空き巣や強盗など、自宅で起きる犯罪被害。家族や財産を守るための防犯対策を、京都府警察本部で教えてもらいました。
イラスト/矢田ミカ
家にいるときも戸締まりを忘れずに
「2022年に京都府で発生した侵入犯罪は245件。その半数近くが空き巣被害です。防犯意識の高まりや、防犯性能の高い設備によって発生件数は年々減っていますが、原因の多くは『鍵の掛け忘れ』。これは昔からずっと変わりません。敷地内の無施錠の自転車が盗まれる被害も多発しています」と、京都府警察本部生活安全企画課の寺村研二さん。
家にいると、つい窓を開けっ放しにしたり、鍵を掛けていないことも。
「中には食事中や就寝中など在宅時を狙って忍び込む侵入者もいます。鉢合わせると危害を加えられる可能性が。戸締まりは一番簡単な防犯対策です。夏は窓を開ける機会も増えるので、鍵の掛け忘れに注意し、なるべく冷房器具を利用してもらえたら」
テレワークの人や、夏休みなどで子どもの在宅時間が増える家は、より気をつけて。
宅配荷物の受け取りは〝置き配〟の活用を
通販やフードデリバリーなど便利なサービスが増えましたね。一方で、配達員を装って自宅に押し入る事件もニュースで見聞きします。
「受け取りのとき、不用意にドアを開けるのは危険。まずドアチェーンやドアスコープ越しに相手を確認しましょう。カメラ付きインターホンの設置も有効です」と寺村さん。荷物の受け取りにもひと工夫必要とか。
「玄関前に荷物を置いてもらう〝置き配〟なら、非対面で行えます。昨今の事件から、警察庁と大手運送業者の間でも、非対面の受け渡しを推奨する動きが。注文時に受け取り方法を指定したり、『そこに置いておいてください』とドア越しに配達員に声をかけてみてください」
宅配ボックスを設置しておけば、その中に届けてもらうことで対面を避けることもできます。
荷物を受け取るときの対策
①ドアを開ける前に相手を確認
カメラ付きインターホン、ドアチェーンやドアスコープ越しに確認を。手渡しやサイン・はんこが必要な場合、すぐにドアを開けるのではなく、いったんチェーンを掛けたまま応対を。
②置き配を利用する
玄関前に荷物を置いてもらう「置き配」。配達員が立ち去ってからドアを開けて。
③宅配ボックスを設置する
不在時の受け取りに便利な宅配ボックス。鍵付きのものを選べば盗難防止にも。
④自宅以外を受取先に指定
最寄りのコンビニや郵便局、運送業者の営業所を受取先に指定できる場合もあります。小包なら、仕事や買い物帰りに利用しても。
子育て世帯や高齢者世帯は訪問者への対応をルール化
子どもだけで留守番するときや高齢者の1人暮らしなどに、どんな対策が必要でしょうか。
「戸締まりを徹底し、留守番中の訪問者には対応しないなど、ルールを決めておきましょう。大切なのは、日頃からコミュニケーションを取り、防犯意識を共有しておくこと。離れて暮らしている場合も同じです。家の周りに不審な人がいなかったか確認したり、自治体が配信する防災・防犯メールやテレビのニュースなどを見て、身近に事件が起きていることを伝えてみては」(寺村さん)
防犯アイテムの利用も効果的とか。
「離れていてもスマートフォンから自宅の様子を確認できる、見守りカメラ。中には通話機能が付いているものもあり、もしものとき、こちらから呼びかけることができます。
高齢者の場合、電話で家族構成や資産状況などを聞き出す〝アポ電〟に注意。特殊詐欺や強盗事件に発展するケースがあります。こうした被害を防ぐためにも、知らない番号からかかってきた電話は取らないようにしたいですね。悪意がある人は証拠が残るのを嫌がるので、警告メッセージが流れる録音機能付きの電話機で不審電話を防ぐのもいいですね。府内の各警察署では、65歳以上の高齢者向けに通話録音装置を無料で貸し出しています(※)」
※貸出期間、利用条件に関する問い合わせは最寄りの警察署へ
高齢者や子どものみが在宅のときの対策
- 見守りカメラや防犯カメラを屋内外に設置する
- 家族が不在時の対応を決める(対応しない、ドアを開けない、決まった人からの電話しか出ないなど)
- 緊急連絡先を伝える
- 通話録音装置で不審電話を防ぐ
何げないSNSの投稿が犯行に利用されることも
気軽に近況を発信できるSNS。しかし、何げなく投稿した内容を空き巣に利用されることがあるようです。
「例えば旅行や帰省の予定を投稿したり、滞在先からリアルタイムに投稿するのは、『家に人がいない』と発信しているようなものです。楽しい思い出はすぐに共有したくなりますが、帰宅後など時間をずらして投稿しましょう」
ほかにも投稿のタイミングには要注意。
「お出かけや出勤・登校、留守番をほのめかす内容も家を空けるサインに。近所の様子がわかる写真や自宅のベランダから撮った写真などは、住まいを特定しやすくなります。
1回1回の投稿に気をつけていても、過去の投稿をさかのぼっていくと生活サイクルや生活エリアを推測できることも。身内向けに発信しているつもりでも、実際には不特定多数に見られている意識を持ちたいですね」
「侵入者は音、光、人の目、時間を警戒します」と寺村さん。家の防犯性を高める対策や心がまえを教えてもらいました。
防犯カメラを取り付ける
侵入者の姿を記録する防犯カメラは、犯行をけん制する効果も期待できます。玄関や窓、集合住宅の場合はエントランスや共用部に設置を。偽物のカメラでも一定の効果があるとか。
ご近所付き合いを盛んに
近隣住民と顔見知りになれば、見慣れない人物にも気づきやすくなりますね。また、侵入を企てている人は人の目を気にするので、顔を見られたり声をかけられると犯行をあきらめることも。ご近所付き合いが盛んな地域や集合住宅は、その場所一帯が狙われにくくなるそう。
家の周囲を明るくする
薄暗い場所や夜間は姿が見えづらく、侵入者に気づけないことが。出入り口に常夜灯を設置したり、人が近づくと点灯するセンサー付きライトを取り付けて。
音の鳴る砂利を敷く
踏むと大きな音が鳴る防犯砂利。庭やベランダ、ドアや窓付近に敷くことで、侵入を知らせたり、侵入を未然に防ぐ効果が。
防犯ガラス、二重鍵に替える
侵入者は、侵入に5分以上かかると犯行をあきらめる傾向が。割れにくい窓ガラスに替える、強度を高める防犯フィルムを貼る、ドアを二重鍵にするなど対策を。防犯性の高い建物部品に認定された商品には「CPマーク」が付いています。
身を隠せる障害物を置かない
高い塀や大きな障害物は、敷地内に侵入さえできれば外の視線から身を隠す壁に。そのため、時間をかけて解錠されてしまいます。塀を低くしたり、物を減らすなど見通しを良くして。
鍵にキーカバーを付ける
マスターキーに刻印されている「鍵番号」。番号さえわかれば、現物がなくてもインターネットで合鍵を作成できます。人に知られないよう、キーカバーで保護を。
ほかにもこんな対策が
- 住人の性別や家族構成がわかる洗濯物は外から見えない位置に干す
- エレベーターに知らない人と一緒に乗らない。先を譲り、止まる階を教えない
- 帰宅して玄関を開ける前に、後ろに人がいないか確認。中に入ったらすぐ鍵を掛ける
(2023年6月3日号より)
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