近年よく目にする「自己肯定感が低い」「自己肯定感を高める」といった言葉。自分を肯定するとはどういうこと? 高いほうがいいもの? 専門家に聞いてみました。
※2021年6月にリビング読者にアンケート。有効回答数868
イラスト/かわすみみわこ
読者へ質問
長所・短所含めて、あなたは今の自分に満足していますか?
満足している、の理由は?
- 長所も短所も私らしさ。短所と〝共存〟しています
- これといった不満もなく、毎日が穏やか
- 自分で選んできた人生の結果、今があるから
- 自分を認めてくれる配偶者や友人がいる
- 楽天的でくよくよ悩まない性格
- やりがいのある仕事を持ち、家族仲よく暮らしている
- 趣味などで毎日充実している
など
満足していない、の理由は?
- 毎日短所ばかり目につき、自己嫌悪になる
- 家事と子育ての両立がうまくできない
- 退職してやることがなく、日々むなしい
- あの時こうしておけば、という後悔ばかり
- 年を取って気力・体力が衰えた
- 親の介護、家族の病気などで日々に追われ、自分のやりたいこともわからない
- もっと自分は成長できるはず
など
読者の45%は自分に満足していない
「あなたは長所・短所含めて今の自分に満足していますか?」。読者に質問したところ、「満足・とても満足」は約55%、「あまり満足していない・まったく満足していない」は約45%という結果に。読者の半数弱は自分に肯定的ではない、ということでしょうか。
「自己満足と自己肯定は別のもの。自己満足は、自分の中にある基準に対してそれを満たしていればよし、と考えます」。そう話すのは、京都教育センター代表で臨床心理家の高垣忠一郎さん。
確かに満足していない人の理由を見てみると、性格や能力、生きがい、若さなど「こうありたい自分」とは異なる状況に不満を抱いているようにも感じられます。
周囲の目や評価に振り回されがちな現代
「不満足」という読者の中には、退職や老化、自身の病気を理由に挙げる人もいました。
「役立つ人間、求められる人間という〝有用感〟が持てなくなったことで、自分を受け入れられなくなってしまったのかも」と高垣さん。
「競争社会の日本では、周囲に評価され、認められた部分のみで自分の価値を測っている人も少なくありません。
そうではなく、短所も含めて自分を存在レベルで認め、ゆるし、丸ごと受け入れる。それが自己肯定感なのです」
高垣さんが30年以上にわたって提唱してきた自己肯定感。より詳しく聞いています。
教えてくれたのは
京都教育センター代表臨床心理家
高垣忠一郎さん
立命館大学名誉教授。不登校児やその親のカウンセリングも行う。著書に「生きることと自己肯定感」(新日本出版社)、「揺れつ戻りつ思春期の峠」(新日本新書)など
長所も短所もすべて受け入れてゆるす
「ぞうさん ぞうさん おはなが ながいのね
そうよ かあさんも ながいのよ」
自己肯定感の本質は、この童謡「ぞうさん」(まど・みちお作詞)がよく表していると高垣さんはいいます。
「子象は鼻が長いことをからかわれますが、気にしていません。むしろ大好きな母と同じだと誇らしく応えている。
それぞれの動物には特徴がありますが、その存在、つまり〝いのち〟自体は優劣が付けられません。それは人間一人一人も同じです」
あるがままの自分を認め、許すということを、高垣さんはもう一つの例で表してくれました。
「生まれたばかりの赤ちゃんがオムツがぬれて泣いている。親は怒ることもなく、『よしよし』と声を掛けますよね。それは、立派なおしっこをしたね、という評価でもありません。『おしっこしても大丈夫だよ。ぬれて気持ち悪いね』という親の共感とゆるし。その『よしよし』という気持ちを、自分自身にも持つということです」
高い・低いではなく〝ふくらませる〟もの
よく、「自己肯定感が低い」「自己肯定感を高めるためには」といったフレーズも目にします。「高めなければいけないもの」といったある種の焦りを感じてしまう人もいるようですが。
「自己肯定感は〝愛情でふくらませるもの〟。高い、低いといった評価する対象ではないのです」
童謡「ぞうさん」の子象はきっと、母象の愛情をいっぱいに受けて育ったのだろう、と高垣さん。
「わたしたちはみんな自己肯定感という〝浮き輪〟を持っています。それが愛情で十分にふくらんでいる状態は、海に気持ちよく浮かんでいるような感じです。たとえ人生の荒波がきても、沈むことはありません」
読者に質問
自己肯定感を持つためにしていることはありますか
悩みはすぐ家族に相談。違う視点で意見がもらえます
ウオーキングなどで自然と触れ合う。おのずと気持ちも前向きに
子どもへ
人格や性格を否定せず、行動だけ注意するようにしています
子どもへ
『どんなあなたでも愛している』と意識的に伝えるようにしていました
自己肯定感の〝浮き輪〟をふくらませるために
自己肯定感を持つために行っていることを読者に聞くと、「大人になってから自分の自己肯定感を高めるのは難しいのでは」といった声がありました。大人が、自身の自己肯定感の〝浮き輪〟をふくらませるにはどうしたらいいのでしょうか。
「自分で自分に愛情を注ぐことです。大好きな人が困っていたら、話を聞いてあげたいと思いますよね。大切な自分の心の声にもしっかり耳を傾け、自己と対話するゆとりを持ちましょう。しんどいとき、つらいとき、『なぜつらいのか、なぜそう感じるのか』をよく考えてみてください」
「悩みや出来事を家族・友だちと話す」という意見については、「それもいいですね。自己や他者との対話を通して、心の奥底にあった感情や気づかなかった自分の一面が見えてきます。視野が広がることで、ひとまわり大きな自分になれるはずです」
自然の中で過ごすのもおすすめだそう。「自然と触れ合っていると、社会的存在ではなく一つの〝いのち〟としての自分に気づくことができます」
他人と比べてしまってもいい、とのこと。
「互いの違いを認め、楽しむ。多様性が認められる社会とは、そういうことだと思います」
子育て中の親に向けて
一方、親として子どもの自己肯定感をふくらませるためにできることは。読者からは「ほめる」という意見が多数。
「ほめる、というより一緒に喜ぶ、という意識を持つ方がいいでしょう。もっと大切なのは、失敗や挫折をしたときにゆるすこと。アドバイスはひとまず置いて、気持ちに寄り添いよく話を聴くことです」
自分と同じく、子どものすべてを受け入れゆるすこと、と高垣さん。
「将来のため、という〝親心〟は、早く自分が安心したいという〝下心〟ともいえます。子どもが〝今〟幸せか、楽しいかを考えてください。たとえ勉強できなくても、学校に行けなくてもいい。その存在自体が大切だということを、本心から伝えてあげてくださいね」
(2021年9月25日号より)
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