京都では、昨年、プラスチックの包装を使わない、量り売りの店が続々とオープン。〝ごみの出ない買い物〟という姿勢はもちろん、少量をいろいろ試せるのも魅力です。そんなお店を紹介しつつ、〝ごみゼロ〟を目指す「ゼロ・ウェイスト」生活を楽しむ方法を探りました。
撮影/三國賢一(店舗)
国内でも広がる〝ごみゼロ〟への動き
近年、世界中で「ゼロ・ウェイスト」と呼ばれる「無駄を最小限にして〝ごみゼロ〟を目指す取り組み」が注目されています。「背景にはごみの埋め立ての限界、プラスチックごみによる海洋汚染のほか、ごみ処理で発生する温室効果ガスによる気候変動の問題があります」と話すのは、同志社大学政策学部准教授の小谷真理さん。
「国内でも、2003年に徳島県上勝町が自治体で初めて『ゼロ・ウェイスト宣言』をしました。2022年4月からは循環型経済の考え方を取り入れた『プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律』が施行。多くの自治体や企業が、ごみの発生抑制や再利用、再資源化に取り組み、ごみを出さない社会の実現に向けて動き始めています」
ここでは京都の3店をピックアップ。また、五つのステップで私たちができることを小谷さんに教えてもらいました。
ごみを出さずに買える商品が約700品目
ゼロ・ウェイスト スーパー 斗々屋(ととや) 京都本店(上京区)
店内には、旬の野菜や果物から、肉、豆腐、お米、調味料まで、約700種の品々がずらり。個包装をせず、量り売りで販売。持参した容器または貸し出し容器に入れて買う仕組みです。「オーガニックやフェアトレード(※)の食品にこだわっているのも特徴です」と、広報担当のノイハウス萌菜(もな)さん。
食品ロスを出さない工夫も。「生鮮食品などは新鮮なうちに総菜に加工して販売。常温で保管できるように瓶詰めにすることもあります」。さらに産地から品物を配送する際にも、通い箱や通い袋を使ってごみ削減を心がけているといいます。
※途上国の生産者がより豊かに暮らせるよう、適正な価格で取り引きすること
■ゼロ・ウェイスト スーパー 斗々屋
https://totoya-zerowaste.com/
地元のおいしいものを量り売りで
Zero Waste Kyoto (ゼロウェイストキョウト/中京区)
寺町通に店を構えるこちらは、量り売りをする食品のセレクトショップ。米や野菜、味噌、納豆、ジャム、ドライフルーツなど、京都や近隣の県で生産されたものを中心に取り扱っています。来店者は、持参した容器や有料の容器にほしいものを必要な分だけ詰めて購入。
「ワクワク感のある買い物体験をきっかけに、環境について考えてもらえたら。昔は日本でも、鍋を持って豆腐を買いに行くのが当たり前でした。特に〝もったいない精神〟を受け継ぐ京都の人には、量り売りが定着しやすいのでは」と話すのは、主宰の植良(うえら)睦美さんです。写真はスタッフの亀田采花(あやか)さん。
■Zero Waste Kyoto
https://totoya-zerowaste.com/
布バッグでギフトラッピング
シサムコウボウ 京都本店(左京区)
6カ国13団体の生産者とともに作ったフェアトレードの衣料品を販売。ギフトラッピングに再利用できる布バッグを使う、配送時の梱包(こんぽう)材を最低限にするといったごみ削減の取り組みも行われています。内装の随所に古民家の廃材を使っているのもその一つ。2021年には数々の取り組みが評価され、「ゼロ・ウェイスト認証」を取得しました。
店内には、生産者を紹介する写真入りのボードも。「商品が作られた背景に関心を持つところから、物を大事にする気持ちが生まれると思うんです。購入した方には、長く着てもらえるようケア方法をお伝えしています」(広報担当・牛嶋麻里子さん)
■シサムコウボウ
https://totoya-zerowaste.com/
1.Refuse[ごみになるものを買わない]
ゼロ・ウェイストの第一歩は、レジ袋のようなごみになるものを購入しないことです。「何も意識していないと、不要な商品まで手に取ってしまいがち。買い物を見直して、本当に必要なものだけを買うようにしましょう」と小谷さん。「試供品やおまけも不要なら断って。贈答品などを簡易包装にするのも一つの方法です」
2.Reduce[ごみを減らす]
