地域にエールをおくる ふるさと納税

2023年11月2日 

リビング編集部

ふるさと納税制度が施行されてから今年で15年。10月にはルールの改正がありました。そこで、改めて仕組みや納税方法について解説。京都府内の地域を応援できる、特色ある取り組みもいくつか紹介します。

イラスト/オカモトチアキ

10月にはルール改正応援の思いを寄付金に託して

「ふるさと納税は、人口流出の多い地方に貢献する仕組みができないかという発想から提唱されました」と、京都文教大学総合社会学部総合社会学科准教授の山本真一さん。公共経済学を専門に、寄付の役割などについて研究しています。「ふるさと納税は思いをお金に託すことのできる税金。Uターンできない人に〝ふるさと〟を思って、寄付してもらう。出身地だけではなく応援したい地域へ寄付ができ、寄付金の使い道も選べます」

寄付により次年度の住民税や所得税が控除されて多くは地域特産の返礼品がもらえます。この返礼品について10月にルールが変更に。自治体は返礼品と経費の総額を寄付額の5割以下に抑える、特産品としての熟成肉と精米は同一都道府県内で生産されたものに限る、などが追加されました。

「(変更によって)寄付額の設定が上がる、返礼品の量や物が変わるといった影響がありますが、地元の1次産業の生産者に適切な恩恵があるといった一面も。

寄付行動には、共感が大事な要素。社会課題に対する意識や関心から応援したい自治体に寄付することで、満足感やその地域と関わっているという安心感にもつながります」

教えてくれたのは
京都文教大学 総合社会学部 総合社会学科 准教授
山本真一さん

\ ふるさと納税、実際に始めるには? /

全国のリビング読者のアンケートによると、約47%の人がまだ一度もふるさと納税を行ったことがないとの結果が。「やり方が分からない」との声も多かったことから、改めて納税方法について解説します。

※アンケートは、サンケイリビング新聞社とリビングくらしHOW研究所が2023年6月に実施。有効回答数2277

STEP1寄付する自治体を選ぶ

応援したいプロジェクトや返礼品などを基に寄付する自治体を選びましょう。内容は、各自治体のホームページや、ふるさと納税を取り扱う専用サイトなどから確認できます。

日本全国どこにでもふるさと納税はできますが、住民票登録をしている市区町村、都道府県へふるさと納税をする場合、返礼品は受け取れません。

例:京都市に住民票登録をしている人の場合、京都府や京都市へふるさと納税をしても返礼品は受け取れません。京都府内の別の市町村、長岡京市などは受け取れます。

STEP2寄付の手続きをする

各自治体のホームページやふるさと納税の専用サイトから手続きができます。また、自治体によっては郵送などでも受け付けています。

控除上限額をチェック

ふるさと納税は、寄付金から2000円を引いた金額が住民税や所得税から控除されます。控除上限額は給与収入や家族構成、住宅ローン控除や医療費控除といった他の控除額によって変わるので確認を。寄付額が上限額を超えた分は、控除されず自己負担になります。総務省のホームページから目安を計算することもできますよ。

STEP3寄付金受領証明書を受け取る

寄付したことを証明する寄付金受領証明書を、郵送などで受け取ります。確定申告が必要な人は、寄付金受領証明書を添付し、期間内に申告することで控除が受けられます。確定申告が不要な人は、ワンストップ特例制度(※)が利用できます。

(※)ワンストップ特例制度

確定申告が不要な給与所得者で、寄付する自治体数が5団体以内などの条件を満たすと、確定申告をせずに税額控除を受けることができる制度。申請書の提出で税額控除の手続きが完了します。手続きの詳細は各自治体に問い合わせを。

賛同するプロジェクトに寄付

自治体が行うプロジェクトの趣旨に賛同して、その実現のためにふるさと納税を活用します。京都府内の3市をピックアップしました。

長岡京市

西山の自然環境を守るための〝共感型〟寄付

「京都西山再生プロジェクト」を実施する長岡京市。同市内西域の森林地帯・西山の整備や植樹活動にふるさと納税を活用しています。

「台風などの自然災害や放置竹林、害虫・鹿の被害などが原因で、多様な植生が失われていることが西山の課題です」と同市の担当者。「そんな西山のことを思ってくださる方に寄付いただき、スタートから7年目の現在は、約300本を植樹できました。本来の自然環境を残すために、コナラやクヌギといった在来種、かつ京都府内で生産された苗木に限り植えています」。国蝶(チョウ)といわれるオオムラサキが好む在来種のエノキを植樹するなど、生物多様性も意識しているとか。

