ゲームカルチャーの今

2023年2月10日 

リビング編集部

以前は〝子どもが遊ぶもの〟と思われがちだったデジタルゲーム。ですが、交流ツールとして、産業として、研究対象として…、とその可能性は広がるばかり!
進化を続けるゲームカルチャーを追いました。

※2022年12月にリビング読者にアンケート。有効回答数1044
イラスト/sanaenvy

読者の半数以上がプレーヤー
スマートフォンで手軽さアップ

読者にアンケートを取ると、半数以上が日頃からゲームをすると回答。そのうち3割を超える人が「毎日プレイする」とのこと。多かったのがパズルゲームをしている人です。「通勤中、暇な時の気分転換に」(TM・31歳)、「頭の体操になる」(US・65歳)といった声が寄せられました。

使っている機器は「スマートフォン」が7割以上。専用の機器を買わなくてもプレイできる手軽さは、ゲーム人口の増加に結び付いているといえそうです。

家族で一緒に、という人も多数。「あっという間に子どもの方がうまくなった」(MM・44歳)と切ない話も…。そのほか「ゲーム仲間ができた」(NM・65歳)など、コミュニケーションツールにもなっているよう。

ゲームの魅力を尋ねると「キャラクターがかわいい」「ストーリーに引き込まれる」「レベルアップするのがうれしい」といった答えが。最近ハマっている作品も聞いてみたのでチェックして。

読者がよくプレイしているのは

ポケットモンスター バイオレット

小学校低学年の娘もキャラの特性、ストーリーを理解して楽しんでいる。自分の子ども時代のポケモンも思い出して懐かしい(MI・38歳)

ディズニー ツイステッドワンダーランド

子供に勧められてやったらめちゃくちゃ面白い。きちっと育成しないといけないところが正当で好き(SA・48歳)

FINAL FANTASY XV(ファイナルファンタジー15)

映像が美しく、音楽もキャラクターの声も良い。男性4人のパーティーでストーリーが進むのは珍しい(HF・47歳)

あつまれ どうぶつの森

服や家具など、細かいところまでとてもリアル! 音もリアル!(KM・42歳)

LINE:ディズニー ツムツム

友達や母と順位を競う。母からハートが送られると元気だなと確認もできる(TY・53歳)

マリオカート

夫とステージのクリア数を競ったり、キャラを見せ合いっこしたり。ポップな世界観に一瞬で現実逃避できます(YK・34歳)

産業として地域から熱い期待が

京都はゲーム会社が集まる町。京都府では産業としてのゲームに注目し、eスポーツを推進したり、ゲーム関連企業を支援するなどゲーム業界の活性化を進めています。インディーゲームの祭典「BitSummit(ビットサミット)」も京都市勧業館「みやこめっせ」で毎年開催。

ゲームやアニメ、マンガなどのコンテンツ産業を振興するため、京都市では昨年10月に「KYO-CCE Lab(京シーシーイーラボ)」プロジェクトを発足。「セミナーを実施するなどして企業間の連携強化を図っています。ゲームデザインやプログラミングを学ぶ学生が多いのも京都の特徴。地元で活躍してもらえるよう、就職のサポートにも力を入れています」(京都市クリエイティブ産業振興室担当者)

地域も期待を寄せるゲーム業界。今後の動きも見逃せませんね。

eスポーツに打ち込んだ経験が子どもの力に

©VIVA&SANGA
「サンガスタジアム by KYOCERA」内にあるeスポーツ施設「e-SPORTS ZONE」。会員登録すれば誰でも利用OK。イベントや大会の会場になることも

eスポーツとは、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技と捉えるときの呼び方のこと。

「京都でも大会が開かれたり、高校にeスポーツ部ができたりしています。頭や指先を使うので、健康のためにとアクティビティーに取り入れている高齢者施設もあるんですよ」と話すのは、京都eスポーツ協会会長の堀川宣和さん。

活躍するeスポーツ選手の多くは、反射神経の優れた10代~20代前半の若い世代だといいます。

「〝ゲームは子どもに良くないもの〟との考えが根強いですが、例えば野球にも遊びとしての草野球、甲子園やプロを目指す部活の野球、職業としてのプロ野球がありますよね。eスポーツもそれと同じ。遊びなら1日1時間などルールを決めた方がいいですが、プロを目指しているなら応援してあげてほしいです。プロになれなくても、打ち込んだ経験を生かしてデジタル関連の企業に就職するなど、優秀な若者が社会に出てきています」

