女性の体をサポート 広がるフェムテック

2022年11月18日 

リビング編集部

女性の体をサポート 広がるフェムテック

女性特有の体の悩みをサポートする「フェムテック」。近頃注目されていますが、読者に尋ねると「知らない」という人が約8割でした。知れば毎日がもっと快適になるかも!

※2022年10月にリビング読者(女性)にアンケート。有効回答数756、平均年齢54歳 イラスト/かわすみみわこ

生理、更年期、婦人科系疾患などを支える製品やサービス

「『フェムテック』とは、〝Female(女性)〟と〝Technology(技術)〟を掛け合わせた言葉。女性の健康課題を解決するための製品やサービスのことです」。そう話すのは、女性向けのヘルスケア事業などに取り組む「SUSTAINABLEME(サスティナブルミー)」の後藤友美さん。

フェムテックは、「生理」「不妊」「妊娠期・産後」「更年期」「婦人科系疾患ケア」「セクシャルウェルネス」「メンタルヘルス」といったジャンルに分けられるとか。

「フェムテックというと聞き慣れないかもしれませんが、生理用品もその一つです。ほかにも月経周期管理アプリ、吸水ショーツ、月経カップ、妊活サポートアプリ、授乳服、更年期ケア用品、医療用ストッキングなど、いろいろなものがありますよ」

  • 吸水ショーツを使うようになり、ナプキンかぶれがなくなった(49歳)
  • 月経カップは快適。でもメンテナンスには少し手間取る(44歳)
「フェムテック」を知っていますか?

うまく生活に取り入れている読者も

フェムテック製品・サービスを利用してみた感想も届いています。

月経周期管理アプリを使っている人によると、「ホルモンバランスを見える化し、肌荒れや気分の変調からのイライラを回避できている」(34歳)、「次の生理予定日を把握し、その前から吸水ショーツをはくようにしています」(38歳)。こうしてうまく生活に取り入れているのですね。

また、女性の体特有の話題に対する思いや世の中の雰囲気も変化してきているよう。

「子どもたち世代では今より話しやすくなっているように、生理で調子が悪いときは息子に伝えている」(42歳)、「生理休暇はあるが、更年期休暇はない。これからは年齢を重ねた女性への配慮も必要だと思う」(50歳)など、さまざまな声がありました。

女性の体の話題についてどう思う?

  • 昔は地味だった生理用品のパッケージですが、今はかわいい商品がたくさん! 生理に対する見方の変化をうれしく感じます(41歳)
  • 最近は男性の更年期障害があることも分かっているので、男女を問わずこの時期の体調不良について社会の理解が進んでほしい(51歳)
  • 現在妊娠中ですが、上司や周りに理解がないと仕事を続けにくい。妊娠や更年期などに関する社内研修があれば理解が深まると思う(33歳)
  • タブー視するのはいただけないが、かといってあけすけに話すことでもないと思う。話題にするのもTPOを考慮して、ということをそれぞれが自覚する必要はあるのでは(58歳)
  • 生理のつらさは女性の中でも個人差があり、我慢している人からすればサボっているように思われることも。「そういうことがある」と違いを認め合える社会になってほしい(45歳)
  • 不妊治療のことはデリケートな話題なので子供がいない夫婦と会話をするときは気を遣う。ただそうした悩みが話しづらい雰囲気だと、若いときに耳にする機会が少なくなり、30代でも簡単に妊娠できると思ってしまい、妊活が遅くなると思う(33歳)
  • 娘が生理になったことを親しい友達に話したと聞いて、学校での教育が変わってきていると感じました。私としては少し戸惑い気味ですが、更年期を迎え、女性ならではの悩みや相談をしやすくなるのは周りにより理解してもらう上で大切だと思います(45歳)
  • 不妊治療がどれだけ大変なことか周知されていないと感じます。治療もそうですが、メンタル的なものもとても関わってくる。もっと理解が広がってほしいです(44歳)
  • 生理や更年期に理解がなく、心身ともにつらい思いをしている人を労れない人は男女問わずまだまだいる。「男性だって更年期やしんどいときはあるのに女性だけ特別扱いはおかしい」と夫は言うけれど、それが何十年も続いているんだよ!と思う。老若男女しんどい人が大事にされる世の中になれば(50歳)
  • 会社の制度で生理休暇はあるが、男性の上司には言いづらい。またどうしても当日に伝えることになるので、代わりの要員を手配する手間を考えるとためらってしまう(35歳)
  • 妊娠は配慮する側もされる側もしやすかったが、生理痛や更年期は発信する方が遠慮してしまう。もっとお互いに体を大切にする・思いやることが当たり前の社会にしていきたい(62歳)

高まるセルフケアの意識 生理回数は昔の約9倍

女性のライフステージと関わるフェムテック。日本で注目され始めたのは2020年ごろだと、後藤さんは話します。

「日本のジェンダーギャップ指数の低さや生理の貧困が話題になったことが、フェムテックの普及につながりました。コロナ禍による医療受診控えやステイホームにより広がったのがオンラインサービス。自宅でのセルフケアを取り入れる人も増えました。月経カップや吸水ショーツを試しやすかったのも一因です」

