11月17日は「将棋の日」。実は古い京都と将棋の歴史、そして現在の京都の将棋事情について、「日本将棋連盟」ほか各所に取材しました。
撮影/桂伸也ほか
平安京で貴族が愛好 ビッグサイズの将棋盤も
若手棋士の活躍で近年注目されている将棋ですが、その歴史はいまだ謎の部分も多数。起源は古代インドの「チャントラガ」というゲームだとする説が有力で、それが中国や朝鮮、または東南アジアを経て日本に伝来したといわれています。
「将棋」の文字が出てくる最古の文献とされているのが、『新猿楽記(しんさるがくき)』。平安京の世相や風物を描いたもので、平安時代には貴族を中心に将棋が広まっていたことがうかがわれます。室町時代にかけての将棋は、現代のスタイル(縦横9マスの盤、8種の駒)とは異なっていたよう。盤の目や駒の数は次々と変化し、文献には縦横19マスもある盤「摩訶(まか)大将棋」も紹介されています。
それが再現されていると聞き、見せてもらいました(写真参照)。作ったのは、将棋の歴史に詳しい大阪電気通信大学教授・高見友幸さん。平安時代前期に登場したと推察されるそうで、「マス目は平安京の街並みを表していると考えています」と高見さん。さらに、「当時は占いや呪術の道具として使っていた可能性もある」のだとか。
時代が進むにつれ将棋は簡略化されて、安土桃山時代のころには現在のスタイルになったと考えられています。
一世名人は京都出身 信長・秀吉・家康にも指南?
日本における将棋の地位確立の礎となったのが、大橋宗桂(そうけい)。1555年、京都の町人の息子として生まれました。若いころから将棋の才を発揮し、その腕前は織田信長や豊臣秀吉にも認められていたとか。徳川家康により「将棋指南役」として召し抱えられ、「将棋所(しょうぎどころ)」を名乗り一世名人に。著書である最古の詰め将棋集「将棊造物」からは、宗桂の力強い棋風が伝わるといいます。
江戸期の終わりまで名人は家元制で、大橋家を含めた3家が代々世襲していました。年に1度、「御城(おしろ)将棋」として将軍の前で対局を披露。8代将軍吉宗によりその開催日が11月17日と定められました。現在の「将棋の日」は、この日にちなんでいます。
あの名刹が歴史に残る〝決戦〟の舞台にも
昭和初期、京都は歴史的な二つの対局の舞台となりました。主人公は阪田三吉。歌謡曲『王将』にも歌われる関西将棋界の名棋士です。一時期、「東京将棋連盟」との決裂で孤立していましたが、その復帰記念として行われることになったのが、1937年(昭和12年)の「南禅寺の決戦」「天龍寺の決戦」です。
いずれも持ち時間(考えるのに使える時間)30時間、7日間にもわたる大勝負だったとか。阪田はどちらにも敗北を喫しますが、主催の読売新聞により対局は大々的に報道され、社会の関心を集めました。
天龍寺は2016年、第29期竜王戦の会場にも。約80年の時を経ての戦いに、胸を熱くした将棋ファンも多かったようです。
京都の将棋人口は増加中 有名寺社でのイベントも
時とともに移り変わってきた京都の将棋事情。現在はどうなのでしょう。「日本将棋連盟京都府支部連合会」会長の廣田長己(おさみ)さんに聞きました。
「近年のブームもあり、当会の会員数は800人を超えました。うち半数以上は中学生以下のジュニア会員なんですよ。男子だけではなく女子も徐々に増えています」
習い事として人気が高まっているのですね。大人の会員については、「子育てや仕事がひと段落した年代の男性が中心。でも、何年かのちには女性がもっと増えるかもしれません」と廣田さん。
「『観る将(みるしょう)』といって、自分では指さないけれどプロ棋士などの対局を見て楽しむ若い女性が今増加しているんです。ぜひ自分でも指す楽しみを感じてほしいですね」
昨年は北野天満宮で「子ども将棋交流大会」を、今年は世界文化遺産である御室仁和寺で「子ども竜王戦」を開催した同会。
「歴史ある会場で行うことで、将棋の魅力がさらに広まればと思っています」(廣田さん)
将棋はおもしろくなるまで3カ月。覚えたら一生のパートナーになりますよ!
