血管を若々しく保つには 生活習慣と食事もポイントに

2022年8月26日 

リビング編集部

体中に栄養や酸素を運ぶ血管は、健康な毎日を送るために重要な役割を果たしています。最近では〝血管年齢〟という言葉を耳にすることも。若々しい血管を保つためにはどうすればいいか調べてみました。

イラスト/ヤマサキミノリ

〝血管年齢〟が高い人が増加中

「人は血管とともに老いる」。こんな言葉を聞いたことはありませんか。しかし昨今、実年齢より〝血管年齢〟がぐんと上の人が増えているそう。そもそも、血管年齢とは何なのでしょう。

「一般に血管年齢と呼ばれるのは、特定の機器を使って動脈の硬さや詰まり具合、つまり動脈硬化の度合いを測る検査の結果を指します」とは、京都府立医科大学医学研究科の濱口真英先生。「その値が同年齢の人の平均値より高い人が近年増えているのです」

血管年齢が高いとどうなりますか。

「本来の血管は軟らかくしなやかですが、動脈硬化になると硬く弾力がない状態に。血管内に放出され、血管を柔らかくする作用のあるNO(一酸化窒素)にも反応しにくくなります」

何か疾病につながるのでしょうか。

「プラーク(※1)や血栓が生じやすくなり、脳梗塞や心筋梗塞、脚の動脈がふさがる抹消(まっしょう)動脈閉塞(へいそく)症などを発症する危険性が高まります」

(※1)血液中のコレステロールや脂肪によるこぶ

夏は特に注意

また、たくさん汗をかく夏は、血中の水分が少なくなりがちな時期。

「動脈硬化の人が脱水症になると、脳の大小の血管が詰まって脳梗塞が起こる可能性が指摘されています」

特に高齢者は注意だそう。「年齢が上がると喉の渇きを感じにくくなります。渇いたな、と思う前に適度に水分を摂取するようにしましょう」

血管年齢が高くなるのはどうして?

「加齢以外に喫煙や運動不足、過剰な飲酒などの生活習慣のほか、高脂肪の食事や過食、塩分の取りすぎといった食生活もリスクとなります」と濱口先生。「ただ、それらは原因の一部に過ぎません。食生活などを自己流で改善しようとすると逆効果の場合も。まずは自分の体の状態を正確に知ることが重要ですよ」

また、糖尿病や脂質異常症(※2)の患者数が年々増加しているのも、血管年齢が高い人が増えている一因といいます。

(※2)血中のコレステロール値や中性脂肪の値が異常な症状

健診と日々の心がけが大切

血管の老化を遅らせるにはどうすればよいのでしょう。濱口先生は「特定健康診査などで血圧・血液の状態を正しく知り、専門家の指導をきちんと受けてほしいですね」と話します。

その上で、日々の心がけとしては「喫煙、不健康な食生活、運動不足、過度の飲酒をやめることです。これはSDGs(持続可能な開発目標)にも示されている方針です」。

いずれも「健康によくない」といわれていることですが、改めて見直す必要がありそうです。

特定健康診査とは

生活習慣病の予防を目的として、40歳以上75歳未満のすべての被保険者・被扶養者を対象に実施。血液検査、血圧検査などの結果により必要な保健指導が行われます。詳細は加入している健康保険の協会・組合へ。京都府のサイトからも検索できます。https://www.pref.kyoto.jp/kenshinjoho ※一部対象外


〝生活活動〟を意識して

喫煙・飲酒は控えるとしても、運動不足の解消には何をどの程度やればいいのでしょうか。

「動脈硬化症予防のガイドライン(※)によると、『中等度以上の有酸素運動を合計30分以上、週に3日は実施する』とあります」と濱口先生。ウオーキング、速歩、水泳やスロージョギング、サイクリングなどが適しているようです。

「30分続けて行う必要はありません。3分を10回でもOK」。スキマ時間にできますね。

ただ、ハード過ぎる運動は、人によっては心筋梗塞などを引き起こすので注意が必要とか。

また、〝生活活動〟もプラスになるといいます。「生活活動というのは、日常生活における家事や通勤、労働などのこと」。洗濯物を干す、犬の散歩、通勤時の階段昇降、営業活動なども生活活動に当たります。

「それらを意味のあるものと認識し、積極的に体を動かすようにしましょう。テレビのコマーシャルごとに立ち上がる、3分背伸びをするといったことでもいいのです。今より少しだけ、体を動かすことが重要です」

(※)日本動脈硬化学会編「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」

教えてくれたのは

京都府立医科大学
医学研究科
内分泌・代謝内科学
医学博士
濱口真英先生

食生活の〝思い込み〟に注意

血管の若さを保つ食生活について、同じく京都府立医科大学附属病院の管理栄養士・笹井由起子先生にたずねると、「バランスよい適量の食事で、栄養素を過不足なく摂取する」。これに尽きるそう。

「まずは1日3食、毎食ごとに主食・主菜・野菜の三つをとることから始めましょう。主食はごはんなどの炭水化物、主菜は肉や魚、豆腐、卵などのタンパク質が主です。

朝食・昼食はタンパク質が不足しがちですが、前夜に主菜を多めに作っておいてそれを加えるなど工夫を」

血糖値を気にして主食をとらない人もいますね。

「エネルギーの5~6割は主食の糖質。抜くとエネルギー不足になりますし、おかずの量が増えて塩分・脂肪をとりすぎる人も。血糖の上昇が気になるなら、雑穀米に代えるのも一案ですよ」

納豆やタマネギなど〝血液がサラサラになる〟といわれている食材についてはどうでしょう。

「ひとつの食材や栄養素で血管や血液の状態がよくなることはありません。なんでも過剰摂取はNGと心得ましょう」

特にリスクとなる塩分・糖質・脂質についての対策も聞きました。下表を参考にして。

塩・糖・脂を適量に抑える心得

とり過ぎ・不足を防ぐための注意点を笹井先生に教えてもらいました

塩分過多の食事は
高血圧のもとに

  • ついとり過ぎる人は、いつもの9割の味付けで調理してみる
  • だしを濃いめに取り、うま味を生かす
  • 漬物や干物は食べ過ぎない
  • よく使う調味料・ドレッシングなどの塩分量を把握する

特に果糖はとり過ぎると
肝臓に脂肪となって蓄積

  • 糖尿病でも適量の主食は必要
    ※医師と相談を
  • お菓子やお酒を主食の代わりにしない
  • 果物は果糖が多いので食べ過ぎない

過剰摂取で悪玉コレステロール、
中性脂肪が増加

  • 毎日揚げ物、はNG。焼く、煮る、レンジを使うなど油の使用が少ない調理を
  • ウインナーやベーコンなど加工肉は控えめに
  • 脂質が多いナッツ類もとり過ぎに注意

教えてくれたのは

京都府立医科大学附属病院
医療技術部
栄養課主査
笹井由起子先生

(2022年8月27日号より)