五感を使って見学する「京都薬用植物園」

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大好チヨ子プロフィール
2024年3月27日 

子供の頃、将来の夢は植物学者になることでした。夢で終わりましたが、大学の卒論も植物がテーマ。
ですから、以前仲間とハイキング帰りに「武田薬品工業株式会社 京都薬用植物園」を見つけ、門の向こうに広がる植物の世界がずっと気になっていたのでした。

地下鉄「国際会館」駅からタクシーで約15分 曼殊院の近くです

予約で参加できる特別見学会

偶然、一般向けの見学会があるのをホームページで知りさっそく予約。希望者多数の場合は抽選ですが……やった!見学の通知が来ました!
見学が決まると、最寄駅からのルートやタクシーを使用する場合のおおよその料金など、詳細を連絡してくださりとても参考になりました。

見学会当日、最初に大きな部屋で説明をお聞きしている時から既に、ローズマリーのようなハーブの香りがほのかに漂って来ました。薬草園ならではと期待が高まります。
見る・聞く・嗅ぐ・触れる・味わう見学だとお聞きし、「植物を見て解説を聞き、触れて香りを嗅ぐまでは分かるけれど、味わうって何?」と、そこがすごく気になったのでした。(食いしん坊なので…)

薬用植物園ならではの分類がユニーク

「京都薬用植物園」は1933年に開園して以来、薬用植物の栽培研究、保全などが行われてきた施設で、9.4ha(東京ドーム約2個分)の敷地に、おそよ2900種の植物(内:絶滅危惧種242種)があるそうで、今回は「中央標本園」「漢方処方園」「香辛料園」「民間薬園」を見学させていただきました。

植物の分類にも「薬用植物園」ならではの面白さがあり、例えば「漢方処方園」では、原材料となる植物がまとめてあるので、「葛根湯は知っている植物がたくさん入っていたんだ」と、よく見かける植物から薬が作られていることが実感できました。

「葛根湯」の成分となる植物が集結(クズ・シャクヤク・ショウガ・マオウ・ナツメ・シナモン・カンゾウ)

生薬によく使われている植物のランキングも、花壇に並び一目瞭然。1位はカンゾウで、2位はショウガ。料理にもよく使われるショウガは様々な効能があるんですね。3位のシャクヤクや18位のキキョウなどは、花を観賞するイメージが強かったので、薬用としてもよく使われているのは意外でした。

意外や意外、嗅いでみると仲間です

見学前の説明通り、時々、植物の葉をちぎって香りを嗅ぐ体験も。面白かったのは「レモンの香りのする植物」。レモンミントやレモングラスはよく見かけますが、ゼラニウムのような植物もしっかりレモンの香りでしたよ。植物の分類だと異なる仲間なのに、香りは似てるだなんて面白いなぁ。

このコーナーの植物は、すべてレモンのような香りがしました

ミントのコーナーでは、数種類の異なるミントの香りを嗅ぎ比べ違いを感じたり…

香りが良くないため「クソニンジン」という不名誉な名前を付けられた植物も、「勇気のある方は嗅いでみてください」と促され嗅いでみましたが、それほどの異臭は感じませんでしたよ。

「クソニンジン」は、マラリア治療に効果的な薬となり研究者がノーベル賞を授与された

甘い!苦い!…美味し~い!

見学が進んでゆくと、「これはどんな味がするでしょうか?」と示されたのはアマハステビア。飲料の成分表によく「ステビア」と書かれているので知っていましたが、こんなかわいらしい植物の天然甘味料だったのですね。かじってみると本当に甘~い! 後口に残らない心地よい甘さでした。

一方、延命草とも呼ばれるヒキオコシは、なんとも苦い!ほかにもキハダなど苦い植物もたくさん味わいました。「良薬口に苦し」とはよく言ったものです。

ヒキオコシは胃腸薬の原料 

見学の道中でニッケイ(シナモン)の葉を一枚いただき葉柄をかじったのですが、甘みのあるシナモン味の葉柄は本当に美味しくて、シナモン好きの私は、庭に植えたいと本気で思いました。

本当に五感をすべて使った見学会でした

植物に触れる機会もありました。例えばゴボウの花。この強靭なとげとげも触れると硬いのですが、先端は痛くないのです。くっつき虫のようなこの構造は、マジックテープに応用されたとお聞きすると、なるほどあの感触でした。植物は様々な面で生活に役立っているのですね。

2年育てたゴボウは高さ2mくらいまで育っていました

楽しかった特別見学会

見学会は回により公開される場所が変わるそうで、今回見られなかった温室などが見学できる機会もあるとお聞きしました。薬用植物園の周囲は自然の宝庫ですから、季節ごとの見どころもありそうです。
今回は、研修棟で植物学者:牧野富太郎さんの展示もあり、なんと、牧野富太郎さんご自身が作られた押し花の標本も拝見できました。109年も前の標本なのに、こんなにきれいな状態で残っているなんて!

T.Makinoとあるのが読み取れました


驚きと感動と楽しさいっぱいの特別見学会を終え、興奮冷めやらぬ間に帰宅した私は、まだ見ぬ植物の世界を、もっともっと覗いてみたいと思うようになったのでした。

武田薬品工業 京都薬用植物園

京都市左京区一乗寺竹ノ内町11番地
TEL:075(781)6111
https://www.takeda.co.jp/kyoto/
開催日時等はHPから確認を

プロフィール

大好チヨ子

在住エリア:京都市西京区
メインテーマ:博物館などのアートイベント/パン屋さん
子育てを終えて、ようやく京都歩きを楽しめるようになりました。知識がない私でも「楽しい!美味しい!美しい!面白い!」と感じたり「知っていたらお得」な情報をゆる~く伝えてゆきたいです。趣味はドラム演奏と、博物館ボランティア。