小さな楽しみは日々の暮らしの中に

2022年1月28日 

リビング編集部

今、見つめたい 日々を彩る小さな楽しみ

日々の中でほっと心が和んだり、ちょっと気持ちが上がったり。あなたにとっての〝小さな楽しみ〟は何ですか? 読者や専門家への取材から、毎日をより楽しむヒントが見えてきました。

※2021年11月にリビング読者にアンケート。有効回答数1032。本文( )内は読者のイニシャルと年齢 イラスト/まちょ

〝何げない毎日〟にある楽しみを改めて感じて

質問!

あなたは日々の〝小さな楽しみ〟がありますか?

海外旅行やイベントが制限されたこの2年。そんな中でも、毎日の暮らしを楽しむ人々の様子はさまざまに見られました。読者へのアンケートでも、日々の小さな楽しみが「いくつかある」「積極的に見つけるようにしている」という人が大半という結果に。

「仕事終わりの晩酌」といった習慣や、「子どもが寝てから夫婦でコーヒータイム」など家族との時間、ほかにも気晴らし・趣味系とその内容は多彩です。

「楽しいこと、というより〝自分が楽しめること〟が多いようですね」。そう話すのは、臨床心理士であり、メンタルと健康の関係を研究している京都橘大学健康科学部准教授の田中芳幸さん。

「人生の幸せは、たまの海外旅行などビッグイベントのみでつくられるのではありません。小さくても楽しめることが日々の中で多くあれば、快楽や充足感が重なり、結果的に幸せを感じられるように。そんな人は、ストレスに対して乗り越える力も強くなります。

こんな今だからこそ、当たり前だったことを『楽しい』『幸せ』と再認識するよい機会ではないでしょうか」

読者の〝小さな楽しみ〟とは?

習慣や家事から

  • 育児の合間にコーヒーと甘いものでブレーク(FAさん/32)
  • たっぷりのお湯でお風呂に入る(SYさん/62)
  • 晴れた日に大量の洗濯をして気持ちよく干し、風にゆれる洗濯物を見るとき(FYさん/63)
  • 毎日お弁当だけど、木曜はカレーを食べる!(YKさん/39)

週末やたまの〇〇

  • 週末は夫婦で出かけて「ポケモンGO」!(SMさん/40)
  • 週末前の夜に味わうアイスクリーム(NCさん/35)
  • たまにおかずを一品増やし、いいお酒と楽しむ(SSさん/58)

趣味や運動・美容

  • 好きなドラマや推しのDVDを見る(IHさん/46)
  • 毎日ジムに通い、ヨガやズンバを楽しむ(HKさん/73)
  • 散歩しながら写真を撮ったり、花をつんだり(ASさん/33)
  • 趣味のあんこ作りが上手にできたとき(FMさん/55)
  • 空き時間に自分でネイルケアをする(UAさん/35)

自然や植物にふれて

  • わが家のシンボルツリー・ハナミズキに四季を感じるとき(MSさん/29)
  • 自転車通勤で出合う四季折々の景色(MSさん/60)
  • 近所のごみを拾いながら、鳥の声、陽光を浴びる(CYさん/44)

家族やペットと、または一人で過ごす時間

  • 寝る前数分の夫婦の会話(TKさん/46)
  • 孫とビデオ通話する時間(OCさん/65)
  • 飼い猫とダラダラする(FAさん/22)
  • 子どもが寝た後、一人でテレビを見る(IMさん/38)

読者のまわりにも!〝楽しみ上手〟さんの特徴

読者のまわりにいる「小さな楽しみを見つけるのが上手な人」をたずねると、多かったのが〝子ども〟という答え。「2歳の息子は毎日いろんな発見の繰り返し。私も2歳になりたい、と思うくらい楽しみ上手です」(MYさん/40)のように、常に楽しんでいるわが子の姿に感心する親も。

ほか、「釣りやツーリング、サウナなど誘われると何でも参加する友人」(NRさん/33)などアクティブな人を思い浮かべた人も多数。

「子どもは遊んでいるうちに楽しくなるもの。アクティブな人たちも同じで、やりたいことを夢中でやっているうちに楽しくなるのでしょう」と田中さん。やりたいことに貪欲でチャレンジ精神がある、というのがポイントのよう。

「妻は毎日、自転車での買い物ついでに街並みや好きな猫を見るのを楽しんでいる」(TKさん/46)といった例については、「いつもやっていることを楽しめるのは、まさに楽しみ上手」とのこと。

「目も心も開いているから、今ここで起こっていることに向き合い、味わうことができているんですね。日々追われがちな私たちですが、今をゆったり受け入れる心を持ちたいものです」

