親の介護が一段落すると、次は自分の介護も視野に。リビング読者に、どんな備えをしているのか聞きました。専門家のアドバイスも紹介しています。
※2024年5月にリビング読者にアンケート。有効回答数1056、 本文( )内はイニシャル・年齢
イラスト/オカモトチアキ
老後に備えている人は3割未満 家族の介護がきっかけに
リビング読者に「自分の介護」に関するアンケートを実施。回答してくれたのは、1056人、平均年齢66・5歳のみなさんです。下グラフがその結果。
まず、「『自分の介護』の準備をしている?」という質問に「はい」と答えた人は27・5%。「準備を始めたきっかけ」は、「家族や親族の介護を経験したため」と回答した人が半数以上。ほかにも「銀行で備えを勧められた」(MM・55歳)、「子どもがおらず、面倒を見てくれる子孫がいないから」(KU・51歳)との声が。
一方、「いいえ(準備をしていない)」と答えた人は72・5%。「現在の生活で精いっぱいだから」という理由が多く寄せられました。中には「両親の介護に追われ、自分の準備をしているゆとりがない」(JN・59歳)、「介護状態ではないが、夫の世話でいっぱいいっぱい」(YM・75歳)という声も…。必要だとはわかっていても、自分のことは後回しになってしまうのが現実のようです。
備えの第1位は「貯蓄」 施設介護を希望する人も多数
介護に備えている人に、具体的には何をしているか聞くと、193人が「介護費用の貯蓄」と回答。「(将来の)保険料の値上げや介護保険制度の内容が心配」(KI・66歳)、「老後資金が足りるのか不安」(MM・51歳)という意見もあり、金銭面の備えが第1位に。介護情報を集めている人も多数。
全員を対象にした「老後はどこで過ごしたいか」という質問には、「施設」が半数近い46・9%。その多くが「子どもに迷惑をかけたくない」という理由でした。子どもとの同居を希望する人は8・7%と少数派のよう。また、要介護度に応じて自宅から施設へ住み替えを検討する人も。しかし、費用の問題で希望する環境がかなうか不安視する声もありました。
読者の悩みに専門家がアドバイス
まずは〝緊急時の備え〟をエンディングノートも便利です
アンケートで多かった「何から備えればいいかわからない」という悩み。京都府内で暮らす高齢者とその家族の生活相談を受けている、「高齢者情報相談センター」の内山貴美子さんにアドバイスをもらいました。
「いきなり介護を想定するのではなく、〝緊急時の備え〟から始めてみては。たとえば、急なけがや病気がきっかけで介護状態になるケースは珍しくありません。緊急連絡先、かかりつけ医などのメモを携帯し、自宅にも保管しましょう。救急隊員が各所とスムーズに連携しやすくなります」
情報収集も大切ですね。同センターや最寄りの地域包括支援センターなどで、介護保険制度や介護サービスについて教えてもらえます。
「元気なうちに専門窓口や施設見学に赴き、どんな老後を過ごしたいか考えていきましょう。イメージしづらいという人は、友人や親族、芸能人の体験談を意識して見聞きしてみて。エンディングノートの活用もおすすめです。何を考え、備えるべきか書かれているので、読むだけでも参考になりますよ」
元気なうちの備え
- 介護施設への転居、子どもとの同居などを想定し、自宅内を整理整頓する
- 専門窓口、新聞やテレビ、インターネット、周囲の人の経験談などから情報を集める
- できるだけ長く自立した生活を続けられるよう、健康を維持する
「命のカプセル」の用意を(救急医療情報キット)
向日市、長岡京市など一部地域では、高齢者のみの世帯に、救命活動に必要な情報を記載した「命のカプセル(救急医療情報キット)」が配布されています。こちらは自作も可能。紙に氏名と生年月日、血液型、持病、服薬歴、かかりつけ医、緊急連絡先を記入し、プラスチック製の容器に入れます。保管場所は冷蔵庫と決められています。玄関や冷蔵庫のドアにキットの所在を掲示しておくことで、救急隊員に知らせることができますよ。
〈 教えてくれたのは 〉
高齢者情報相談センター
センター長
内山貴美子さん
介護費用は老後資金と分けて取り置きを
費用面の備えについては「年金から新たに貯蓄するには限界があります。セカンドライフの資金計画においては〝介護費用を除いた貯蓄でどうやりくりするか〟という考え方に切り替える必要があります」と、ファイナンシャル・プランナーの薮内美樹さん。
残しておく介護費用は、平均データを参考にするとよいそう。下表にまとめました。
「施設介護も視野に入れるなら、いくつか見学してサービスや費用を比較し、自分に合う価格帯の見当をつけましょう」
認知症などの判断能力の衰えで、お金の管理ができないのも心配です。
「事前の対策として、金融機関によっては無料で利用できる『代理人サービス』というものがあります。財産管理を任せたい人を代理人として登録しておくことで、判断能力が低下したときに、本人に代わって生活費の引き出しや医療費の支払いなどが可能に。また、『家族信託』や『任意後見制度』を利用して家族などに任せるといった方法もあります。すでに判断能力に不安を感じている方には、社会福祉協議会の『日常生活自立支援事業』の活用も。生活費の出し入れ、印鑑・通帳の管理など、廉価でサポートを受けることができます」
〈 教えてくれたのは 〉
ファイナンシャル・
プランナー
薮内美樹さん
(2024年7月6日号より)
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