「こちらは返礼品などがない、〝共感型〟のふるさと納税。代わりに、整備エリアに寄付者のネームプレートを設置し、植樹イベントへの招待も予定しています」

コロナ禍前には、植樹イベントを実施したことも

京丹後市

市内4地域を直接応援。関わる人が増えることに期待

京丹後市は、8月に「地域版ふるさと納税」を創設。久美浜町佐濃地域や弥栄町野間地域など、市内4地域が取り組む各プロジェクトに、寄付金の9割を補助金として交付する取り組みです。今秋からは寄付金の4割を交付、寄付者には返礼品を送るという方法もスタート。「移住促進事業」や「多世代の集う場所づくり」といった地域活性化のためのプロジェクトを寄付先に選べます。

同市の担当者は、「この新しい仕組みで、純粋にプロジェクトを応援したい人と地域を直接つなぐことができます」と。「ホームページなどで外に向けて情報を発信することで、改めて自分たちの地域を考えるきっかけになります。市外に出て行った人たちのUターンにつながる可能性もあり、今後対象の地域を増やしていきたいと思っています」

何らかで同市とかかわる人々の〝関係人口〟の増加にも期待しているそうで、「『いつか住んでみたい』と思ってもらいたいです」。

久美浜町久美浜一区地域では秋祭り継承のためのプロジェクトなどに寄付できます

亀岡市

使っていない楽器を、思いとともに次世代へ

使われなくなった楽器を役立てるユニークなふるさと納税も。亀岡市では3年ほど前から「楽器寄附ふるさと納税」を開始。お金ではなく、楽器を寄付することで、その査定額が税金控除される取り組み。これまで市内の学校に約50台のフルートやホルン、サックスなどが届けられました。

「亀岡市内の五つの中学校に吹奏楽部がありますが、楽器は高く買い替えが難しいため古い楽器を使っていることが多かったんです」と同市の担当者は話します。「そうした問題を解決しようと始めた取り組み。環境問題を重視する本市の政策ともマッチしました。大切に持っておられたものを次世代に、思いとともにつなぐことができます」

返礼品はありませんが、寄付者には学校からお礼の手紙が届くそう。演奏会への招待を考えている学校もあるとか。

寄付された楽器を使い、全日本管楽合奏コンテストに向けて練習する大成中学校の吹奏楽部

魅力に直接触れて寄付は現地で

観光や仕事などで訪れたときに現地でふるさと納税をすると、返礼品やそのエリアで使える電子ギフトがもらえるというものもあります。

京丹波町

栗や豆が旬の時期に訪れるからこそ生まれるつながり

昨年9月から「店舗型ふるさと納税ふるさとズ」を導入した京丹波町。対象となる直売所やゴルフ場などは6カ所。寄付をしたその場で返礼品を受け取ることができます。

「直売所であれば2週間〜1カ月ほどしか対応していないこともあり、あえて限られた期間にしか利用できないことも大切にしています」と同町の担当者。「それは、栗や豆などがおいしい時期に京丹波町に来てほしいから。ウェブサイトで返礼品を選ぶだけだと寄付をした感覚がない場合もあります。現地で見て返礼品を選べることから、商品への満足度も高く、町や地域の人とのつながりも生まれます」

海の京都DMO

共通の電子商品券で七つの市町を巡って

海の京都エリアの七つの市町(福知山市、舞鶴市、綾部市、宮津市、京丹後市、伊根町、与謝野町)を対象に、「海の京都DMO」が導入した「旅先納税」。寄付をすることで、電子商品券「海の京都コイン」がもらえます。

「エリア内のどの市町に寄付いただいても寄付額の30%が『海の京都コイン』として返礼されます。各市町を巡って使っていただくことができて、お得に旅ができます。伊根町であれば舟屋を守りたいなど、訪れた地域への貢献にという気持ちで寄付していただく方も多いです」とは同担当者。「即時発行できるので、訪れた飲食店や宿で気軽に寄付できるとの声もあります。現在使える施設は、236店舗。今後使える場所も増やしていきたいです」

(2023年11月4日号より)