読者推薦の楽しみ上手さんにインタビュー

好きなことには全力!自宅を居酒屋や旅館に

マヤーチェさん(45)

マヤーチェさんは、友人SMさんから見ると「常に楽しそう」。外出自粛の際は、お品書きを作り少しいいお酒などをそろえて、「おうち居酒屋」として家族と楽しみました。温泉のもとを取り寄せ「おうち温泉」、梅の枝をお風呂に飾り「おうち花見」も。「ハマればとことんやるタイプ。人が楽しんでくれると自分も楽しいんです」と話します。

常に好奇心のアンテナを張り、「次はあれをやってみよう!」とアイデアを得ているそう。興味がないことでも取りあえずチャレンジ。「やってみたら楽しいかもしれないし、人間関係も広がりますよ」

四季の変化に敏感。趣味で気分転換も

よんげんさん(30)

「あれはオリーブ。これはシマトネリコ」。OCさんは、夫のよんげんさんと散歩するとその草木の知識の豊富さに感心するといいます。旬にも敏感で、「そろそろ菜の花がおいしい時期やね」など自ら提案。季節の変化を丁寧に、家族で味わっているのだそう。

落ち込んだときは、趣味に関する動画を見たり観葉植物を買いに行ったり、「好きなことで積極的に気持ちを切り替えるようにしています」。自宅の観葉植物はなんと約30鉢にも。「世話をして成長を見守るのが楽しみ。子どもと一緒ですね」


そのライフスタイルがヒントに

手づくり暮らし研究家 美濃羽まゆみさん

手仕事の道具が彩る自宅にて

築100年以上の京町家に、夫・子ども2人と暮らす美濃羽まゆみさん。その手作りを取り入れたライフスタイルにはファンも多数。洋裁作家の仕事や講演会、執筆、家事に子育てと多忙な毎日の中で、小さな楽しみを感じるときとは?

「猫と遊んだり、子どもと触れ合ったりするときですね。仕事中に邪魔をされてイラッとすることもありますが(笑)、休憩の時間だと教えてもらっている、と前向きにとらえなおします」

仕事の前や合間に取るお茶休憩もほっとするひととき。「休憩中は何も考えず、お茶を味わうことに集中します」。ついスマートフォンを見たりしてしまいそうですが、「スマホは持っていません」とのこと!

「どんなときも、〝ながら〟ではなく〝今を味わう〟こと。過去や未来のことを気にしすぎると、不安や後悔ばかりふくらんで、目の前にあるせっっかくの幸せを見失ってしまいます。今に集中しきることで、次に進めると思うんです」

子どもや猫は今に引き戻してくれる存在、とまゆみさん。

自分の〝好き〟を基準に

長男慧くん、愛猫のりまきと和むひととき

梅干しやらっきょう漬けなど保存食を作り、毎日土鍋でごはんを炊き、粉石けんを溶かして家中を掃除。まゆみさんの暮らしはステキだけれど、正直面倒なのでは?

「好きだから続けられます。苦手なお菓子作りとかは全然しないんですよ。まずは自分が楽しい、そして実益を兼ねていることしかやらない。その基準の中なら、手間も苦にはなりません」

実は子どものころから保存食が好きで、作り方を調べていたそう。

「みなさんも子どものころ好きだったこと、やりたくてもできなかったこと、ありませんか。それをほんの少し暮らしに取り入れてみては。そしてじっくり味わえば、日常の中に楽しさを感じられるはずです」

ブログ「FU-KOなまいにち」
https://fukohm.exblog.jp/


無理に探すのではなく心のゆとりを持つ

読者の中には小さな楽しみがあまりない、まったくない、という人も。

「楽しいことを見つけよう、と思ってもなかなか見つからないもの。『嫌じゃない』というところからキャッチしてみてください」と田中さん。子どもの世話をきちんとできた、今日も料理を作れた、階段を上れた…などでOK。

気分転換するのもおすすめ。「いろいろやってみるうちに、楽しめることも見つかります」

また、「子どもが笑顔を見せてくれた、感謝」「今日もご飯がおいしかった、感謝」など、他者への感謝の気持ちも楽しみにつながるそう。

大切なのは、心の余裕を持つこと。「顔を上げて歩けば、探さなくても季節や人の変化を自然と感じられるはず。ささいなことでもいいのです。寝る前に三つ、今日の小さな楽しみを思い出してみるといいですね」

教えてくれたのは

京都橘大学 健康科学部准教授
田中芳幸さん

「楽しみのハードルを上げ過ぎず、ゆったりした心で過ごしましょう」
https://www.tachibana-u.ac.jp/

(2022年1月29日号より)