書き出しておく
  • 説明で重要なことはメモを取る、許可を得て録音をする。
  • 必要があれば家族に付き添ってもらう
  • 治療の影響や期間など、今後の見通しを聞いておく

読者へアドバイス

「治療法を詳しく知りたい。新たに提案してほしい」(DMさん)

「どれくらい痛みがあるのかなど不安なことは質問を。医師は〝ベスト〟と考える治療法を提案しますが、それ以外に〝ベター〟な治療法がある場合も。質問することで選択肢が広がります」

「ステロイドなど使いたくない薬もあるんだけど…」(KHさん)

「どんな薬が処方されるのか診察時に聞いておきましょう。痛みがなくなれば飲まなくていいのか、という〝やめ時〟も確認を」

治療に必要な情報や要望を伝える

「病状はもちろん、『処方薬を全部飲んでいるか』『服薬によって体調の変化はないか』など、患者が自身の情報を伝えなければ適切な診療は困難に。『仕事があるので入院は避けたい』といった要望も、治療法を決める大切な要因です」

POINT

  • (もれなく伝えるために)自覚症状、病歴、常用薬やアレルギーなどをまとめておく
  • すでに処方されている薬の効果など、症状の変化を伝える
  • 希望や要望は遠慮せずに相談する
  • 感情をぶつけるのではなく、状況を丁寧に冷静に伝えられるように心がける

読者へアドバイス

「薬の量が多すぎて飲みづらい」(YKさん)

「正直に服薬がつらいことを伝え、量が減らせないか、別の種類に置き換えられないか相談してみましょう」

「パソコンばかり見て、触診が少ない」(TMさん)

「パソコンを見るのは検査結果の確認などで必要なことですが、不安なときには遠慮せず、『うまく症状を伝えられているか心配なので、ここを診てもらえませんか』など、気持ちを伝えてみましょう」

自分に合う病院・医師を選ぶ

「人間同士であるかぎり、相性が合わない医師もいるのは仕方のないこと。どうしてもコミュニケーションが取りにくいのであれば、別の医院を探すことも検討を。院内に患者の相談窓口を設けて、医師とのコミュニケーションをサポートしてくれる病院も。クリニックや小規模病院についての苦情・心配ごとは、地域の『医療安全支援センター』に相談できます」

POINT

  • あいさつや言葉遣いなど良識ある態度を心がける
  • 医療にも不確実なこと、限界があると理解する
  • 病院の口コミサイトを信頼しすぎない

読者へアドバイス

「自分に合う医療機関が見つからない」(NNさん)

「まずは近隣で通いやすい病院を訪れてみて、医師と何度かコミュニケーションを取ってみましょう。相手にばかり期待するのではなく、患者側も医師とよい関係を築くための工夫ができるといいですね」


「診療を受ける際の患者力についてお話ししましたが、医師だけではなく、薬のことであれば薬局の薬剤師に相談するなどもできます」と松村先生。

「病気にならないように努めるのも大切なこと。かかりつけ医を持ち、相談しながら健康管理をしっかり行いましょう」

教えてくれたのは

京都府医師会 理事
松村由美先生

(2023年8月26日号より)