食中毒を防ぐ 夏の食品保存講座

2024年6月7日 

リビング編集部

暑くなってくると注意したいのが、食品の保存方法。特に気をつけなければならないシーンをピックアップし、専門家にアドバイスをもらいました。

イラスト/オカモトチアキ

〝危険温度帯〟の時間を短くし細菌の増殖を抑えて

食品が傷みやすく、食中毒のリスクも増加する季節。適切に保存し、予防したいですね。そこで「京都市保健福祉局 医療衛生推進室 医療衛生企画課」で話を聞きました。

「食中毒を防ぐためには、細菌やウイルスなどを食べ物に〝つけない〟、付着した細菌を〝増やさない〟、そして加熱などによって〝やっつける(殺菌する)〟のが大原則です」と、同課の西上さん。

「生鮮食品やお弁当を持ち運ぶとき、加熱調理をした料理を冷ますときなどは〝危険温度帯〟を意識しましょう。食品の温度が20〜40℃では細菌が繁殖しやすいため、この温度帯の時間をいかに短くするかがポイントになります」

それぞれのシーンについて、詳しく教えてもらいました。

買い物編

「常温」と「要冷蔵」で袋を分けると保冷効果が長持ち

日々の買い物も、店を出てから家に着くまでの保存方法にひと工夫を。

「常温で保存できるものと要冷蔵・要冷凍の食品を分けて別の袋に詰めることをおすすめします。冷たいものだけをまとめた方が保冷効果が長持ちしますよ」

また「保冷剤や、スーパーでもらえる保冷用の氷は最後に詰めましょう」と、同課の藤原さん。冷たい空気は下にたまる性質のため、上に置くことで袋全体に冷気が行き渡りやすくなるのだとか。袋がひとつしかないときにも使えるテクニックです。

衛生面でも注意点が。

「エコバッグは食品の液もれなど、使い続ければ汚れていきます。袋にもともと大量の細菌が付いていては、せっかく保冷して細菌の増殖を抑えても食中毒のリスクは高いままです。定期的に洗ったり消毒したりして、清潔に保ちましょう」

保冷剤の使い方

袋全体を冷やすために、保冷剤や氷は袋の上部へ。さらに、食品の隙間に小さな保冷剤を詰めることで、荷崩れを防ぎつつ冷やすことができます。

保冷時間の目安

保冷剤には「ソフトタイプ」と「ハードタイプ」の2種があり、それぞれ保冷時間に特徴があります。

「ソフトタイプ」は短時間、ピンポイントに冷やしたい場面に向いています。「ハードタイプ」は丈夫で長時間使えるので、たくさんの食品を冷やしたいときや、アウトドアで活躍します。

お弁当編

水気の多い料理を避け、冷ましてから詰めて

学校や職場に持っていくお弁当の保存についても聞きました。

「煮物など水分を多く含む料理や、生野菜など非加熱の食材は傷みやすいので、夏場のお弁当には不向き。水気を切り、フィルムカップに入れるなど、ほかの料理に触れない工夫が必要です。温かい料理やご飯も弁当箱の中に水蒸気がたまり、料理が傷みやすくなる原因に。詰める前に必ず冷ましましょう」(藤原さん)

持ち運びにはアルミ製のバッグを使い、保冷剤はソフトタイプを1〜2個用意。ふたの上に置くとよいそう。

「オフィスに冷蔵庫がある場合は出勤後に速やかに保管を。ない場合は、保冷バッグに入れたままなるべく涼しい場所に置くようにしましょう」

自然解凍の冷凍食品などで冷たさをキープ

調理時間の短縮に便利な、自然解凍が可能な冷凍食品。保冷剤と併用して使うことで、温度をキープするのに役立ちます。ただし、自然解凍に対応していない冷凍食品や、自家製の冷凍食品を凍ったまま詰めるのはNG。解凍中に細菌が増殖し、かえって食中毒を起こすリスクが高まります。

