今年、歌手活動60年目を迎えた加藤登紀子さん。11月から福岡、沖縄、京都と開催されてきた「ほろ酔いコンサート2024」のラストは、大阪・新歌舞伎座で。「思い出と感謝がいっぱいのステージ」だと言います。
文:あさかよしこ 撮影:武甕育子
「多くの体験や出会いに感謝し、何があっても面白く生きていきたい」
1971年から毎年開催されている、「ほろ酔いコンサート」。「今年は、これまでの大切な歌に光を当てながら、人生の玉手箱をひっくり返して楽しみたいとの思いで取り組んできました」と加藤さん。
東京大学在学中に歌手デビュー。学生運動に参加し、その時に出会った〝闘士〟との獄中結婚、出産、育児、そして夫の死…。
「人生は川の流れのようなもの」と振り返ります。その流れの中で、多くの楽曲を歌い、他の歌い手に詩や曲を提供してきました。
「戦後、満州からの引き揚げという壮絶な体験を乗り越えてきた母が、よく言っていたんです。『経験してきたことに、無駄なことは一つもない』と。私も、そう思って生きてきました」
加藤さんには、3人の子どもがいます。
「子どもが生まれる度に、仕事を続けようかどうしようかと迷ったけれど、私は歌をやめなかった。次のステップに踏み出すために、歌手を続けてきました。それが今の私の宝であり、血肉になっているわけですね」
深い思いを感じる話に、弾むような語り口調が印象的です。
「50代からは自分の声や健康について、しっかりと意識するようになりました」。健康で歌い続けるため、いろいろと勉強し、実践しているのだそう。
「でもね、歳を重ねて初めて分かる楽しみってあるんですよね。
〝生きていく、という仕事〟に定年はない。面白いことを目指しましょうよ!」
■ profile ■
1965年、第2回日本アマチュアシャンソンコンクールで優勝し、歌手デビュー。「百万本のバラ」「知床旅情」など多くの代表曲がある。10月、「『さ・か・さ』の学校」(時事通信出版局)を刊行
「ほろ酔いコンサート2024」
大阪公演は、12月29日(日)午後3時30分開演。大阪・新歌舞伎座で、全席指定7500円。来場者に振る舞い酒が用意されています。問い合わせは、新歌舞伎座テレホン予約センター=TEL:06-7730-2222=へ。受け付けは午前10時〜午後4時
(2024年12月7日号「大人タノシ」より)
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