
近頃、デザインの凝った〝仕事服〟を見かけることがあります。そこで、身近な企業や団体の今の制服を調査。そこに込められた思いや、便利ポイントを聞きました。
撮影/武甕育子、橋本正樹ほか
昨年、〝マタニティ制服〟を導入 鑑識用は通気性の良い素材に
京都府警察本部
昨年11月から京都府警察本部で導入されたのが、妊娠中の女性の体形変化に対応する〝マタニティ制服〟です。近畿で初めての導入となったとか。「警察官の制服は全国共通ですが、〝マタニティ制服〟は装備品という扱いに。装備品については都道府県ごとで、有無を含めて仕様が異なります」とは、京都府警察本部総務部装備課の木村さん。
「妊娠中の職員は、街頭活動を控えて安全教室や広報業務を担うことが多いです。その際、従来は私服でした。『制服を着て警察官として認識してもらいたい』という職員からの声を受け、取り入れることになりました」


また、昨年10月、28年ぶりに鑑識活動の際に警察官が身に付ける活動服もリニューアル。通気性の良いメッシュ素材が採用されたそう。
「猛暑が続く近年、屋外での活動中に体調不良を訴える人が増えたため、活動服を見直すことに」とは、同刑事部鑑識課の鈴木さん。伸縮性もアップし、足や腕の可動域が広がったとか。女性用のサイズも新たに加わりました。
「細やかな作業が求められる鑑識課を志望する女性職員も多いです。新しい活動服を着用することで、より能力を発揮してもらいたいと思います」(鈴木さん)

避難所などで目立つ色彩に 災害時のほか、普段使いにも対応
京都市役所


京都市の職員が、災害対応時に着用することになっている防災服(※)。
「コロナ禍では災害が起きた場合、避難所などで感染防止対策をするためには、多くの職員の派遣が必要でした。住民の方に『この人が職員だ』とひと目で分かってもらうため、というのがデザインを刷新した大きな要因です」と、京都市行財政局防災危機管理室の太田さんは話します。2020年、23年ぶりに現在の防災服にリニューアルしたのだそう。
地球温暖化の影響で、近年、自然災害は増加傾向に。各地へ応援に行くことも少なくないそう。「現地では各自治体の職員が一緒に活動しているのですが、自治体同士で防災服の見分けが付かないことがあり、不便だったこともきっかけの一つでした」
また、従来の防災服はオーダーメードでしたが、既製品に変更することでコストをカット。上着は普段使いができるよう、スーツの上に羽織れる仕様に変更されました。
「色はサンプルを比較した中で一番目立つと感じた黄色に。ロゴも分かりやすいよう、『京都市』と大きく漢字で入れました。能登の復興支援の際にも着用していましたが、よく目立っていたように思います」
伸縮性、速乾性の高い素材を取り入れているので、現場からも「動きやすい」という声が挙がっているのだとか。
防災服ですが、日ごろから着用することもあるそう。「市民の方に目にしてもらえる機会が増えることで、この防災服の認知が広まり、災害時に役立てば、と思います」
※避難所での現場対応など、災害発生時の初動対応に従事する職員を中心に貸与
部署を超えてイメージを統一 スタッフの一体感がアップしました
京都生活協同組合


「京都生活協同組合」のスーパー「コープ」の店舗スタッフの制服は、オレンジ、イエロー、ブルーの3色が印象的。2023年2月に刷新されたのだそう。
スタッフに感想を聞いてみると、「デザインがかっこいい。組合員さんから服装が明るくなったねと言ってもらいました」との声が。
「以前は、宅配、店舗でそれぞれ異なる制服を着用していたので、同じ『京都生協』と認識されにくいものでした。そこで、リブランディングとしてブランドロゴのデザインを変更した際に、制服や名札のデザインなども変更。制服は〝新たな希望をつくる〟というビジョンをもとに、ロゴを生かし、職員の気持ちが一つになるようにと、デザインイメージを合わせてリニューアル。機能性アップを優先しながら、ロゴにある『3つの輪』の要素を取り入れたポップな制服になっています」とは、人事教育部の鈴木さん。「担当は違っても統一感のある制服を着ていると、皆で作業を頑張ろうという気持ちになる」というスタッフも。
「職員に満足感を持ってもらえたり、『生協』で働きたい、と思う若い方が増えたりすればうれしいですね」
看板商品の刷新とあわせてジェンダーフリーのデザインを採用
鼓月

「千寿せんべい」で知られる「鼓月(こげつ)」は、2022年、看板商品となる新商品「プレミアム千寿せんべい」の発売を機に、コーポレートカラーを一新。あわせて制服もリニューアルしました。
「元々、当社では男女別の制服を着用していましたが、今の時代に沿った、男女で線引きをしない制服をと、ジェンダーフリーのものを導入することに」と話すのは、同社広報の鳥飼さん。
新たな制服は、上半身がベストのようになっているワンピースタイプ。白いシャツの上に着用します。「初心を忘れない」をテーマに、創業時のコーポレートカラーであるブルーグレーを基調とした色合いです。
「袖がないベスト型にすることで、腕の曲げ伸ばし時の引き連れや圧迫感が軽減。動きやすさはもちろんのこと、着用時の袖通しもスムーズになり、着用時間の軽減にもつながります」
同社は、今年で創業80周年。「京都の老舗は100年からといわれているので、当社はまだまだ。伝統に縛られない社風であることを、制服からアピールしていけたら」
おしゃれな作業着が登場
デザインの種類も増加
企業用の制服の最近の傾向について、制服を販売する「中村被服工業」(京都市下京区)の中林さんに話を聞きました。
「近年、職種を問わずストレッチ生地や、吸汗・速乾に優れた素材を使った制服が増えています。社員のモチベーションの向上や人材確保のため、おしゃれに着こなせるデザインに刷新している企業も多いですね」
例えば、作業着はデニム調など、普段着にしても違和感のないデザインで、そのまま出勤・帰宅できるものが人気に。病院で着る白衣は、色や花柄などのあしらいが入ったものが主流になってきているそう。
「事務職や接客業の女性が着用するスカートの形も以前はワンパターンでしたが、今はフレアであったりタイトであったり、ロング丈であったりと多様です。これは、結婚や出産を経ても仕事を続ける女性が増えたことが関係していると思います。職場にいる女性の年齢層が広がり、求められるデザインが増えたと考えられます。性の多様性を重視し、女性がパンツスタイルを選択できる企業も増加していますよ。
色については、「今はシックで落ち着いた色が多い」といいます。こちらは、ファッションのトレンドが制服にも反映されているよう。
環境への配慮も
「使用済みペットボトルで作られた再生紙を取り入れたり、古くなった制服を回収し、糸を裁断して再利用したりという環境に配慮した動きも広がっています」
中林さんが考える、制服の魅力とは─。
「制服を着ることで、生活にメリハリが生まれます。同僚同士、団結意識も芽生えるのでは。対外的にも会社のイメージアップにつながるものだと思います」
教えてくれたのは
中村被服工業
代表取締役社長
中林 申さん

(2025年3月29日号より)
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