近年、自治会や町内会は、加入世帯数の減少などが課題といわれています。そんな中、さまざまな工夫をして活動している会を取材しました。各市町の問い合わせ窓口も紹介しています。
撮影/橋本正樹(八条が丘自治会)
まちの美化や安全を保つため地域の人が活動
自治会や町内会は、地域住民による自治組織。地域ごとに呼び名が異なるだけで、自治会と町内会に違いはありません。
清掃活動や防犯・防災活動、親睦を深めるための行事など取り組みはさまざま。加入は任意で、多くの場合、輪番制などで決められた役員が主体となって、会員から集めた会費で活動を行います。
「快適に暮らせるように、自分たちで自分たちのまちを良くしようと自主的に動かれているのが自治会・町内会。各地域の特色を生かして活動されています」と教えてくれたのは、京都市文化市民局地域自治推進室の担当者。
地域活動を通して日頃から顔見知りになっていることが、災害発生時や防犯などに役立つことも。「日常生活でも互いに声を掛け合える関係が築ければ、防犯面でも心強いまちになります。ごみ収集場所の掃除なども行われていて、まちの美化や安全が保たれているのは、そういった会で地域に関わる人がいるからと知っていただきたいです」と。
「京都市内には6000以上の自治会・町内会があると推測しています。成り立ちや加入世帯数、活動内容も異なるため悩みもいろいろ。京都市では、それらの事例をもとに冊子『困ったときのヒント集』を作成し、市役所や区役所で配架しています」
綿屋町町内会(京都市中京区)
近隣のマンション住民と地蔵盆を復活させました
京都市中京区初音(はつね)学区にある「綿屋(わたや)町町内会」の地蔵盆。「綿屋町は戦時中の道路拡張で人口が半減、今はビルが並び個人世帯は4軒だけ。私が一度京都を離れて戻ると、地蔵盆はお地蔵さんを預けているお寺に役員がお参りするだけになっていて」と会長の村上昭男さんは話します。
自身が経験した〝楽しい地蔵盆〟を今の子どもたちにも体験させたいと、約10年前に相談したのが冨名腰隆さん。他町内のマンションに住む、自治連合会(※)の役員でした。「マンション独自で他のお寺からお地蔵さんを借りて地蔵盆をしていましたが、役員交代で途切れてしまって。『子どもたちが文化に触れられて、住民の交流もできる』と考え、町内会とマンション住民共同で地蔵盆を行うことになりました。管理組合の『伝統行事費』として町内会に協力金とお供えをお渡ししています」(冨名腰さん)
※(京都市の場合)学区と呼ばれる地域自治の単位ごとに、自治会・町内会と地域の各種団体で構成される組織
当日はお地蔵さんの前で数珠回しをし、和尚さんの法話を聞きます。「お地蔵さんに手を合わせる経験を通して、周りの人への感謝の気持ちを身に付けてほしい」との村上さんの思いがあるそう。その後は紙芝居や輪投げなどのゲーム、流しそうめんなどを楽しみ、最後は1500個の水風船を、びしょぬれになりながら投げ合います。
「子どもたちに楽しさを経験してもらうため復活したので誰でも歓迎。違う町の子や住民の外孫、旅行中の外国人の方が参加したことも」と村上さん。冨名腰さんは「地蔵盆を始めたころ小学生だった子が高校生になり、今は小さい子の面倒を見てくれる。世代や年代を超えたつながりも地蔵盆の良さですね」。
八条が丘自治会(長岡京市)
会費制をやめ協力金制に。子どもたちが中心のサークルも
長岡京市の「八条が丘自治会」は昨年、地域で暮らす全ての人を〝会員と見なす〟改革を始めました。「ある住民の手紙がきっかけ」と会長の八木仁美さん。「高齢なので会員として役割を担うのは無理だけど、応援したいから協力金を出すと書かれていて。改めて自治会は地域全体のための組織、誰でも気軽に関われるようにしたいと考えました」。会費制をやめ、振り込みや持参で協力金を受け付けることにしたところ、過半数の世帯が協力してくれたそう。
また同会の役員・委員は〝できる人ができることを〟と立候補制に。事前に各活動内容を知らせて志望者を募るのだとか。住民が〝得意〟を生かした場づくりも積極的に実施。防災士の資格を持った人が講師となって「防災講座」も開きます。
