京都の書店員やカフェ店主がおすすめの本を紹介。
すてきな一冊に出あえそう!
作者たちの横顔に気づく3編の随筆を収めた一冊
公園でどんぐりを拾う幼い娘のふとした表情に、亡くした妻の面影を重ねて見てしまう。そんなささいな一瞬からこんなにもさまざまな人間模様を描けるのかと驚いた。
寺田寅彦という名前は知っていた。寅彦の故郷でもある高知に住んでいたこともあり、わりと身近な人と思っていた。この本を読むまでは。
3編の短いエッセーからなり、小一時間あれば読み切れる気楽さが心地いい。だが、読後には寅彦の知らなかった横顔に気づく。
寺田寅彦の妻への思いとそれを記した美しい文章、中谷宇吉郎の師へのまなざし、そして本書の選者・山本善行さんの本と向き合う姿勢。小さな一冊に途方もない熱量がこもっている。
■本の紹介者
開風社 待賢ブックセンター
鳥居貴彦さん
http://kaifusha-books.com/taiken/
(2021年9月25日号中央・西南版より)
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