自宅編

温度設定を見直し、早めの消費を

毎日のように使う冷蔵庫や冷凍庫。

「大抵の細菌は10℃くらいから温度が下がるにつれて増殖が緩やかになります。そのため、冷蔵庫の適正温度は10℃以下、冷凍庫はマイナス15℃以下が適正といわれています」と西上さん。

「冷蔵しても細菌が死滅するわけではなく、中には低温や真空状態で活発になるものも。冷蔵庫を過信せず、早めに使い、食べ切ってもらいたいです」

冷蔵庫・冷凍庫での保冷

肉や魚はパーシャル室(マイナス3℃)やチルド室(0℃)で保存を。また、冷気を循環しやすくするために収納は7割以下を心がけて。温かい食品は庫内の温度を上げてしまうため、冷ましてから保存を。浅型の保存容器に小分けし、ほこりなどが付着しないよう注意しながら風を当てて冷やしましょう。

一方、冷凍庫は隙間なく詰める方が保冷効率が上がります。

鍋を丸ごと冷やすのは細菌が増殖する要因に

カレーや汁物など一度に大量に作る料理。鍋のまま放置すると中心が冷めるまでに時間がかかり、その間にウエルシュ菌(※)が増殖することがあるそう。食中毒の原因になるため、冷蔵庫に入れるときは小分けにして冷却してから保存しましょう。

※空気の少ない環境を好む細菌。保存した料理を食べる際は、よくかき混ぜて空気を入れながら、中心部まで十分に加熱(75℃以上)を

教えてくれたのは

京都市保健福祉局 医療衛生推進室 医療衛生企画課

西上祐子さん
藤原汐里さん

アウトドア編

クーラーボックスを活用 食品の現地調達で保冷時間の短縮に

キャンプやバーベキューを楽しむ機会もありますね。そこで「京都府キャンプ協会事務局」の中村彰利さんに、アウトドアでの食品保存のコツを聞きました。

「アウトドアで食品を持ち運ぶときは、頑丈なハードタイプのクーラーボックスが便利です。公共交通機関で移動するなら、コンパクトサイズを分担して持って行ってもいいですね。参加人数や持ち込む食品の量、移動手段、現地の保冷設備を踏まえて選びましょう」

衛生面を考えると、屋外で一から調理するより、清潔なキッチンであらかじめ食材をカットし、下味調理したものを冷蔵・冷凍しておくのがよいそう。ひとつのボックスに食品をまとめるときは、肉や魚のドリップ液に注意。保存袋を二重にするなどして細菌の付着を防ぎます。

「日帰りですぐ使うときは冷蔵、数日に分けて使うなら冷凍するなど工夫を」と中村さん。また、事前に現地のスーパーやコンビニを調べておき、生鮮食品や氷は現地で調達すると保冷時間の短縮になります。

「その土地の食材を味わう、アウトドアならではの体験にもなりますよ」

クーラーボックスの使い方

使う前日に氷や保冷剤(当日のものとは別)を入れておく、涼しい場所に置いておくなど予冷すると保冷力がアップ。食品はあらかじめ冷蔵・冷凍したものを隙間なく詰めます。また、ふたを開けると冷気が外に逃げるため、開閉は最低限に、素早く行うのがコツ。

箱内の中心にも保冷剤を

屋外ではハードタイプの保冷剤の用意を。中心が冷えるのに時間がかかるため、箱内の上部と真ん中に置くのがおすすめとか。ペットボトル飲料や食品を凍らせて保冷剤代わりにしてもいいですね。

直射日光を避け日陰に置いて

クーラーボックスは外気温の影響を受けやすい構造とか。保冷性能を維持するには、テントの下や木陰など、直射日光を避けた場所に置きましょう。地熱を避けるため、テーブルなどの上に置くのも効果的です。

教えてくれたのは

京都府キャンプ協会 事務局長

中村彰利さん

(2024年6月8日号より)