自治会内には、地域の子どもたちが中心となり多世代交流を目指すサークル「ふれまち八条が丘」も。月1回おしゃべりを楽しむ「つきいちサロン」を主催します。「住民がしたい活動を自治会が後押しすることで、地域がより居心地よくなって活性化すれば」。今後は市や他の自治会との連携も模索し、改革の知恵を生かしたいと意欲的です。
サウスヒルズ町内会(宇治市)
防災イベントでつながりを強化。企画を担うグループも結成しました
〝防災〟を軸に地域のつながり強化を図るのが、宇治市の「サウスヒルズ町内会」。「仕事や子育てをしている世代が多く、子どもの成長に伴い住民同士の交流は減っていました」と「まち活グループ」の浅田純子さん。
「私が副会長になった2021年度、宇治市の『地域コミュニティ活性化事業補助金(3年間)』を活用し、防災活動を町内会で重点的に行うことに。ですが、一年任期の役員が一新されると定着しない。そこで任期なく活動する『まち活グループ』を町内会内に立ち上げました。3年間でウオーターキャリーや自主防災マニュアルの配付、防災イベントを実施。災害時は公助だけでは足りない部分もあると知り、自助・共助が大事だと。そのため日頃からコミュニケーションをとり、〝顔見知り運動〟としてイベントを続けていきたいです」
「まち活グループ」は現在4人で、こうしたイベントのほか、同会のホームページやSNSの管理も手掛けます。
「労力はかかりますが、地域のことは自分たちで考えることが大切ですし、必要なこと。特別なことをしているつもりはなく、〝言い出しっぺ〟になることで前進できたら」
鏡石南部町内会(京都市北区)
町内のホテルと祭りを企画。運営は住民の声を反映して
「鏡石(かがみいし)南部町内会」は京都市北区にあり、近年町内にリゾートホテルが開業。建設前からホテル側へ住民の要望を伝えてきたのは、会長の西基雄さん。地域とホテルの間を取り持つうち、「懇談の中で『町内に祭りがあったらな』と話すと、『一緒に企画しましょう』と協力を申し出てくれた」といいます。
昨年5月、「鏡石フェスタ」という名前で初開催。縁日コーナー、ホテルの味が楽しめるキッチンカーの出店、宿泊券などが当たるビンゴ大会と盛りだくさんで「ホテルのスタッフや町内の若い世代も進んで協力してくれました。当日は200人ほどが来場。住民の方に喜んでもらえてよかった」と西さん。
他の町内活動でも新たな試みを行っています。「冬の夜回りで『火の用心』の声が聞こえにくいと意見があったんですね。そこで『拡声器を使おう』『大人の声じゃ面白くない』と、子ども会に協力してもらい児童の声を録音して流しました。これが評判よく、家から出て『ご苦労さま』と声をかけてくれる人も」
そんな反響が、夜回り役や同会を運営する人たちのやりがいにもつながっているようです。
加入するにはどうすれば良い?
町内会・自治会に未加入の人が加入したいときどうすれば良いのでしょうか。「自治会長などに連絡するのがスムーズですが、連絡先が不明な場合、分かる範囲でお調べしますので(京都市では)地域コミュニティサポートセンターにお問い合わせください。地域の行事や活動にまず顔を出してみるのも良いですね」(京都市文化市民局地域自治推進室)
各市町の窓口については下記参照。
各市町の問い合わせ先
- 京都市
文化市民局地域自治推進室 地域コミュニティサポートセンター TEL:075(222)3098 - 大山崎町
企画財政課 企画観光係 TEL:075(956)2101(代表) - 長岡京市
自治・共助振興室 地域協働係 TEL:075(955)9684 - 向日市
総務部 総務課 TEL:075(874)1483 - 宇治市
市民協働推進課 TEL:0774(20)8721 - 城陽市
市民活動支援課 TEL:0774(56)4001 - 久御山町
総務部企画財政課 TEL:075(631)9992
(2024年6月29日号より)
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