現代の女性ならではの課題もあるとのこと。

「現代の女性が一生涯に経験する生理は約450回で、これは100年前の約9倍。昔は出産回数が多く、生理がお休みする期間が長かったんです。また、人生100年時代に突入し、閉経は第二の人生の始まりでもあります。

女性の社会進出が進む中、生理や妊娠だけでなく更年期を理由にキャリアを諦める人も。社会的な問題の解決策として、企業や自治体がフェムテックを推進する動きが出てきています」

まずは自分の体を知り、お互いを認め合える関係へ

便利なアイテムやサービスがあるものの、フェムテックになじみがなく、使うのに抵抗を感じるという人もいます。

「まずは自分の体をよく知った上で、合うものを選ぶのが一番です。例えば、経血量が分かっていない人は意外といるのではないでしょうか。ナプキンなど普段の生理用品を見直すことから始めてみても。フェムテックは自分自身の体と心に向き合うきっかけになりそうです。初潮・生理・更年期など、親子で体のことを学んでみるのもいいですね」

フェムテックは、女性だけに関わるものではないと後藤さん。

「父子家庭へのアプローチや生理の貧困は社会全体の課題。子どもの頃から男性が女性の体について知る機会をつくることが大切ですし、その逆もそうです。最近は男性の更年期についても知られてきていますよね。

フェムテックの広がりは多様性を認め合う第一歩。女性同士でも一人一人違うように、お互いの理解を深め、よりよい関係を築いていく糸口になればと思います」

教えてくれたのは

SUSTAINABLEME
代表取締役・作業療法士 後藤友美さん

生理・妊娠・出産・更年期など女性特有の体の悩みをサポートするヘルスケア事業を提供。2021年に京都女性起業家賞 京都銀行賞・京都リビング新聞社賞受賞

京都の企業発
フェムテック製品・サービス

京都にも、さまざまなフェムテックの製品・サービスを手掛ける企業が。
その特徴や、開発にまつわる思いなどを聞きました。

肌触りのいいコットン素材の吸水ショーツ

「オーガニックコットン 吸水ショーツ」(4620円)。クロッチ部分はナプキンの羽がしまえる仕様に

自然派ナプキン、吸水ショーツ、デリケートケア用コスメといった、多様な商品を展開する「ナチュラムーン」。「株式会社G-Place(ジープレイス)」(長岡京市)が手掛けるライフスタイルブランドです。約10年前、自然派ナプキンの先駆けとしてスタート。さまざまな漏れに対応する吸水ショーツにも、オーガニックコットンが使われているといいます。

「特徴は肌触りの良さですね。クロッチ部分にもオーガニック生地を使用。ストレッチ素材で体の締め付けを軽減、深ばきタイプで体が冷えにくい点も人気です」と広報担当。約55cc(目安)の水分を吸収。ナプキンとの併用もOKです。「娘にも薦めて親子でユーザーに、という方も。これからも女性の毎日を快適にする製品を提案していきます」。「ナチュラムーン」の商品はオンラインショップなどで販売。

生理や妊活の悩みに向けたスマートフォンアプリ

アプリ「flora」のイメージ画像。使いたくなるようなデザインにもこだわったそうです

生理日や排卵日をスマートフォンのアプリが予測。カレンダーで体調や気分、月経周期、体温を確認・管理できるのが、月経・妊活アプリ「flora(フローラ)」(ダウンロード無料)です。

「生理痛・妊活・メンタルヘルスなどに関連するコラム記事も掲載。妊活の悩みを一人で抱える女性の力になれたらと、ユーザー同士でコミュニケーションがとれるチャットの機能も導入しています」と、「Flora株式会社」(左京区)の髙田さん。

同社のビジョンは「バイアス・偏見・タブーから女性の心身を解放し、個人をエンパワーする」こと。「今は女性が抱える心身の悩みを解決する技術があります。自分の体を知って健康になり、好きなこと・やりたいことをする。その応援を『flora』ができればと思っています」

おしゃれを楽しむ乳がん下着

ノンワイヤータイプの「総レースブラジャー」(各6930円)。伸縮性が高く軽い着け心地が特徴です

「乳がんを経験しても、変わらずおしゃれを楽しめるように」。そんな思いを大切にしている、「アボワールインターナショナル株式会社」(下京区)の乳がん下着。前開きタイプ、ノンワイヤータイプなど、術後の状態に合わせて選べます。カラーバリエーションは幅広く、総レースや柄物などデザインも豊富。

「乳がんを経験したとき、手術後に着けるブラジャーの選択肢の少なさに驚きました」と、同社代表取締役の中村真由美さん。「同じ乳がん経験者のためにも、気持ちが上がるようなすてきな下着を作ろうと商品を開発。一人一人に合わせてパッドが入れられます。健康な方にとっても楽な着け心地ですよ」。購入者からはお礼の手紙が届いたことも。今後も商品を増やしていけたら、と話していました。商品は同店ショールームやオンラインショップで販売。

(2022年11月19日号より)