3・11から10年 家族で考える防災・減災

2021年3月5日 

リビング編集部

「東日本大震災」(3・11)から10年。先月にはその余震とみられる震度6強の地震も起こっています。この機に、家族で防災について改めて考えてみませんか。関係各所に聞いた対策のポイントを紹介します。

イラスト/松元まり子

「3・11」以降、防災の重要性が一層認識されるようになりました。災害が起こることを前提に、その被害を最小限に食い止める「減災」という考え方も広まっています。読者にアンケートを行ったところ、「防災について家族で話し合っている」という人は73・8%。ただ、避難場所や避難経路は確認していても、自宅外で被災したときの避難や家族間の連絡方法については共有していないという人も。

「京都市市民防災センター」によると、「『防災の日』など年に1、2回は災害時の行動などを確認して備えてください」とのこと。左のチェックポイントを参考に話し合ってみましょう。下記では、特に気を配りたい家族に必要な対策を紹介しています。

※2021年1月にリビング読者にアンケート。有効回答数580

家族で開こう! 防災会議

家族で話し合い、確認したい内容を「京都市市民防災センター」に聞きました。

  • 「京都府マルチハザード情報提供システム」(http://multi-hazard-map.pref.kyoto.jp/top/top.asp)では各エリアの水害・地震・土砂災害などの危険性が一度にチェック可能。避難所までのルートも確認を

  • 登下校時や子どものみで留守番をしているときなど、想定されるシーンごとに家族がどう行動するかを考えて

  • 別々に被災したときの集合場所や連絡先(親戚宅など)を確認。災害用伝言ダイヤル(171)を使う練習もしてみて(毎月1、15日などに体験利用可能)

  • 備蓄品の賞味期限、防災グッズの点検や使い方を確認。食料・水は最低3日分、できれば7日分以上あるのが望ましい

  • 家の耐震性を確認するほか、倒れやすい家具やブロック塀などがあれば固定や補強を

家族に合わせた備え・心がけを

幼い子どもや高齢者、障がい者などは「災害時要配慮者」。上記の「防災会議」に加えて家族が知っておきたい備えや心がけを、京都府危機管理部災害対策課市民団体「チーム防災OTOKUNI」ほかで教えてもらいました。

まずは、ハザードマップや「マルチハザード情報提供システム」で、居住地が避難が必要なエリアかを家族で確認しておきましょう。安全が確保できない場合は早め早めの避難を心がけて。大雨の中や夜間の移動は要配慮者にとって危険が伴うこともあります。台風の進路や河川の水位の情報、市町村からの避難情報などもチェックを。

避難所は要配慮者には何かと不自由な点も。安全なエリアにある親戚や知人宅も避難先として検討してみましょう。

いざというときに助け合えるよう、日ごろから近隣とのコミュニケーションを図っておくことも大切です。

【高齢者】健康状態に合わせて準備を

脚が不自由な場合、予備のつえや電動カートを常に玄関に準備しておくとともに、早めの避難を促して。嚥下(えんげ)機能が衰えている場合は、普段食べている介護食やとろみ剤も避難所に持参を。

離れて住んでいる親には、一緒に避難所や安全な避難経路の確認を行うほか、日ごろから近隣住民との交流や地域包括支援センターなどとの連携も図っておきましょう。介護が必要、一人で避難が難しいといった場合は各自治体の「避難行動要支援者名簿」に登録を。災害時の避難誘導、安否確認の際に活用されます。

離れたところに住んでいる親の見守りには、国土交通省による登録型のプッシュ型メールシステムによる高齢者避難支援「逃げなきゃコール」(https://www.mlit.go.jp/river/risp/policy/33nigecall.html)が活用できます。指定のアプリに親の居住地を登録しておくと、そのエリアに水害・土砂災害の危険が迫ったとき子どもに通知が来ます。

【持ち出し袋にあるといいもの】

持病の薬、お薬手帳/おむつなど介護・看護用品/柔らかい介護食、嚥下(えんげ)補助のとろみ剤/入れ歯、洗浄剤/液体歯磨きや口腔用ウエットティッシュ/アイマスク/ウエットシート/高齢者手帳/「お薬手帳」/予備のめがね/日ごろ使っている補聴器や携帯用杖や車いす など