京都出身の棋士・女流棋士は現役で6人が活躍中
プロとして将棋界で活躍している「棋士」は、現在全国で約170人(現役のみ)いるそう。その称号を得られるのは年間4、5人という狭き門です。
その中で京都府出身の現役棋士は現在4人。うち、九段の佐藤康光さんはプレーヤーとして、また日本将棋連盟会長として将棋界をけん引。メディアなどで見かける機会もあるのでぜひ注目を。
「棋士」とは別枠で設けられている「女流棋士」という称号を持つのは、京都府出身では2人。北村桂香(けいか)さんは、自らも通った宇治の将棋教室で指導を続けています。
佐藤康光さん(九段)
八幡市出身。17歳でプロ入り。棋聖戦6連覇を達成し「永世棋聖」の資格を保持。現日本将棋連盟会長。八幡市では毎年「佐藤康光杯争奪将棋大会」が開催されています
北村桂香さん(女流初段)
宇治市出身。小学1年生から父の影響で将棋をはじめ、強豪の将棋部に入りたいと立命館大学に進学。現在は女性にも将棋の世界が広まるよう、さまざまなイベントに携わっています
子ども将棋教室に潜入! 年齢差を超えた研さんの場
13ある日本将棋連盟京都府支部のうち、特に子ども会員が多いという城南支部の「ジュニア将棋教室」を訪ねました。
30人ほどの子どもたちが密を避けるため、2部屋に分かれて熱心に将棋盤に向かっています。
小中学生に交じって、小さな手でパチン、パチンと駒を指す男の子は4歳! 兄の影響で始めたのだとか。年齢に関係なく、子どもたちは次々に相手を代えて対戦していました。
「将棋は相手との対話。自分の置かれた状況を把握し、どのように指すか。対局を通して考えることの楽しさや決断力、我慢強さを学んでもらいたいですね」
そう話してくれたのは支部長の千葉均さん。3年前に同教室を立ち上げ、子どもたちの指導を続けてきました。
「負けてすぐやめてしまう子もいます。向き不向きはあるかもしれませんが、とにかく楽しみながら学ぶことが一番。そうすれば自然と続くと思いますよ」
会員親子にインタビュー
棋士・藤井聡太さんの活躍を見たのがきっかけで、子どもが5歳のときから通っているという会員の笠井さん親子。習ってみての感想は?
父・笠井 剛さん
違う学年の子と触れ合う中で、自分から話しかけにいくなど積極的な性格に。はじめは負けたら涙目になっていましたが、感情のコントロールも身に付いてきました。将棋は急には強くならないので、一歩一歩努力する大切さを学んでくれていると思います
笠井創太くん(8歳)
教室は楽しいです。特に昇級していくのがやりがい。家でも通信型アプリを使って対局したりしています。ずっと将棋を続けたい!
「リビング将棋1日教室」入門編を開催します!
京都リビング新聞社でも、気軽に将棋の楽しさに触れられる「1日教室」を企画しました。大人も子どもも、親子でも参加OK。会場は「リビングカルチャー倶楽部伏見会場」です。
〈開催概要〉
【日時】
12/5(土) 午後1時~2時30分
【会場】
リビングカルチャー倶楽部伏見会場(京都市伏見区京町大黒町115-3 京都リビングエフエムビル内)※近鉄「桃山御陵前」駅・京阪「伏見桃山」駅から徒歩3分
【受講料】
2000円(教材費込み)
【講師】
日本将棋連盟京都府支部連合会
【対象年齢】
5歳以上(小学生6年生以下は保護者同伴。保護者1人分の受講料は不要)
【持ち物】
筆記用具
【定員】
20人
【申し込み・問い合わせ先】
リビングカルチャー倶楽部伏見教室 TEL:075(605)2805
【申し込み締め切り】
12/1(火)
〈全10回の将棋教室も開催予定〉
同会場では、2021年1月から全10回の「親子で将棋入門」も開催予定。5歳~小学6年生とその保護者が対象です。申し込み・詳細は上記伏見教室まで
(2020年11月14日号より)
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