京都の山は、標高1000mを超えるものがなく、低山の稜線(りょうせん)が幾重にも重なるのが特徴なのだそうです。いわば〝低山パラダイス〟。新緑のシーズン、森林浴がてら低山ハイキングに出かけてみませんか? 家族で楽しめそうな低山スポットを京都山岳会に教えてもらい、実際に記者が体感してきました。
散策路でのんびり森林浴
甘南備(かんなび)山は、神南備(かんなび)神社がある雄山と三角点のある雌山という二つの頂上を持つ、双耳峰(そうじほう)。「『木もれ日の小径』『野鳥の小径』といった散策路が張り巡らされていて、四季折々の彩が魅力的な山ですよ」(京都山岳会)。
登山道入り口から舗装された管理道路をゆっくりと登って行くと、随所に案内板が設置されています。鳥たちのさえずりに耳を傾けながら、30分ほどで展望台に到着。階段を上がると、一気に視界が開けます。取材時は天気がよく、比叡山や愛宕山、小さく京都タワーも見えました。
ここから5分ほどで神南備神社へ。さらに、15分ぐらい歩くと三角点を確認。そばの藤棚は、例年、ゴールデンウイーク前ごろに開花するとか。昆虫採取や木の実拾いができる「落葉樹の森」を抜けて下山。所要約1時間30分。2~3時間かけて巡るのも楽しそうです。
■「甘南備山登山マップ」が「京田辺市駅ナカ案内所」(近鉄「新田辺」駅西口1階)に設置されています。同駅から甘南備山登山道入り口まで(徒歩約40分)の手書きの地図ももらえますよ。同案内所=TEL:0774(68)2810
巨石・奇岩がゴロゴロ!
ボルダリング青春映画「笠置ROCK!」(2017年公開)の舞台となった笠置町。「とにかく岩がおもしろい。笠置山では、ぜひ『行場めぐり』を体験してほしい」(京都山岳会)と推されて訪ねた笠置山は、最寄り駅からたったの5分で登山口に到着しました。
東海自然歩道の標識に従って、急な山道を頑張って登ること40分。頂上にある笠置寺(拝観料高校生以上300円、中学生100円)へ。かつて笠置山は修験道の修行の場として栄え、今も胎内くぐりなどの巨石・奇岩が数多く残存しています。その巨石・奇岩と史跡を回るのが、境内にある「行場めぐり」です。
順路の前半、高さ15・7mの弥勒大磨崖(まがい)仏、断崖絶壁に立つ高さ12mの伝虚空蔵磨崖仏の大きさに圧倒。名前の付いているゆるぎ石、平等石、貝吹き石などのほかにも巨石・奇岩がゴロゴロ。約30分で巡り終わったときには、修行を貫徹した気分に!
■「かさぎ探訪ナビゲーション」「ポケット版笠置旅情百科ハイキングマップ付」などがJR「笠置」駅舎内に配架されています。同駅から笠置山登山口まで徒歩約5分。
笠置山についての問い合わせは笠置町商工観光課=TEL:0743(95)2327=へ
「歩くコースを考えるのも、登山の楽しみの一つ」(京都山岳会)とのことで、低山とその界わいを巡るコースを紹介します。
山の中腹を歩いて吊り橋へ
宇治川右岸の仏徳山<通称・大吉(だいきち)山>。頂上への遊歩道は、地元で人気の散歩コースです。今回は、JR「宇治」駅から京都府立宇治公園(橘島)、宇治神社へ、宇治上神社北側の登り口から、うねうねと折れ曲がる山道を登ります。約15分で展望台へ。宇治川界わいを見下ろして、気分上々です。
下山は、琴坂へと進む道順が一般的ですが、「山の中腹を通って志津川の集落に下り、宇治川に沿って天ケ瀬吊橋へ回る道を進むと、宇治ならではの自然が満喫できます」(京都山岳会)。
そこで、展望台から少し歩いて「これより興聖寺」の立て看板を右折し、坂を下ります。下り終えたところで合流する山道に立つ標識の西笠取方面に向かって歩いていきます。なだらかな山道を進むと車道に。今度は、天ケ瀬ダム方面(標識あり)へ。自然の中、天ケ瀬吊橋を渡ります。展望台からここまで約1時間。さらに宇治橋まで約40分歩くと、京阪「宇治」駅はすぐです。宇治川で餌をとるカワウたちに出あうこともできましたよ。
■「宇治イラスト・マップ」は、JR・京阪「宇治」駅前の観光案内所でもらえます。
問い合わせは、宇治市観光協会=TEL:0774(23)3353
眺望よし、山中にある印象デザインの鳥居も
「桃山御陵」とも呼ばれる桃山陵墓地(※1)、伏見桃山城、伏見桃山城運動公園(※2)、伏見北堀公園を巡る道行き。「ここから東に足を延ばして大岩(おおいわ)山へ。頂上近くに展望所があり、天気がよければ大阪の『あべのハルカス』も望めるパノラマがすばらしいですよ」(京都山岳会)。
桃山御陵から伏見桃山城、伏見北堀公園へ(約25分)。ここから墨染通に入り、北行き一筋目の角に「深草トレイル」の地図看板が。この地点から大岩山展望所まで1300mです。ほぼ直線の車道をひたすら25分ほど登った先に、展望所があります。春がすみのなか、西山の山並みや大阪のビル群も眺められ、気分爽快でした。
展望所の下の山道を少し下りると大岩神社。堂本印象が寄進した石造彫刻の鳥居が、本殿横と参道の2カ所にあり、独特な意匠に目が奪われました。竹林を抜けて大岩街道、京阪「藤森」駅へ。
「さらに足を延ばして、伏見稲荷のある稲荷山を巡るのもおすすめ」とか。
※1 参拝時間は午前8時30分~午後5時
※2 通用口開錠時間は午前6時~午後7時
■歩き方の参考になるマップ「深草トレイル」は、伏見区役所深草支所でもらえます。
深草支所地域力推進室=TEL:075(642)3203
山は見るものがいっぱい
京都山岳会
1920年創立の京都山岳会。現在、約80人の会員がいて、ハイキングからロッククライミング、雪山まで幅広く山を楽しんでいます。天候や季節によって、同じ山でも表情が違うそう。「地層、キノコ、動物のフンなど、山は見るものがいっぱいあって、飽きることがありません」
京都山岳会
http://kac1920.com/
(2022年4月23日号より)
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