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からだのギモンシリーズ カラダを守る!だ液のチカラ

2020年9月25日 

リビング編集部

〝だ液〟といえば、食事のとき消化を促進してくれるもの。実は、それだけじゃないんです。体を守る縁の下の力持ち、だ液の働きについて専門家に教えてもらいました。

イラスト/山田だり

体の入り口で活躍するスーパーガードマン

「だ液はただの〝ツバ〟ではなく、とても有益なものなんですよ」。そう話してくれたのは、京都府立医科大学附属病院歯科の診療副部長・山本俊郎先生です。

「よく知られている消化作用以外にも、口内の㏗を調整したり、歯の再石灰化を行ったりという虫歯予防の働きも。口内の汚れを洗い流す自浄作用、粘膜の保護・傷の修復、ウイルスや細菌の増殖を抑える抗菌の作用もあります」

体内に入ろうとする〝悪者〟と口の中で戦ってくれているのですね。

「最近では、だ液中の代謝物質を解析することで、がんの早期発見や遺伝情報を入手する研究も進んでいるんですよ」(山本先生)

普段意識することは少ないだ液ですが、私たちの体にとって大切な役割を担っているようです。

消化パワー

消化酵素のアミラーゼがデンプンを麦芽糖に分解。腸で吸収しやすい状態にすることで消化を助けます

虫歯予防パワー

飲食により酸性に傾いた口内の㏗を元に戻し、虫歯菌が出す酸を中和します。また、カルシウムイオンリン酸イオンフッ素イオンを補給して歯の再石灰化を促進する力も

抗菌パワー

ウイルスや細菌などと結合して機能を無効化するIgA抗体をはじめ、ラクトフェリンペルオキシターゼリゾチームといった抗菌作用を持つ物質を含みます

口内の保護・修復パワー

成長因子が口内炎などの傷を修復。粘液物質のムチンは湿り気を与えることで粘膜を保護してくれます

【あなたは大丈夫?】だ液チェックリスト

だ液量減少で起こるさまざまなトラブル

上のリストで当てはまる項目が多かった人は、だ液の量が減少しているサインかも。

「口中がねばつく、入れ歯が歯茎に当たって痛むのは、だ液減少によるうるおい不足が原因と考えられます。舌の乾燥による『舌痛症』や、味がわかりにくくなるのも同様です」と山本先生。

気が付くと口で呼吸している人も要注意だそう。

だ液が少なくなると、虫歯予防や口内保護、抗菌作用をもたらす物質の効果もダウンすることに。

「歯を磨いていても虫歯になりやすく、口内炎ができやすい状態に。細菌やウイルスの繁殖が抑えきれなくなるので、口臭の発生や、舌や歯茎にカビが生えることもあるんですよ。

そのほかにも歯周病や誤嚥(ごえん)性肺炎、大腸炎、インフルエンザなどの感染症のリスクも高まります」(山本先生)

〝体のガードマン〟であるだ液のパワーダウンは、さまざまな病気の一因にもなるようです。

分泌を防げる要因は

だ液量の減少には、いくつかの要因があると山本先生はいいます。

「まずは加齢による身体機能の低下。また、不規則な生活からくる自律神経の乱れ、運動不足や寝たきりの状態、ストレスが多い環境も一因になります」

現在のように人との会話が少なくなっている状態も、舌を動かさないのでだ液が出にくくなるとのこと。日々のライフスタイルが大きく関わっていると言えそうです。

「そのほかとしては、薬の副作用が考えられます。個人差はありますが、高血圧や花粉症、うつ病、不眠症といった病気の薬のほか、利尿薬や抗がん剤も影響を及ぼします」

このような治療を長期に続けている場合は、だ液量の減少につながりやすいそう。

「中高年、高血圧、運動不足など、要因が重なる人は特に注意ですね」

また、病気の症状としてだ液が少なくなることも。「ドライマウスや糖尿病、自己免疫疾患の一つであるシェーングレン症候群などが当てはまります」(山本先生)

だ液を増やす生活習慣を身に付けよう

では、十分にだ液を分泌して、その働きを高めるためにはどうしたらよいのでしょうか。

「まずは食事。水分を十分に取るのはもちろん、栄養バランスの取れたメニューを心がけましょう」と山本先生。

「ヨーグルトをはじめとした発酵食品に含まれるビフィズス菌や乳酸菌は、だ液中のIgAを増やしてくれます。ゴボウや切り干し大根など食物繊維が多くかみ応えのあるものも、だ液腺の刺激になるのでおすすめ。コンブのアルギン酸や納豆のポリグルタミン酸は分泌を促してくれますよ」

また、姿勢を正してよくかんで食べることでだ液が出やすくなることも。

軽い運動や舌磨きも

「ストレッチやウオーキングといった軽い運動、規則正しい生活など、自律神経を整えることも大切です。

また、歯磨きとともに〝舌磨き〟も習慣づけて。舌苔(ぜったい)などの汚れを落とし、舌を刺激することでだ液の分泌促進に。奥から舌先へ軽く数度ブラッシングするだけでOKですよ」(山本先生)

だ液腺のマッサージ方法も教えてもらったので、左図を参考にぜひ取り入れてみて。

【Let’s try!】だ液腺のマッサージで分泌量をアップ!

〝三大だ液腺〟を刺激することで分泌を促します。いずれも10回程度が目安。すきま時間にチャレンジを!

あごの先端のすぐ内側にある〝舌下腺(ぜっかせん)〟。両手の親指を立てて、あご下から舌を優しく押し上げる。強く押しすぎると痛むことがあるので注意

あごの骨の内側奥にあるのが〝顎下腺(がっかせん)〟。両手で握りこぶしを作り、第2関節をあごの左右内側に押し当て、あご先に向けて動かす

ほお骨の下あたりにある最大のだ液線、〝耳下腺(じかせん)〟。人さし指・中指・薬指をそろえて、両方の耳の下から前方へ円を描くようにゆっくり回す

だ液はとても有益なものです!

教えてくれたのは

京都府立医科大学附属病院

歯科診療副部長山本俊郎先生

(2020年9月26日号より)