次のステップが、ごみになるものを減らす行動です。「量り売り店の利用も一つ。また、できる限り詰め替え用の商品を買えば容器ごみを減らせます。物をレンタルやシェアするのも、将来のごみ削減になりますね。食材を買いすぎない、料理を作りすぎない、作ったら食べ切ることも心がけましょう」
京都府では、食品ロス削減のため「食材別使い切りクッキングレシピ集」を作成。さらに2022年4月からは、JR「京都」駅の地下街「ポルタ」で、賞味期限が近くなったお菓子や食品をお得に買える無人販売機「fuubo(フーボ)」の運用がスタートしました。
3.Reuse[繰り返し使う]
使い捨て商品を使わず、マイバッグやマイボトル、マイ箸などを繰り返し使うことも大切。
「洗って使えるシリコン製の食品保存袋やラップ代わりになる『みつろうラップ』も販売されています。お酒や飲料は、回収後に再利用される『リターナブル瓶』の商品もありますよ。リサイクルショップやフリーマーケットでの買い物もおすすめです」
ゼロ・ウェイストの中でも、「Reduce」と「Reuse」の「2R」は特に重視されているといいます。
京都市がマイボトルや家具・家電の〝サブスク〟を後押し
京都市では、持参したマイボトルに飲み物を入れてくれる店を「マイボトル推奨店」として登録するほか、市内に飲料水を無料で給水できる「給水スポット」を設置しています。いずれもごみ減量情報サイト「こごみネット」上のマップで場所を確認可能。
「マイボトルは持ち歩くと便利で節約になる上、デザインも豊富。お気に入りのボトルを楽しく使うことがプラスチックごみ削減につながりますよ」(京都市資源循環推進課・濱和宏さん)
2022年2月からは、家具・家電のサブスクリプション(※)サービス「CLAS(クラス)」 と連携し、利用を推進。京都市民には初月利用料の割引といった特典があるとか。「物を所有せず共有するライフスタイルへの転換を進めるための新たな取り組みです」
※商品を購入せず、定額料金を支払って一定期間、必要な量だけ利用するビジネスモデル
4.Recycle[再生利用する]
「まずはごみを出す際にしっかり分別を。見落としがちなのが雑がみです。コピー用紙や包装紙、紙袋など幅広い紙類が再生利用できるので、地域の回収拠点に出すようにしましょう。再生紙の製品を買うという選択肢もあります」
不要な衣類を引き取ってくれるアパレル店も。京都市では現在、計28店舗を「衣料品自主回収推奨店」として登録。ホームページなどに公表してサポートしています。
5.Rot[堆肥化する]
生ごみのリサイクル方法として注目されているのが、コンポスト(生ごみ処理機)による堆肥化「Rot」です。「堆肥を家庭菜園などに使うと、土に返して循環させることができます。京都では複数の団体が、落ち葉やコーヒーかすを集めて堆肥化し、農地や花壇で使っています」
紹介した「Zero Waste Kyoto 」「ゼロ・ウェイスト スーパー 斗々屋 京都本店」でもコーヒーかすを回収。買い物ついでに、気軽に「Rot」に関われそうですね。
<教えてくれた人>
同志社大学政策学部 准教授
小谷真理さん
「一つ一つは小さな行いでも、その積み重ねで社会が変わっていきます。気負わずできることからチャレンジを」
一人一人を循環の担い手に。
コンポストを広げる「ごみカフェKYOTO」
「市民一人一人が循環の担い手になってほしい」。そんな思いから、家庭用のコンポストを京都の人々に広める活動をしている団体があります。その名は「ごみカフェKYOTO」。
活動に賛同する企業や店舗を会場に、月に1度、各家庭のコンポストで作られた堆肥の回収会を開催。堆肥作りが初めての人向けにコンポストの使い方講座や販売も実施されています。
回収した堆肥は西京区大原野の染色家に届けられ、染料の『京藍』の栽培に活用。「回収会を通して、困ったときに助け合える地域のつながりを作っていくことも目的の一つです」と話すのは、代表の中田俊さん。回収会の日時や情報は、「ごみカフェKYOTO」のホームページやSNSで発信。
※Refuse(リフューズ)、Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)、Rot(ロット)
(2022年6月4日号より)
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