今シーズンは大雪に見舞われた地域も。その一方で、京都のように雪が降ってもその後は寒さが和らいだ場所もあります。京都の冬のこれからについて、考えてみませんか。
※記事の内容は1月14日現在のもの
100年間に2℃の割合で冬の気温が上昇中
暖かくなってきているといっても、やはり「寒い!」と声が出てしまう冬。実際、気温はどのくらい上がっているのでしょうか。
京都地方気象台によると、京都市の冬の平均気温は100年間あたり2.0℃の割合で上昇。特に、記録的な暖冬だった2019年12月〜20年2月の平均気温は7・6℃。観測史上、最も高い結果となりました。
最低気温が0℃を下回る「冬日」にも注目。100年前(1920年)、京都市の冬日は69日間でしたが、2020年はというと…、わずか2日間!50年前でも53日間あった冬日が大きく減っていることが分かります。
「地球温暖化の影響で京都の気温も上昇。このまま何の政策もとられない場合、21世紀末には冬日がなくなると予想されます」と、京都地方気象台の職員。将来の気温はどうなっていくのか、気をつけておきたいですね。
雪が降った日数を比べると…
気温と関係してくるのが雪。京都市では、2020寒候年(※)の初雪は平年より47日遅い1月31日。2021寒候年は6日遅い12月15日でした。
雪が降った日数は、30年前の10年間(1980年〜89年)は328日。それに比べ2010年以降の10年間は281日と、47日減少。1カ月分以上少なくなっています。
凛(りん)とした雰囲気が伝わってくる、雪化粧した京町家や、寺院の庭園—。風情ある京都の雪景色も、将来はなかなか見られなくなるかもしれません。
※前年8月から当年7月までの1年間
糺の森や桂離宮の庭園に育つ植物の種類にも変化が
植物の生育にも、気温上昇が大きく関わってきます。「宝が池公園のカラコギカエデや醍醐山のアサダなど、北方系の樹木は今でもわずかにありますが、子孫が残せていません」と、京都大学名誉教授の森本幸裕さん。
「一方、以前の京都では育ちにくかったのが、クスノキなどの常緑樹。ですが、例えば現在、糺の森には立派なクスノキの巨木が育っています。京都の冬は暖かくなり、常緑樹が育つ環境に変わってきているのです」
こうした変化は文化面にも影響。寺社などの庭園に欠かせない植物に〝コケ〟があります。
「盆地で冷気がたまりやすい京都は朝露が発生しやすく、コケに適した土地でした」
しかし、温暖化の影響で朝露が降りにくくなり、特に定番のウマスギゴケに適した環境ではなくなってきたそう。桂離宮も、コケが減少した庭園のその一つです。
「桂離宮では専門家を招き、乾燥や日照条件に応じて適切なコケに変えるなどして、再び美しい庭園となっています。温暖化は速いスピードで進行中。どうすれば森林や庭園の素晴らしさを継承していけるのかを考えていくことが大切ですね」
冬の気温次第で価格の変動や売り上げ減も
冬の気温上昇と家計や経済の関係を教えてくれたのは、京都総合経済研究所の楢舘孝寿さん。
「暖かいと売り上げが落ちるのは冬物衣料やエネルギー、薬、暖房器具などが挙げられます」(楢舘さん)
一方、ビールなどの冷たい飲料の売り上げは、気温上昇がプラスに作用します。
「天候に左右されやすく短期間で大きく変動するのが野菜の価格。日本銀行の物価安定の目標指標から生鮮食品は除かれていますが、家計にとっては重要ですよね」
参考になるのが、農林水産省のホームページで毎月発表される野菜の生育状況と価格の見通し。
「生育が良くたくさん収穫できると、価格は下落。そうした安価な野菜を買うようにすると、商品が余らず販売者の収入も確保されます。品薄な野菜の価格高騰も防げるので、市場の価格安定につながります」
気温上昇による経済への影響をカバーするには、国や企業の努力、消費者の行動が重要になる、とのことでした。
スキー場を悩ます雪不足
冬のレジャーといえばスキー。京都市内唯一のスキー場が、左京区にある「京都広河原スキー場」です。
「開業したのは約30年前。当初の営業日数は75日〜90日程度でした」と同スキー場のスタッフ。12月下旬には雪が降って営業がスタートできる年が多かったといいます。ところが、10年ほど前から降雪量が少なくなり、営業開始は1月以降にずれ込むように。営業日数は平均50日程度に減ったそう。「特に暖冬だった2019年〜20年、営業できたのはわずか9日間でした。楽しみにしてくださっている方も多いので、十分に営業できるくらいの雪が毎年降ればと願っています」
温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指して
温暖化対策のために政府が掲げた、2050年までの温室効果ガス排出量実質ゼロという目標に向け、京都府と京都市ではさまざまな取り組みが行われています。
二酸化炭素削減のため地産地消を
温室効果ガス排出量の実質ゼロを実現するには、社会や地域が大きく変わる必要が。京都府や京都府地球温暖化防止活動推進センターでは「無駄なエネルギーを減らす省エネ」と「再生可能エネルギー利用」の両方を進めるための取り組みや情報発信を実施。例えば地産地消。地元の旬の食べ物を選ぶと、輸送エネルギー(温室効果ガス)削減だけでなく、地域経済の貢献にもつながります。
再生可能エネルギー由来の電気を家庭に
再生可能エネルギー比率が高い電気を家庭に取り入れてもらおうと、京都市では太陽光発電設備と再生可能エネルギー電力のグループ購入事業を実施。「みんなのおうちに太陽光」と「EE電」、二つのキャンペーンでそれぞれお得に購入できます。現在は参加者募集期間外ですが、キャンペーンは今後も継続。仮登録をすれば、次回実施時に連絡してくれますよ。
将来の京都の冬に向けて私たちができること
冬の気温上昇を少しでも緩やかにするため、日常でできることを心掛けてみませんか。
- 省エネ性能の高い家電を選んだり、LED照明を取り入れる
- 屋内では暖かい服装で過ごし、過度な暖房の使用を控える(※)
- 地元で作られた旬の食べ物を買うようにする
- 宅配便をなるべく1回で受け取るようにする
- 再生エネルギーの割合が高い電気メニューに切り換える
※環境省では暖房時の室温は20℃を目安としています
(2021年1月23日号より)
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