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左京区北白川の閑静な住宅街の中にある「駒井家住宅」は、昭和初期にヴォーリズ建築事務所の設計で建てられた住宅です。京都にいくつかある「ヴォーリズ建築」の一つで、1998年に京都市の指定有形文化財に指定され、2002年から公益財団法人日本ナショナルトラストが所有管理し公開している建物です。

ヴォーリズ建築が好きなので、一般公開期間に予約をして伺いました。
※現在は夏季休館中、次回は秋に公開予定

ヴォーリズ建築とは

明治期に英語教師として来日したウィリアム・メリル・ヴォーリズは、教会、学校、住宅など多くの西洋建築を設計した建築家として知られています。ヴォーリズの主な活動拠点は滋賀県近江八幡市でしたが、滋賀のお隣である京都にも、ヴォーリズ建築が複数残されています。例えば、最古のエレベーターがあることで有名な京都四条の「東華菜館」も、実はヴォーリズの設計だそう。

私が感じるヴォーリズ建築の良いところは、「居心地が良さそう」「暖かみがある建物」と思えるところ。ヴォーリズの言葉に「建物の風格は人間の人格と同じく、その外観よりもむしろ内容にあります」というものがあるのですが、その言葉通り、装飾的な美しさというよりも使う人の側に立った気づかいや優しさが感じられる、機能美にあふれる建物になっているところがとても好きです。

駒井家住宅

駒井家住宅は1927年（昭和2年）に建築されました。遺伝学者であった駒井卓博士と静江夫人の新居として建てられました。当時、アメリカで流行していたスパニッシュ様式をベースにしつつ、屋根に和瓦を使うなど、周囲の環境に調和するように配慮されています。また、内装も住みやすい工夫が色々と施されています。

居間には、大きな出窓とその下に作りつけのソファーがあり、そのソファーの足元は収納になっています。自然光と風が通るので、ここで座って本を読んだら気持ち良いだろうなあと思いました。

居間の続きにあるサンルームは、スパニッシュ様式らしい三連アーチの窓が素敵。太陽光がたっぷり入って、明るく華やかな印象です。三連アーチの真ん中はドアになっていて、サンルームから直接庭にでることができます。ドアは二重になっていて、外側のガラスドアを開けても手前の網戸のドアを閉めておけば風は通るけど虫は入らないようになっていて「日常生活の場所」として、住みやすいよう配慮されているなと思いました。こういう家に住んでみたい……！

愛されて受け継がれる建物

駒井家住宅のすごいところは、室内のインテリアの多くが当時のまま残っていることです。建物は残っていても、家具等は当時のものが残っていないことはよくありますが、書斎やリビングの本棚・机など、昭和初期のものが今も大事に保存されています。建物だけでなく家具や本なども含めて大事に守られて令和の時代まで受け継がれてきているんだなと感心しました。

また、駒井家住宅は日本ナショナルトラストの管理となってから、公開等の運営はボランティアさんに支えられています。私がうかがった日も、受付等はボランティアさんがしてくださっていました。ボランティアさんの年齢や性別は様々らしいのですが、皆さん駒井家住宅が、ヴォーリズ建築がお好きで活動されているようで、建物の説明にも愛があって「好き！」という気持ちが伝わってきました。他にも、修繕費のためのチャリティーイベントをしたり、写真好きのボランティアさんが駒井家の紹介冊子を制作したりとそれぞれの得意分野でボランティアさんたちが活躍しています。

駒井博士夫妻からそのご家族、そしてボランティアさんへと、色んな人の「愛」で守られて受け継がれている駒井家住宅。それだけ、この建物には人をひきつける魅力があるんだと思います。私自身、ヴォーリズ建築好きの１人ですし、自分が好きなものを同じように好きで大事にしてくださっているボランティアの方々が多く居るんだと知って、少し嬉しくなりました。

なお、見学には事前予約と維持修復協力金として500円必要です（日本ナショナルトラストの会員になると無料）。空調設備が無い関係で暑い時期と寒い時期は休館するので、見学の際は事前に公式HPやSNSで開館状況を確認してくださいね。