ハンドケア・ネイルケアで 指先から高齢者を元気に

2023年6月2日 

リビング編集部

それぞれ仕事を持ちながら、「福祉ネイリスト」として活動するボランティアチームがあります。ネイルケアだけではなく、会話やふれあいを通して高齢者に笑顔を届けています。

撮影/児嶋肇

左から副代表・岩田さん、代表・松本さん、メンバーの北川さん。「私たちもボランティアで元気をもらっています」

色とりどりに並ぶマニキュアやネイルシール。京都市中京区の「京都市御池老人デイサービスセンター」の一角に展開されたのは、華やかなネイルサロンのようなブースです。

そろいの花柄のエプロンを着けた女性たちは、「ハンド&ネイルケアボランティアチーム ガンチー」のメンバー。高齢者施設などを訪問し、無償でハンドケア、ネイルケアを行っています。こちらにも数回訪れているそう。

ブースにやってきた80代の女性は前回もネイルをしてもらったそうで、「今日はどの色がいいと思う?」と、うきうきした様子。相談しながら、ラメ入りの淡いピンクを選びました。その手を優しく取り、施術を始めるメンバー。

「普段は、どう過ごしているんですか?」

「よく散歩してますね」

「すてきな爪、誰に見てもらいましょうか」

「1人暮らしやし、ご近所さんに見てもらおうかな」

そんな話をしつつ、最後に親指に白い花のネイルシールを貼って完成。

「ああ、きれいな色やなぁ」と、指先を見つめる利用者の女性。「気持ちが若返るわ」と、笑顔で席を立ちました。

ネイルの施術のほか、ハンドトリートメントも行っていて、この日は男女14人が利用。みなさん、終わったあとは和やかな表情を見せていました。

かわいい仕上がりに、利用者からは「亡くなった夫に見せたい」「孫に自慢しよう」といった感想も
ネイルを希望しない男性には丁寧にハンドトリートメントを

認知症の人や障がい者のための施設へも訪問

「コミュニケーションも施術の一環」と松本さん。ネイルで気持ちが若やぐのか、学生時代などの話をしてくれる人が多いそう
消防署との共同事業で作成した「防火ネイルシール」

代表の松本知美さんと、友人で副代表の岩田亜希子さんの二人が2020年に立ち上げた同団体。「何か人の役に立つことをしたい」と考えていた松本さんが、2019年に岩田さんと一緒に「福祉ネイリスト(※)」の資格を取ったことから始まりました。

高齢者福祉施設への訪問活動を行ううち、賛同者が徐々に集まり、現在は20人以上のメンバーが在籍。うち約半数が福祉ネイリストまたはネイリストの資格を持ち、施術を担当しています。活動は仕事の休日などに行い、出向く先には認知症の人や障がい者のための施設も。

「認知症で怒りっぽくなったという人が、ネイルをすると不思議と穏やかになることも。笑顔で〝ありがとう〟と言う姿を見て、スタッフさんやご家族も喜んでくださるんです」と松本さん。

そのほか中京消防署・中京警察署と連携して、施設訪問時やイベントの際に、防火・防犯を呼びかけるネイルシールを貼る活動も実施。地域の子どもたちとともに、高齢者にハンドトリートメントをするという多世代交流イベントも開催しました。昨年には、〝市民の健康づくりを推進する団体〟として、京都市の「健康長寿のまち・京都いきいきアワード2022」の大賞を受賞。

松本さんは、「活動を通して歳を取ることが楽しみになる社会づくりをしたい」と話します。「京都市から府内、そして全国へ、ネイルボランティアの輪が広がっていくことを願っています」

一緒に活動するボランティアメンバーも随時募集中だそう。問い合わせはメール=ganchii2020@gmail.com=で。

訪問依頼はホームページ=http://khpst.com/ganchii2020=から。

(※)〝ネイルによって高齢者や障がい者に元気になってもらいたい〟という目的のもと生まれた民間資格。取得までに、ネイルの技術以外に福祉や介護の知識も学びます

(2023年6月3日号より)