「くしゃみをした瞬間にちょっと漏れる」「トイレに行く度に痛む」といった、尿に関するトラブル。寒くなるこれからの季節に、増える症状もあるそう。女性に多いといわれる尿トラブルのメカニズムを知り、対策を考えてみませんか。
イラスト/オカモトチアキ
「尿トラブルはデリケートな問題。尿漏れ経験のある人の85%が誰にも相談できていないというデータもあります」
そう教えてくれたのは、京都泌尿器科医会の藤原(ふじはら)敦子先生。
「尿トラブルの不安感や不快感によって、スポーツや活動を制限してしまう人も多いです。気軽に外出がしづらくなるなど、家族やパートナー、友人との関係に影響を及ぼしている人もいます」
心理的な負担も大きいのですね。
「尿トラブルに通じる病気の尿失禁や頻尿、膀胱(ぼうこう)炎は、直接命に関わることはありませんが、QOL(クオリティー・オブ・ライフ/生活の質)に大きく関わります。恥ずかしがらずに、医師に相談してもらった方が良いですね。
検査なども、痛みをともなうようなものではありません。治療法にも選択肢があるので、まずは話してもらうことが一番です」
症状によってその原因は異なります
女性に多いといわれる〝尿漏れ〟とは、どういった状況なのでしょうか。
「意に反して尿が漏れることを、医学的には尿失禁と呼びます。40代以上の女性の約30〜40%が経験しているといわれています」
つまり、〝よくあること〟なんですね。
「尿失禁は、主に『腹圧性尿失禁』と『切迫性尿失禁』の2タイプに分かれます。
腹圧性尿失禁は、咳やくしゃみをしたり、笑ったり重い物を持ち上げるなど、おなかに力を入れた瞬間に尿が漏れてしまう症状です。原因は、骨盤底筋と呼ばれる筋肉の緩み。この骨盤底筋は、排尿時に尿道を緩めることで尿を排出、通常時は締めることで尿漏れを防ぐ役割を担っているのです。出産などによって傷めつけられることが多いことから、腹圧性尿失禁は出産を経験した女性に多い症状。ほかに、肥満による腹部への圧や加齢にともなう筋力の衰え、更年期の女性ホルモンの変化なども原因とされています。
一方、突然の強い尿意とともに排尿が我慢できず漏れてしまうのが、切迫性尿失禁。神経系の病気が原因となることもありますが、そのほとんどは特発性で原因がはっきりとしていません。加齢にともない膀胱の働きが悪くなってくることも影響しています」
後半に、これらの予防になる骨盤底筋体操を紹介します。
寒くなると症状が悪化する?
一般に寒くなるとトイレが近くなるような気がしますが、これには確かな理由があるようです。
「実際、寒くなると、頻尿の原因になる過活動膀胱(ぼうこう)の患者さんの相談が増えます。汗によって水分を多く排出する夏に比べて、冬は尿の量が増えるためです」
過活動膀胱とは、「突然感じる強い尿意」「頻尿」「急な尿意を我慢できずに尿が漏れてしまう」などの症状がある病気です。
「正常な排尿は、膀胱に約200〜300ccの尿がたまってから尿意を感じます。ですが、過活動膀胱では少ない尿量でも突然強い尿意を感じます。
水分やカフェインの取り過ぎを見直すなど、生活習慣の改善を心掛けてください。骨盤底筋を鍛えるのも有効です。また、肥満の人は膀胱が圧迫されやすいので、ダイエットを」
尿漏れが不安で、行きたくなくてもトイレにしょっちゅう行くという人がいますが。
「会議前や電車に乗る前など、不安なときにはトイレに行っても良いと思いますが、何もないのに常に早めに行っておくのは意味があまりないので、おすすめしません」
年齢問わず起こりうる尿トラブルにも注意
「膀胱炎は、年齢に関わらず女性に多い病気です。主な症状としては、排尿時に感じる痛みや残尿感など。
男性の尿道が約20〜30cmあるのに比べて、女性は約3〜5cmと短く、尿道と膣、肛門が密接しています。つまり、細菌が体内に侵入しやすい構造になっているため、女性の発症率が高いのです。免疫力が落ちているときは、特に細菌が増えやすいので要注意」
対策はできるでしょうか。
「水分をしっかりととること、そして適度に排尿することが大切です。排尿によって細菌も一緒に排出されるので、トイレには我慢し過ぎずに行くようにしてください」
女性特有の疾患も
「出産が原因となることの多い、女性特有の疾患もあります」と藤原先生が教えてくれたのは、骨盤臓器脱という病気。
「子宮や膀胱、直腸といった臓器が膣から垂れ下がってくる病気です。尿が出づらくなったり、漏れたり頻尿になることも。股の間にぽっこりとした異物感があるなど、不快感に悩まされることも多いです。
これも骨盤底筋の緩みが原因。骨盤底筋は、これらの臓器を支えて、正しい位置に保つ働きもしています。肥満や便秘にならないようにすることや、骨盤底筋を鍛える体操も効果的ですよ」
\予防や治療にも/
骨盤底筋体操をやってみよう
尿失禁や過活動膀胱、骨盤臓器脱などは、骨盤底筋の緩みが関連していましたね。こうした症状の予防や初期の治療として行われているのが、骨盤底筋体操です。
「続けることが重要なので、テレビを見ながらCMの合間に行うなど、自分でついでの時間を見つけて毎日してみてください」(藤原先生)
基本編
- あおむけになって、膝を立て足を広げます。
- 膣や肛門、尿道をきゅっと締めたり緩めたり、素早く10回繰り返します。
- 膣や肛門、尿道を5秒かけてゆっくりと締めて、10秒かけてゆっくりと緩めます。これを10回繰り返します。
- ②と③を1セットとして、1日4~5セット行います。
応用編
【立ちながら】
足を肩幅に開いて立ち、机に両手を付いて②と③を行います。
【座りながら】
椅子に座って足を肩幅に開きます。背筋を伸ばして②と③を行います。
【床に伏せて】
四つんばいになり、床に両肘、両膝を付いて②と③を行います。
教えてくれたのは
京都泌尿器科医会
医学博士
藤原敦子先生
(2020年11月21日号より)
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