【子ども】子どもだけでの被災も想定

「学校・幼稚園にいるときは先生の指示に従う」「登下校中は塀から離れ安全を確保する」「学校が近ければ戻る」など、シチュエーションごとの対応を親子で想定しておいて。親は非常時の学校の対応や連絡先を把握するほか、父母の携帯電話や不通の場合にかける親戚の電話番号、災害伝言ダイヤル(171)などを記した「家族連絡カード」を作成し、普段から子どもに携帯させておくとよいでしょう。

乳幼児の場合は、ほ乳瓶など普段使いなれているもの、好きなお菓子、おもちゃなど心が落ち着くものを避難グッズに加えて。

“防災散歩”として親子で避難経路や登下校の道を一緒に歩き、アンダーパス(くぐり抜け式道路)、柵のない水路など危険な場所を確認したりしても。テントを張り家族で“避難ごっこ”と称して防災グッズの使い方を確かめる、非常食を食べてみるなど楽しみながら学ぶと子どもも受け入れやすくなります。

【持ち出し袋にあるといいもの】

乳幼児用:月齢に合わせた着替え/普段使っている粉ミルクやほ乳瓶/離乳食/おむつ/おしりふきなどの生活用品(マザーズバッグに常備しておくと持ち出しやすい)/おんぶヒモ

子ども全般:/「家族連絡カード」/母子手帳/好きな絵本、ぬいぐるみ、おもちゃなど心が落ち着くもの/お菓子/アレルギー対応食/体温調整用のカイロやポータブル扇風機 など

【障がい者・難病患者ほか】避難時はヘルプマークを携帯

まずは市町村や相談支援事業所などと非常時を想定した相談をしておいて。一人で避難が困難な人は「避難行動要支援者名簿」に登録を。

避難時はヘルプマーク(障がいの内容、必要とする支援や通院先、薬などを記載したもの)や障がいをわかりやすく表示した布などを身に付けておくと、周囲もサポートしやすくなります。発声に障がいがある人は笛や防犯ブザー、コミュニケーションのためのメモ・ペンなども準備を。電源が必要な医療機器を使用している場合、停電時の対策(予備のバッテリーや電気自動車からの電力供給など)も必要です。

声を出しにくいといった人は、スマホの防犯ブザーや光を発するアプリの使い方を知っておくと役立ちそうです。

【持ち出し袋にあるといいもの】

ヘルプマーク(障害の内容、必要とする支援や通院先、薬などを記載したもの)や障害をわかりやすく表示した布など/笛・防犯ブザー/コミュニケーションボードやメモ、ペン(ガムテープと油性ペンで代用も可)/必要な医療機器 など

【ペット】人間同様シミュレーションを

7日分のフードと水、トイレグッズなどは人間同様準備をしておいて。

避難所によりペット同行の可否は異なります。地域の役所や自主防災会に事前に確認を。同行できても飼い主と別の場所に収容されることもあるので、ペットを連れての車中泊やテント泊、知人宅への避難なども検討し、シミュレーションしておくことが必要です。移動用のキャリーなどに入る練習をさせておくことも大切。

はぐれたときのためマイクロチップの埋め込みや迷子札を装着させておくほか、飼い主はペットと一緒に撮った写真の持参を。

特に猫は地震などのとき驚いて隠れてしまい、探すのに時間がかかることも。日ごろから隠れそうな場所を把握しておき、その近くにゲージや洗濯ネット(逃亡防止)を置いておくのがおすすめ。

持病があるペットのケアは避難所では困難。かかりつけの獣医やトリミングサロンに相談し、非常時の預け先を考えておいて。

何よりも、飼い主が無事でなければペットも助かりません。緊急の場合は自身の身の安全を一番に考えて。

【持ち出し袋にあるといいもの】

7日分のフードと水/薬/使い慣れたトイレ砂やシート、ゴミ袋などの生活用品/排泄物の処理道具/おもちゃ/飼い主とペットが一緒に写った写真/キャリー・敷物・洗濯ネット(猫の逃亡防止)/予備の首輪・リード/既往症やかかりつけの動物病院などを記したメモ など

