誰もが直面する、介護の問題。身内の話だからこそ人に相談しづらかったり、どのように関わっていけばいいか悩む人も多いのでは。そこで、読者に介護にまつわる思いを聞きました。専門家に介護との向き合い方のアドバイスをもらいましたよ。
※2022年9月にリビング読者にアンケート。
有効回答数952、 本文( )内はイニシャル/年齢
イラスト/フジー
これから始まる介護に不安の声が
「うちはまだ大丈夫」と思っていても、けがや病気、認知症などで急に介護が必要になることが。
もしものときにどういう介護を考えているかを読者に尋ねると、「在宅介護。親には今までの感謝があるので」(NT/47)との声がある一方で、「介護サービスをお願いしながら、できることはやっていきたい」(TU/39)と、プロを頼りにする声も多数。「子どもたちは遠方にいるので、夫婦で施設に入ろうと話し合っている」(YS/64)と、当事者としての声も。
また、自身の仕事・家事との兼ね合いや金銭面への不安が多く寄せられました。
介護にまつわる思い
基本、在宅介護になると思います。介護サービスも利用したいですが親は嫌がりそう(RY/44)
親と同居中。まずは家をバリアフリーに。私は嘱託社員なので、出勤日数を減らし、妻と一緒に見ていきます(MT/61)
他府県に住む夫の親は地元にいる夫の姉妹にお願いする予定。もし重度の要介護になったら、夫が長男なのでこちらで引き取り、介護施設にお願いしたい(SI/53)
本人の希望に沿いたい。パートを辞めて在宅介護も可能。ヘルパーさんも頼み、心の負担がいっぱいにならないようにしたい(TH/46)
自分たちではできないので、可能な限り居心地の良い高齢者向け住宅などで暮らしてもらいたい(SK/57)
夫とは8歳離れているのでいずれ、介護することになると覚悟しています。私のことが分からなくなって手が出るようなら施設にお願いしたいと思います。子どもやその嫁にはさせたくありません(HT/69)
できる限り在宅介護をしたい。福祉の仕事をしているので知識を色々と取り入れていきたい(TA/63)
介護サービスとの調整はしますし、できます。それ以外のケアワークはお互いのメンタルヘルスのためにしないと決めています(TI/32)
親とも介護はしないと決めているので、親自身で介護費用を貯めてもらっている。代わりに結婚式や自宅購入、奨学金返済の資金援助はしないこととした(AK/33)
子どもの教育資金のためにパートを始めようと思っているけれど、介護と両立できるか不安(EA/45)
自分か夫に介護が必要になったとき、障がいのある子がどうやって生きていくか不安(SF/50)
自分は単身者。兄弟も年が近く、誰が先に要介護になるかわからない状態。遠方のおいめいを頼るのは現実的ではないし、介護が必要になれば施設に入るしかない(SK/51)
遠方の親をどう介護するか。実家近くに住む兄夫婦は頼りがいがない(KS/33)
今も生活に精いっぱい。介護が加わってきたら金銭面や時間など、優先順位が想像できない(TF/49)
親を介護するときのために、元気なうちから介護サービス施設の見学に行った方が良いのかなと思うが、なかなか行く機会がない(MN/27)
今は独身なので今後どうなるかわかりませんが、備えをどれくらい持っていればいいのか検討がつきません。かといって子どもに負担はかけたくない(RK/33)
兄弟と仲違いし何年も疎遠に。今後、母が要介護となったら相談など大変そう。私は嫁いだ身なのでどこまで実家に関与できるかわかりませんが、母のことを思うと複雑(RS/40)
別居する親の状況を把握するのは難しい。また、自身が高齢出産で子どもがまだ低年齢のため、今後2つの家を行き来しながら育児と介護と仕事をこなせると思えない(KN/44)
経験者のリアルなエピソードも
介護経験のある読者からは「先の予測ができず精神的に余裕が持てない」(HH/73)という切実な悩みや、「親族の協力を得られなかった」(YO/65)と当時を振り返る声が届きました。
「現在、親の介護中。別居する姉と電話で話すのがストレス解消になる」(KH/61)という体験談も。自分が直接介護に携われなくても、介護者に寄り添うことが助けになるようです。
通いで実家の父を見ていますが、父と同居の家族は非協力的で、施設入所にも否定的です。もしものときは私が入所費用を用立てするのかと思うと気が重い(KT/61)
相手は高齢だからしかたないと思っていても、注意しても聞かないことにイラッ。優しい対応ができない自分に嫌悪する(TK/68)
介護費用なので本人の貯金を使いたいが、家族では引き出せない銀行もある。信託制度は手数料が高くて断念。課題が山積みです(MM/60)
小学生のとき、家族総出で介護を経験。夏休みも徘徊(はいかい)しないようずっと見守っていた。子ども心には受け入れがたいことも多く、友達にも知られたくなかった(MT/47)
介護は娘がするものという古い考えがあり、自分たち娘2人の負担が増大。息子やその嫁は、関係ないという考えで介護に協力しない(CH/65)
独身の自分に親の介護が当たり前のように回ってきた。分担どころか、兄弟に仕事を辞めて介護に専念するよう言われたことも。せめてもう1人手伝ってくれる人がいたら、心身ともにゆとりができて母に優しく寄り添うことができたと思います(HS/64)
