住まいとSDGs

2023年5月19日 

リビング編集部

写真はイメージ

社会全体で取り組むべき課題とされているSDGs(エスディージーズ)。家づくりにおいても、その達成のために貢献できることがあるようです。人にも、社会にも、環境にも優しい住まいとは?

次世代の暮らしのためにできること

「限りある資源を有効に、平等にみんなで分け合おうというのがSDGsの姿勢です」と話すのは、京都工芸繊維大学 准教授の木下昌大さん。

〝SDGs〟とは〝Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)〟の略称。貧困や教育、環境問題、経済成長などに関する17の目標が設定され、2030年までに達成することを世界で目指しています。

「近代化以降は技術が発展し、電気、水道、道路なども整備され、私たちは便利な生活を送ってきました。享受してきた豊かさを次世代へどう持続させていくかを考えてもらえたらと思います」

SDGsの17の開発目標の中から、家づくりに関わるものをピックアップ。具体的に私たちができることを、木下さんに教えてもらいました。

©TAKA MAYUMI

京都工芸繊維大学
工芸科学部 デザイン科学域
デザイン・建築学課程
准教授 木下 昌大さん

美しい風景をつくる、
持続可能な建築について研究。

現代の気候に合うよう断熱性を高めた家に

気候変動を食い止めるために大事なのが、CO₂をはじめとした温室効果ガスを減らすこと。省エネを重視した家にするにはどうすればいいのでしょうか。

「外壁や屋根に断熱材を使ったり、ペアガラスを取り入れたりして、建物の断熱・気密性を高めるようにしましょう」と木下さん。家の中の温度差が原因で起こるヒートショックを防ぐにも、高断熱・気密性が重要だと話します。

「夏は暑く、冬は底冷えする京都で快適に過ごすためにも工夫を。窓のサイズや位置を考慮すれば、採光・通風を確保できます。古い家もリフォームをして、現代の気候に合うようにハード面をアップグレードさせることを検討しては」

町家に住んでいる人は、制度にも目を向けてほしいとのこと。京都市の条例により〝京町家〟として指定されると、現行の建築基準法に沿わない形であっても保存できる場合があります。また、改修費用の補助が受けられるケースも。

「美しい風景をつくる歴史的な建物は地域の財産。町家の構造もヒントにしながら、長い間使い続けられる家を目指していきたいですね」

Point

  • 省エネのため、ヒートショックを防ぐために断熱・気密性を重視
  • 自然エネルギーを取り入れる
  • 〝京町家〟の指定制度を活用

〝地域〟〝再利用〟を考えた材料をセレクト

これからの社会のため、環境のためには、建築材料の選び方もポイントに。

「新築・リフォームともに、次世代の人に再利用してもらえるような材料を選ぶよう心掛けて。素材を使いまわせば、廃棄物を減らせます」(木下さん)

私たちが今あるものを使うのも手です。

「材料に限らず、障子、欄間といった古い建具の再利用を考えてみませんか。京都は地域の工務店や建具店が古い建具をストックしていることが多いんです。昔のものには物語性が感じられますし、家にもより愛着が湧くと思います」

デンマークでは、建具のストックがデータベース化されているとか。世界的にも、再利用の動きが進んでいるようです。

地元の資源を活用することで、地域の活性化や環境保護にも貢献できるといいます。

「北山杉など、京都産の木材を取り入れるといいですね。地元の工務店だと入手しやすい場合もあります。近代以降は、建設業の合理化やコスト削減を重視したために、流通量の多い規格化された木材ばかりが使われがちでした。でも、今後は地域の中での循環が必要に。近所の大工さんに家を建ててもらい、メンテナンスを頼み…、という仕組みをもう一度見直してみましょう」

古建具を再利用した空間 ©中村絵
ストックされていた古建具
©キノアーキテクツ

Point

  • 次世代が再利用できる建築材料を選ぶ
  • 木材や建具を再利用する
  • 地元産の木材を使う

ハード面とソフト面、両方で防災を意識

家々が集まる町を、この先も安心して住み続けられる場所に―。そのために、まず思い当たるのが災害に強い家づくり。最近は耐震性・防火性などに優れた「レジリエンス住宅」も注目されています。

「住宅には〝新陳代謝〟が大切。快適に暮らせるように改修などの手入れをすることで、家を補強できます」

ハード面だけではなく、ソフト面が果たす役割も大きいと木下さん。

「長く町に住み続けるには、地域との関わりが欠かせません。京都の路地の文化はコミュニティーが生まれやすいという特徴があります。これは1200年の歴史を持つこの町ならではの社会的資産。例えば、京都ではよく軒先で消火バケツを見かけますよね。火事から町を守ろうとする、地域住民の協力体制が表れています」

町並みを生かしたコミュニティーと、技術発展による家の性能。二つが補完し合う関係が、将来に向けた町づくりに役立ちそうです。

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Point

  • 耐震性・防火性などに優れた災害に強い家に
  • 地域との関係を築く

木下さんからのメッセージ

「部屋の天井の高さも、照明の明るさも、快適だと感じる程度は人それぞれ。基準に頼りすぎず、一人一人が自分にとって最適なものを追求することが、SDGsが目標とする〝豊かさ〟の持続につながります。

京都には海や森、そして歴史的な文化財があります。こうした豊かさを次世代に受け継ごうとの思いが芽生えやすい土地柄ではないでしょうか。地域での循環を意識しながら、家づくりについて考えていきたいですね」

「リビング京都」特別編集
京都でかなえる家づくり 2023年度版

京都リビング新聞社では、2023年5月31日(水)に「リビング京都」特別編集の住宅本「京都でかなえる家づくり2023年度版」を発行。地元・京都で活躍している工務店や設計事務所のさまざまな施工例を掲載しています。本・送料とも無料で自宅にお届け。限定5000冊。詳細は「京都でかなえる家づくり」へ。

(2023年5月20日号より)