取材協力/認定NPO法人「アンビシャス」

※上記【持ち出し袋にあるといいもの】は、主に事前避難の際を想定しています。地震など突然の災害により即時避難が必要な場合は、荷物が持ち出せなくてもまずは身の安全を確保しましょう。

そのほか配慮が必要な人

持病がある、服薬中の人

自分の薬とともに「お薬手帳」も忘れずに持ち出しを。病状を記録した体調管理ノートもあるとベター。避難所では最後の1錠を残しておくと、種類がわかるので処方してもらいやすくなります。

iPhone(アイフォン)には「メディカル」という設定があり、応急処置をする人が暗証番号なしでも医療情報が見られるようになっているのでその機能を活用しても。

妊婦

体を冷やさないための毛布やカイロのほか母子手帳(産院や出産予定日を記載)の携帯を。妊娠後期の場合、分娩(ぶんべん)準備品や出産後必要なおむつなども用意しておくとよいでしょう。京都市など市町村によっては妊産婦用の避難所を設けているところも。上の子がいる場合は親戚や知人に預けられるか確認を。

常に出産準備物を玄関周りに置いておくとよいでしょう。つわりなどで特定のものしか食べられないような場合は自分で準備が必要です。京都市など市町村によっては妊産婦用の避難所を準備しているところも。

外国人

在留外国人が周囲にいる人は、次のことを伝えてあげて。「京都府国際センター」のホームページでは外国人住民向け「防災ガイドブック」がダウンロード可能(10言語対応)。15カ国語で確認できる気象庁のホームページの防災情報のほか、観光庁の外国人旅行者向け災害時情報提供アプリ「Safety tips」も活用できます。非常持ち出し袋にはパスポートや在留カードのコピーを入れておきましょう。

母国は災害が少なく避難所の概念がない人も。避難時はもちろん日ごろから防災情報を共有する、わかりやすい日本語で説明する、避難訓練に誘うなどサポートを心がけて。

外国人は避難所でも孤立してしまうことも。距離を取らず、助け合う気持ちで接したいもの。「給水」「配給」といった災害用語は理解できないこともあるので、周囲の日本人が簡単な言葉に言い換えて伝えて。

「京都府国際センター」では、日本人対象に「災害時外国人サポーター」を随時募集しています。https://www.kpic.or.jp/saigai/appli.html

取材協力/京都府国際センター

●覚えておきたい避難所での注意点●

避難所では体を動かさないことでエコノミー症候群になってしまうことも。高齢者は特に意識してできるだけ動くこと、そして我慢せず水分を取るよう家族も気を付けて。小さな子どもは犯罪に巻き込まれる危険性もあるので、トイレなども大人が付き添い一人で行動させないようにしましょう。障がい者や要介護者は管理者に必要な支援を伝えて。持病がある場合も、避難が長引いて薬が切れる、病状が心配といったときは管理者や救護班に相談を。どんな人も、助けが必要な時は遠慮なく周囲に声をかけましょう。

コロナ禍での京都府・京都市の取り組みは?

「京都府危機管理部災害対策課」によると、府では市町村に対してコロナ禍での避難所運営のマニュアルを示し、必要な備品の購入など感染予防対策への資金補助などを行っているそう。

京都市の場合を「京都市行財政局防災危機管理室」に聞きました。

避難所では受付での体温計測や「健康調査票」の記入、所内に体調不良者用の別室、間隔を保つための間仕切りテントなどを準備。そのほか協定を結んだ市内ホテルの空き部屋への避難など密を避けるための対策を講じています。

「安全性が確保できるのであれば自宅での垂直避難や親戚・知人宅への避難も検討を。また、避難所には消毒液や体温計、マスクなどの持参をお願いします」と京都府・京都市からの協力要請もあります。

(2021年3月6日号より)