要介護者の感情の変動、兄弟間で差を付ける態度、相手によって言うことが変わることに疲れる。認知症かな?と思い気にしないことにしているが、我慢できないときは距離を置くようにしている(KA/63)
母の介護をするとき、下の世話など戸惑った(MO/62)
週に3〜4日泊まりで母の介護をしています。その間、自宅の家事がどうなっているのか心配。家族も仕事で忙しく、洗濯物がたまってしまう(KE/61)
私は車の運転ができないので、兄弟が親の通院や散髪などに連れていってくれた(MK/48)
スーパーで偶然、介護福祉に携わる大学の後輩に会い、介護のあり方を見直すことができた。感謝しかない(MI/59)
一人っ子だから自分がやらなければ…と母の自宅に通って頑張っていたが、近所の人が様子を見に行ってくれた(AK/62)
親戚が金銭を援助してくれました。日々の献立に手が回らないとき、レトルト食品なども送ってくれてありがたかった(KY/34)
介護している叔父から「認知症の祖父母の話し相手をしてくれているだけで助かる」と言われた(MH/32)
夫の妹さんが介護老人保健施設の近くに住んでいるので、何かのときはまず駆けつけて下さるのが、とてもありがたく思っています(MF/60)
身内に介護施設や医療用品メーカーで勤務経験のある方がいるので、情報提供し合っています(AN/38)
妻は介護に付きっきりで外出できないことも多く、近所の義母が泊まりで子ども(孫)の面倒を見てくれたり、学校や習い事の送迎をしてくれました(TM/38)
ヤングケアラーを知っていますか?
近年、青少年が重い責任や役割を担う「ヤングケアラー」が社会問題になっています。
「ヤングケアラーは本来大人が担うとされる家事や家族の世話などを日常的に行ない、〝子ども・若者ケアラー〟とも呼ばれます」と話すのは、ケアラーの調査や援助を行う立命館大学教授・斎藤真緒さんです。
「お手伝いと違って自分がやらなければ生活が回らないので、自分の時間をケアに費やし、人間関係や学業、就業などを諦めざるを得ない場合があります。世間では〝家族は助け合って当たり前〟という風潮も根強く、子どものSOSが見逃されてしまうことがあります」
周囲の大人にできることは?
「こうした家庭は親もさまざまな事情を抱えていることが。親がやればいい、で片付けるのではなく、子どもも含めた家族が地域で孤立しないようつながりを持つことが大切です」と斎藤さん。
「ケアを担っていても自分の人生を生きられるよう、家族を丸ごと支援する動きが広がっています」
教えてくれたのは
立命館大学 産業社会学部
現代社会学科 教授
斎藤真緒さん
京都府は今年4月に専門の相談窓口「京都府ヤングケアラー総合支援センター」を設立。京都市では昨年度実施した実態調査の結果を踏まえ、ポスター掲示など、社会的認知度向上に向けた取り組みを始めています。
ひとりで抱えないためにまずは現状整理から
突然始まることが多い介護。高齢者を介護・福祉・健康・医療面から支える「地域包括支援センター」の木谷絵美さんに、何から対応すればよいか聞きました。
「まずは近くの地域包括支援センターに相談を。各市町村に設置され、府内には137カ所あります。介護度や経済状況、家庭環境に合わせ、利用できる制度や相談機関を案内してもらえますよ」と木谷さん。介護が始まる前や、府外に別居する家族の相談も受け付けているそう。
「家族とも連携を。核家族化が進み関係も複雑になった現代では、全員が同じ熱量で関わるのは難しいものです。それを踏まえて協力できる限度を共有し、介護体制を考えていきましょう。介護者だけが悩みを抱えて孤立しないよう、周囲が話し相手になるのも介護の支えに。身近に相談相手がいない場合は、介護者同士の交流会を活用してみて」
また、木谷さんは「エンディングノートの活用がおすすめ」と言います。
「趣味や好きなもの、暮らし方の希望などを書いてもらっておくことで、認知症など本人が思いを表現できなくなっても、気持ちのすれ違いを減らせます。かかりつけ医など本人しか知らない情報も把握でき、各所と連携しやすくなりますよ」
家族で共有したいこと
本人に確認
- どこで誰から介護を受けたいか
- 本音を伝えやすい家族は誰か
- 介護費用に使える限度額
親族に確認
- 金銭的な援助の限度
- 身体的な介助の限度
- 介護に使える時間
- 要介護者宅との距離
- 自宅は介護に適した環境か
- 家事や仕事との兼ね合い
- キーパーソン(各所や親族の窓口となる人)を誰にするか
在宅介護と施設介護
在宅介護と施設介護、それぞれの特徴をまとめました。
在宅介護
自宅で状況に応じた介護サービスを受けられる。住宅改修など介護環境を整える必要も。
〈利用できるサービス例〉
訪問介護、デイサービス、ショートステイ、福祉用具貸与、住宅改修など
施設介護
施設でプロによる見守りや介護がある。ただ、本人の身体状況や経済状況で入所できる施設が変わる。
〈施設例〉
特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、グループホーム、ケアハウス、サービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホームなど
教えてくれたのは
大浦・朝来・志楽地域包括支援センター 管理者
木谷絵美さん
(2022年10月22日号より)
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