SNSで加害者に?! インターネットとの付き合い方

2022年7月1日 

リビング編集部

近頃、よく問題になるのがインターネットリテラシー(※)。SNSや動画サイトへの投稿などがきっかけで、思いがけず加害者になっていることがあるかもしれません。いま一度、インターネットとの付き合い方を見直してみませんか。

※インターネットを正しく使いこなすための知識や能力

イラスト/松元まり子

▶ 投稿しているイラストや写真の著作権は誰のもの?

今やスマートフォン一つで、簡単にインターネット上の情報が得られたり、SNSに手軽に自分の意見を発信できる時代。便利な一方で、著作権侵害、誹謗(ひぼう)中傷、フェイクニュースといった、さまざまなトラブルが起きています。

立命館大学 産業社会学部 社会学研究科教授・浪田陽子さんに、加害者にならないための注意点を聞きました。

まずは著作権侵害について。「自分が作ったり、書いたり、撮影したりしたもの以外は、全て他人の作品。無断でSNSなどに投稿・転載するのは著作権侵害となります」と浪田さん。

「自分で撮った写真や動画でも、他人や建築物が写っていれば違法になることが。皆さんが思っている以上に法律は複雑で、実は無断でオンライン上に公開していいものはほとんどないんです。著作権者が黙認しているだけで、いつ訴えられてもおかしくないケースはよく見かけます。

そして法を犯す危険があるのはもちろん、他人の作品を許可なく使うのは倫理的に良くないことですよね」

自分の作品が知らない間に使われていたら…、と想像してみることが大事ですね。

テレビ番組などの画像をSNSに投稿

出典を明記しても、テレビ番組、漫画、新聞記事などの画像を無断で公開するのは違法。使用したい場合は著作権者に許可を取る必要があります。好きな作品・有名人を応援するなら、公式アカウントの投稿をリツイート・シェア(※)するなどの方法で。

※他の人の投稿を再投稿して共有すること

ホームページの画像を転載

企業などのホームページ画像を勝手にSNSにアップするのはNG。代わりにURLを記載するなどしましょう。また、他人が投稿した画像・文章の無断転載も違法。無断転載された投稿はリツイート・シェアしないようにも注意を。

ゲームの実況動画を公開

著作権者の許可がある場合に限り、ゲーム実況の動画を公開してもOK。ホームページでガイドラインを設定しているゲーム会社もあるので要確認。

ファスト映画を作成して公開

ファスト映画とは、映画の映像や静止画を無断で使い、ストーリーが分かるようにナレーションや字幕を付けた10分程度の違法動画のこと。動画投稿者に対し、映画会社などが5億円の賠償請求を行ったケースもあります。

他人のイラストを無断で自分のSNSのアイコンに

他人のイラストなどは利用許可があるもの以外、LINE(ライン)、Twitter(ツイッター)といったSNSのアイコンに使うのはアウト。キャラクターや芸能人などの画像を使用している場合は、許可されているものか見直して。

▶ 匿名だという安心感から誹謗中傷・ネットいじめに

インターネット上では、「匿名なら何を言っても大丈夫」と思ってしまいがち。こうした気持ちが誹謗中傷や〝ネットいじめ〟につながると、浪田さんは話します。

「匿名だと安心していても、開示請求などにより発信者を特定することは可能です。思いつくままにネットに書き込むのではなく、それは自分の名前を明かした上で相手に面と向かって言える内容なのか、一度立ち止まって考えてから発信してください」(浪田さん)

有名人の悪口のほか、事件の加害者を特定しようとする行為も目立ちます。

「根拠もなく他人への悪口や嫌がらせを投稿したり、他人の個人情報をさらすなどの行為は罪に問われることもあります」

子どもに注意を促したいのがネットいじめ。

「ネットいじめはオンライン上で常時続き、被害者を苦しめます。後から書き込みを削除しても、一度ネット上で公開されたいじめの内容は拡散され収拾がつかなくなります。

悪口が書かれた投稿に〝いいね〟やリツイートをするのも、いじめの加担に。夏休みを前に、改めて親子でSNSの使い方について考えてもらえたらと思います」

プロバイダ責任制限法

ネット上で名誉を傷つけられたり、権利を侵害されたりした場合に、発信者を特定するための情報開示を求める権利を規定した法律。2022年10月までに、改正プロバイダ責任制限法が施行予定。発信者の名前などを特定するためには2回の裁判が必要でしたが、改正後は1回で済むようになります。

事件の加害者らしき人の個人情報をさらす

実際には事件に関係ない人を加害者やその家族だと決めつけ、勝手に名前、住所、経歴などをインターネット上で公開すると、プライバシーの侵害や名誉毀損(きそん)に

オンラインゲームのチャットで悪口を言う

オンラインゲーム中のチャットでは、「下手くそ」などの悪口やあおりを言わないように。軽い気持ちでも相手を傷つけてしまいます

▶ 気になるニュース、実はフェイクかも

Twitterのトレンド上位に入る、話題性のあるニュース。ついクリックしてしまうという人も多いのでは。でも、それはフェイクニュース、つまり偽情報かもしれません。

「事実ではない、センセーショナルな内容の投稿ほど早く拡散される傾向に。大事なニュースが埋もれてしまうので、少しでも怪しいと思ったら拡散しないでください」

では、フェイクかどうか見分けるコツは?

「普段からさまざまな情報に触れることで、世の中の流れが分かりフェイクを見抜けるようになります。SNSだけでなくニュースサイト、新聞、テレビ、ラジオなど、複数の情報源を持つようにしましょう。テレビでも、一つのチャンネルのニュース番組しか見ないという人は注意を」

また、〝フィルターバブル〟についても知ってほしいと浪田さん。

「閲覧履歴などにより、自分の好みに合った検索結果ばかりが表示される状態がフィルターバブルです。偏った情報に囲まれていると理解していれば、インターネットを使うときの意識も変わると思います。

インターネットに限らず、メディアリテラシーを身に付けることも大切です。全ての報道が正しいと思い込まず、日頃から情報の吟味を心掛けて。異なる意見を見比べてから、自分の考えを決めるようにするといいですね」

「動物園からトラが逃げ出した」
というSNSの投稿をすぐに拡散

珍しいニュースは多くの人の目を引き、SNSでも話題になりがち。大勢の人と共有したいと思っても、まずは信頼できる情報かどうか確かめて

トラブルに巻き込まれないために

インターネット上では、被害者にならないようにも気を付けたいもの。生活圏が分かる写真は載せない、自分のイラストには「無断転載禁止」と記載するといった対策も大事です。

「一度オンラインに流した個人情報は、どこでどのように使われるか分かりません。SNSの公開範囲を限られた友人だけにするのも一つの手ですね。インターネットの特徴を理解し、いいところは利用しながら上手く付き合っていきましょう」(浪田さん)

( 相談窓口 )

違法・有害情報相談センター (総務省)

https://ihaho.jp/

※インターネット上の誹謗中傷、名誉毀損、プライバシー侵害、人権侵害、著作権侵害などについての相談に対応。ウェブフォームからの相談のみ受け付け

みんなの人権110番 (法務省)

TEL:0570(003)110

※インターネット上のプライバシー侵害や名誉毀損などの相談に対応。午前8時30分〜午後5時15分(土日祝除く)

(2022年7月2日号より)