成人式の歴史と京都でのこれから

2023年1月6日 

リビング編集部

1月9日(祝・月)は成人の日。振り袖を着た思い出がある人もいるのでは。成人式の歴史をひもときながら、そこに込められた思いを華頂短期大学の准教授・伊藤茂樹さんに聞きました。

古くから行われていた「元服」の儀式がルーツ

「成人式は、もともと宮中や武家社会における『元服』という儀式がルーツ。その起源は古く、聖武天皇が皇太子で14歳のとき(714年6月)に元服した記録がみられます。形式は古代中国の儒教の儀式を骨格としたといわれています」と伊藤さん。

「元服の対象となるのはおおむね11歳から15歳の男子で、この儀式を境に幼名から実名に。大人になった〝しるし〟として髪形や服装なども変わり、一人前の大人として扱われます」

現代と同じように、子どもから大人への通過儀礼だったんですね。

「当時は各家ごとに日取りを決め、家族内で行われていました。儀式を通して、これからは内面も大人として、自立心や責任感を持つよう伝えていたのでしょう。

また、元服には子どもの成長を喜び、将来の無事を願う意味もあったと考えられます。このような意義が共感を呼び、徐々に庶民へと浸透していったと思われます」

現代に引き継がれる成人式の意義と重要性

1948年には「成人の日」が制定。現在の市区町村が主催する形の成人式が始まります。

「振り袖などの特別な衣装を身につけ、同級生とともに地域の人に見守られながら、新たな一歩を踏み出す。形式は変わっても、子どもから大人への〝けじめ〟を外見で表現したり、多くの人の調和の中で自分が生きていると知らしめる点は、かつての元服と通じるものがあります」

自治体だけではなく、寺社でも行事が実施されています。

「例えば知恩院では、成人の日の前後に『成人祝賀会』が執り行われ、新成人に三帰三竟(きょう)が授けられます。三帰三竟とは仏教徒になることを確認する儀式。仏教で大事な三つの宝に帰依することを誓うのです。仏教徒として、他者にも責任を持ち、互いの尊厳を大切にする心構えを持った大人になってほしいとの思いが込められています。

儀式には、それをきっかけに自分自身を変化させる力があります。大人への節目となる成人式は、これからも重要な人生儀礼として受け継がれていくと思います」

教えてくれたのは

華頂短期大学
総合文化学科 准教授
伊藤茂樹さん

担当教科は「人間と仏教」「日本の歳時と年中行事」など

(2023年新春号より)