心理を知って 服選びをもっと楽しく

2023年9月29日 

リビング編集部

おしゃれの秋。服を選ぶのは楽しい半面、悩むことも多いのでは。そこで、読者に聞いた服選びの悩みに、心理学の観点からアドバイス。子どもの服選びについても紹介します。

イラスト/オカモトチアキ


読者に聞くと、「服選びに自信が持てない」「買い物に行くと、いつも似たようなタイプを選んでしまう」「夫は私が買ってきた服を着ない」などの声が届きました。

これらには、「実は◯◯と思っている」という心理が働いていることも。それぞれの心理を知ることで、服選びがもっと楽しくなるかもしれません。被服社会心理学と呼ばれる、装いに関する心理学の専門家にアドバイスしてもらいました。話を聞いたのは、京都ノートルダム女子大学現代人間学部生活環境学科教授の牛田好美さんです。


自分を知って心のままに着たい服を

「明るい色の服などを着たいと思っても冒険できず、同じテイストの服ばかり選んでしまう」(Sさん)

アドバイス

「冒険してみて失敗したらという不安はありますよね。この色は自分には似合わないという思い込みもあるかもしれません」と牛田さん。「例えば同じ黄色でもトーンが違えば似合う黄色があるはず。似合う色調は髪、目、肌の色を基に判別します。自分で調べるなら、鏡から約1m離れて左右の肩に色調の異なる服を置いて見比べてみて。顔色が明るく元気そうに見えた方が自分により似合うもの。とにかく挑戦してみましょう。

パーソナルカラー(※)や骨格診断で詳しく似合う色調、デザインを知ることもできますよ」

※その人の生まれ持った髪、目、肌などの色と調和する色のこと

「年齢とともに似合う服と着たい服が違ってきたように思い、人の目を気にするようになった」(Nさん)

アドバイス

「自意識には、公的自意識と私的自意識があります。公的自意識は自分の外見など外から見えるものに、私的自意識は自分の内面や気分など外からは見えないものに、それぞれ注意を向ける意識のことです。人の目が気になるのは、この公的自意識が高い状態にある人。Nさんもそうなのかもしれません。ですが、人はそんなに自分を見ていないもの。そう思って、好きな服を着てほしいです。

それでも人の目が気になるようなら、シルエットを考えてみて。年齢の影響を大きく受けるのは体形です。気になる部分をカバーするタイプのものを選んでみてください」(牛田さん)


家族や友人の服選びは褒めて自信につなげて

「夫が同じ服を10年くらい着ています。ダサいので新しく買い替えてほしいのですが、私が選んでも着てくれなくて」(Hさん)

アドバイス

「とても着心地が良いのか、デザインが好きなのか、(夫には)着続けたくなる理由があるのでしょうね。まずはその理由を理解した上で、一緒に買い物に行ってみましょう。そして、少し流行を取り入れた服を選んで『こんな服も似合うね!』と言ってみて。人は『褒められた』など快感の経験が多いと、自己肯定感も高まります。一緒に服を選ぶことや、その服を着て一緒に出かけることを楽しい時間、思い出にすれば特別感もあり、喜んでHさんが選んだ服を着てくれるのでは」

「服選びに自信がないという友人に、前向きに服選びができるようアドバイスしてあげたい」(Kさん)

アドバイス

「(友人は)選んだ服を悪く言われた経験などがあり、自信がなくなったり自分で選ぶのが嫌になっているかも。自覚がなくても似合っている場合もたくさんあるので、Kさんがその友人のファッションをすてきと思ったら、きちんと褒めてあげて。一緒に買い物に行ったときは、店員さんの意見も参考に、ご友人自身が直感的に『これ!』と思うまで、いろんな服を試着するようアドバイスを」


服選びで子どもの自立心主体性がアップ

子どもの服は、親の好みで選んでしまうことも多いのでは。しかし、「子どもの頃から、自分で服を選ぶことで育まれる力があります」とは、牛田さん。

「自分で選ぶという経験は、自立心や主体性を育てます。そして、子どもは自ら選んだ服を着たときに周囲の反応などを見て、この場面ではこれを着ると良い、もしくは着ない方が良いといったことを学びます。周りの評価や反応を繰り返し受けることで、場面や自分に合う服を着るといった意識が育つのですね。

こうした意識は、親の育児に対する姿勢が厳格ではなく寛容で、家庭内でのコミュニケーションが多い方が身に付きやすいといった研究データがあります。子どもの気持ちが尊重される自由な環境の中で、一緒におしゃれをして外出したり、家族だんらんの時間を大切にしているうちに、親の期待も自然と伝わります」

アドバイスや手助けは本人の気持ちを尊重して

「服へのこだわりが強い2歳の息子。TPO(時、場所、シーン)や季節に合った格好をさせるのが大変」(Nさん)

アドバイス

「親が選んだ服を嫌がる子もいます。幼い子どもでも、動きやすさや肌ざわりなどを気にする子は多く、気に入らない場合は何か理由があるはずです。そうした思いも尊重してあげてください。

その上で、TPOや季節に合った服をいくつか用意してその中から選ばせてあげましょう。選択肢があることで、選びたい気持ちも満たされると思います」

「高校生の娘と買い物に行ってもデザインの好みが違い過ぎてもめてしまいます」(Hさん)

アドバイス

「中高生ともなると自分で服を選びたくなると思います。まずはその意思を受け止めてあげて。

意見が合わないときはいっそのこと、娘さんと同じ格好をHさんが一度してみては。意外と着心地が良いなど、新しい発見があり、娘さんの気持ちに寄り添えるかもしれません」

服選びは「自分探し」

服選びを楽しむ上で、大切にしたいことを牛田さんに聞いてみました。

「コーディネート一つで近寄りがたいと思われたり、親しみやすいと人が寄ってきたり。与える印象が変わるなど服は周りへの影響が大きいですが、何より自分の心と密接に関係しています。

服を選ぶことは、自分が何者か、自分らしさは何か、探すことでもあります。服を選ぶ過程で悩んでも〝自分探し〟として楽しんでくださいね」

教えてくれたのは
京都ノートルダム女子大学 現代人間学部 生活環境学科
教授 牛田好美さん

(2023年9月30日号より)