心ととのうムードフード

2023年4月21日 

リビング編集部

食のトレンドワードとなっている「ムードフード」。一体どんな食品なのでしょう。その効果などを専門家に聞いてみました。

イラスト/福岡麻利子

ストレス社会で注目される食のリラックス効果

ムードフードの「ムード」は「気分」「情緒」を意味し、心を整える食べ物のこと。食べると緊張や不安が和らいだり、よく眠れたり。そんな心身を整える作用がある食品を指しているそう。

「確かに、食品成分の中には体だけではなく、心にも影響するものがあります。緑茶のテアニン、チョコレートに含まれるGABA(ギャバ)などが有名ですね」と話すのは料理研究家で管理栄養士の吉村雅子さん。そういえば、ドリンクやお菓子のパッケージで見たことがあります。

「そういった成分を生かした商品も増えていますね。昨年はストレス緩和や安眠効果をうたった乳酸菌飲料がヒットしました。社会情勢も影響して、心が不安定になりストレスを抱えている人が多いということではないでしょうか」

〝ムードフード〟にあたるものは、乳製品や大豆製品、ハーブ類などほかにもあるそうですが、「おなじみのビタミンやミネラルなどにも興奮を鎮める、自律神経を整えるといった働きがあります。さまざまな栄養素をとることが心にも効果的といえるでしょう」。

多くの栄養素が心の健康に影響

※( )内はその栄養素を含む食品例

  • カルシウム
    興奮した脳神経を抑える(乳製品、小魚、大豆製品、海藻など)
  • マグネシウム
    抗うつ作用のあるセロトニンなどの分泌を促す(ナッツ類、大豆製品、玄米など)
  • ビタミンC
    ストレスへの抵抗力を高める(緑黄色野菜、かんきつ類、イモ類など)
  • ビタミンD
    セロトニンの分泌促進、精神バランスの乱れを軽減(きのこ類、魚介類など)
  • ビタミンB12
    自律神経の安定、安眠効果(貝類、牛・鶏のレバー、のりなど)

身近なムードフードをチェック!

機能を発揮する成分別に、ムードフードを吉村さんに紹介してもらいました。

精神安定・安眠作用緑茶・ハーブティー

緑茶に含まれる「テアニン」は精神安定の効果が。カモミール、ラベンダー、レモンバーム、ローズマリーといったハーブは、それぞれストレスを解消する成分や、緊張を和らげ安眠作用をもたらす成分などを含有。

血糖値を下げる、ストレス軽減チョコレート・発酵食品

チョコレートの原料となるカカオや、発芽玄米、発酵玄米、発酵食品全般に多く含まれる「GABA」〈γ(ガンマ)-アミノ酪酸〉。血糖値の上昇を抑える、血圧を下げる、ストレス軽減などの働きが期待できます。

抗うつ、生体リズムを正常化大豆、乳製品、魚など

大豆製品や乳製品、魚、ナッツ類、穀物などから摂取できる必須アミノ酸「トリプトファン」は「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの材料になり、抗うつ、生体リズムを整えるなどの効果を発揮。

食べて幸せになればそれも〝ムードフード〟

自分の好物やおいしいものを食べると、人は元気が出たり癒やされたりしますね。

「好物などを食べていい気持ちになると、脳が刺激されて血流もよくなり、免疫力も向上。体の中がしっかり循環することは心身の健康につながります。よって、食べるときに幸せな気分になるものは、その人にとってのムードフードといえるのではないでしょうか」と吉村さん。

脳を活性化させる点では、美しい盛り付けや料理の音といった〝五感〟を刺激する料理も効果的だとか。

「中でも〝香り〟は最も早く脳に届きます。旬の食材は香りも豊かなので、シンプルに調理して味わってみては。
甘味・酸味・塩味・苦味・うま味の五味が融合している和食も、五感の刺激にはおすすめです」

和食を食べるとほっとするのは、そんな理由もあるかもしれませんね。

過剰摂取は避けてバランスのよい食生活を

ムードフードが心を整えるといっても、注意点はあるといいます。

「同じ食品ばかりたくさん食べるのはNG。単独の成分ではなく、さまざまな栄養素が体の中で作用し合うことで効果が期待できるのです。まずは栄養バランスを重視した食習慣を身につけること。その上で、ムードフードを取り入れましょう。

心と体の健康は互いに影響し合うもの。その健康を支えるのは毎日の食事です。
ムードフードが注目されることで、『心の健康のために食事を大切にしよう』と考える人が増えればいいですね」

普段の食事に取り入れてみよう

ムードフードを食べるのにおすすめのタイミングは、「休憩時などリラックスしたいときや、普段の食事に取り入れてみても」(吉村さん)。

さまざまなシーンに合わせて、ムードフードを使った手軽な料理を教えてもらいました。

「忙しい時ほど、意識して食事やお茶の時間を大切にしましょう。また、部屋を居心地よくし、好きな音楽を流すなど、空間も整えるとよりリラックスできるはずです」

お弁当にリラックス度満点弁当

雑穀米入りごはん/魚の塩こうじ焼き/のりとチーズの卵焼き/エビとブロッコリーのカレーマヨあえ/かぼちゃとひじきの煮物

会社や学校で食べれば、ほっとできそうなお弁当。雑穀米のトリプトファン、塩こうじのGABAのほか、のり・チーズのカルシウム、エビに含まれるグリシン(抗うつ、睡眠改善)、カレーのスパイス(疲労回復、精神安定)、ひじきのマグネシウムなど、リラックスできる成分がたっぷりです。

ランチですっきり気分転換!

おやつにチョコレートフルーツフォンデュ

一口大にカットした好みのフルーツを、溶かしたチョコレートにくぐらせておやつでリラックスタイム。イチゴやキウイ、かんきつ類に多く含まれるビタミンCは、チョコレートのGABAとともにストレスへの抵抗力をアップしてくれます。

甘酸っぱいおいしさに幸せ気分

朝食にトマト甘酒

甘酒を、無塩・無添加のトマトジュースで割ったドリンクを朝食にプラス。甘酒の甘さが緩和され、飲みやすい一杯に。トマトのリコピンは朝が一番吸収率がいいそう。発酵食品の甘酒・トマトともにGABAの効果が期待できます。トマトジュースの量はお好みで。

1日を心地よくスタートして

夜食に大豆入りミネストローネ

勉強をがんばる子どもの夜食にはGABAが豊富なトマトベースのミネストローネを作ってあげては。たっぷりの野菜に水煮大豆を加えることで、大豆に含まれるトリプトファンのほか睡眠改善作用があるセリンも摂取でき、ぐっすり眠れそう。

集中した頭をクールダウン

教えてくれたのは

料理研究家・管理栄養士 吉村雅子さん

「心と身体にやさしい食や暮らし」を提案する「京都 食と暮らしの研究所」主宰。レシピ・商品開発、大人の食育教室「創彩食感塾」・カフェ「和想日々」の経営、イベント開催と多彩に活躍中

(2023年4月22日号より)