【コレ読んで!】蚕 絹糸を吐く虫と日本人

2020年10月30日 

リビング編集部

京都の書店員やカフェ店主がおすすめの本を紹介。
すてきな一冊に出あえそう!

蚕 絹糸を吐く虫と日本人
畑中章宏 晶文社(1980円)

日本の文化と深く関わる〝蚕〟が生み出したもの

ダルマの目入れやお正月に飾られる紅白の繭玉の風習、「くわばらくわばら」という言葉も由来は「蚕」にあるかもしれないという。

かつて世界一の生糸輸出国だった日本の文化と深く関わる養蚕について、さまざまな文献や取材により民俗学的角度からアプローチした本書。
「まるで大きな波の音のよう」と描写される、蚕が一斉に桑の葉を食(は)む音。幼い頃に恐る恐る見ていた近所の家の蚕棚の凛(りん)とした記憶がよみがえる。

小さな蚕から大きく広がる産業や生活を知ることで、見慣れた景観、信仰、文化も、複数の要因が絡み合い築かれ、受け継がれてきたことが分かる。
街を眺めるときの視点が開かれるような一冊。

■本の紹介者
マヤルカ古書店
なかむらあきこさん

http://mayaruka.com/

(2020年10月31日号より)