親子で一緒にゲームをするのも大事とのこと。

「自分が好きなことを親が理解し、応援してくれると、子どもの自信につながりますよ」

〝見る〟楽しみも!
eスポーツ観戦・ゲーム実況

ゲームを〝する〟のではなく〝見る〟のも、楽しみ方の一つ。野球やサッカーなどと同じようにeスポーツを観戦する人も増えてきているとか。「京都のプロチームを応援することで地元愛が深まります」と堀川さん。

また、YouTubeのゲーム実況動画も人気。芸能人の配信も増え、ゲームに興味を持つきっかけになっているようです。お気に入りのゲーム実況チャンネルを教えてくれた読者もいました。

読者お気に入りのゲーム実況チャンネル

  • 兄者弟者
  • 三浦大知のゲーム実況
  • Johnny’s Gaming Room
  • わいわいのゲーム実況チャンネルRoom
  • ポッキー

インディーゲームの世界

作り手のセンスが光る〝インディーゲーム〟。「定義するのは難しいですが、個人や少人数の開発者が作るゲームのことをいいます」とは、インディーゲームの開発やパブリッシングを手掛ける「room6」代表の木村征史さん。市場に左右されず、個性を出せるのがその特徴です。

「例えば引っ越しの荷物をひたすら荷ほどきしていくだけ、というゲームも。荷物から持ち主の人生が見えてくるんです。『steam(スチーム)』などのオンライン販売サービスもあるのでいろいろ探してみてください」。近頃は大手出版社も開発を支援。「よりインディーゲームが知られるようになればうれしいです」

日本最大級の祭典の開催地は京都

京都市勧業館「みやこめっせ」で毎年開催されている「BitSummit」(以前の様子)。2022年の10回目には9000人以上が来場しました

BitSummit」は、日本最大級のインディーゲームの祭典。「日本のゲームを海外に向けて発信する目的でスタート。世界中からクリエーターやファンが集まる、まさに〝お祭り〟です」とは、主催者の一人で日本インディペンデント・ゲーム協会副理事長の小清水史さん。同協会理事の村上雅彦さんは「発表の場があることで、クリエーターも作りたいゲームに挑戦できます。若い層もチャレンジできる土壌として今後も盛り上げていきたいです」と話します。

プレーヤーが奏でる音楽の面白さ

「ドラゴンクエスト」「ファイナルファンタジー」「モンスターハンター」など…。2021年に行われた東京オリンピックの開会式で流れ、世界にインパクトを与えたのが〝ゲーム音楽〟です。

「ゲーム音は〝ピコピコ〟というイメージがありますよね。今では技術が進歩しさまざまな音をゲームに使えますが、1980年代は同時に三つ以上の音が出せませんでした」と、立命館大学ゲーム研究センター 客員研究員の尾鼻崇さん。

「当時は限られた音で広がりのある音色を出すために試行錯誤が重ねられていきました。それがゲーム音楽の魅力の一つ。制約があるゲームの音をあえて他の音楽ジャンルに取り入れる作曲家もいます」

もう一点、注目してほしいというのがゲームならではの表現です。

「走るスピードで曲調が変わるなど、プレーヤーの操作によって音楽が変化。これは遊んでこそ分かる楽しさといえます。曲だけを切り離して聴く人も増えていますが、こうしたポイントを知ると、ゲームがより面白くなりますよ」

若者文化を大切にする 京都で研究が盛ん

音楽のみならず多様な分野の研究対象になっているゲーム。経営学、工学、心理学、法学など、さまざまな角度から研究されています。

「研究のために欠かせないのが資料。立命館大学ゲーム研究センターでは文化庁の事業の一環で数多くのゲームを保存、データベースの作成も進めています」と尾鼻さん。

「京都はゲーム研究が盛ん。関連企業が多いのに加え、学生の街というのも理由ですね。学生のゲームへの関心は高く、地域にはそんな若者の文化を大事にしようとの意識が根付いています」

ゲームの要素を他の分野に応用する〝ゲーミフィケーション〟は今後さらに広がるのでは、とのこと。

「例えばゲーム会社『バンダイナムコ』と『日産自動車』が協力し、ゲーム音を車の音に活用。安全のために分かりやすい音を開発しました。ゲームに慣れ親しんだ世代が社会で活躍している今。ゲームのアイデアでより日常が楽しくなっていけばと思います」

立命館大学
ゲーム研究センター

客員研究員 尾鼻崇さん

(2023年2月11日号より)