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スマホやパソコン作業 〝デジタル漬け〟から目を守るには

2021年10月8日 

リビング編集部

秋の夜長は、家でスマートフォンやタブレット、パソコンを使う時間が増えますね。そんな中、目の疲れを感じている人も多いのでは。そんな〝デジタル漬け〟から起こる目のトラブルを知り、予防・対策をしましょう。

イラスト/かわすみみわこ

教えてくれたのは

京都市立病院
眼科部長
医学博士
鈴木 智先生

近距離を見続けると、毛様体筋の緊張で疲れ目に

デジタル機器の長時間の使用は、目や体、心にさまざまな症状を引き起こすといわれています。それらの症状が「VDT症候群」。京都市立病院眼科部長の鈴木智先生が教えてくれました。

「近くを見るときは両眼が内側に寄り、ピントを合わせるために眼球にある毛様体(もうようたい)筋という筋肉が収縮して、水晶体が厚くなります。これらの動きには、副交感神経が関わっています。デジタル機器の画面を見続けると、毛様体筋が緊張して副交感神経が優位になった状態が続くため、目が重い・痛い・かすんで見えづらい、肩こり、頭痛といったVDT症候群の症状が生じやすいのです」

休息をとっても症状が続く場合は、「眼精疲労」という病気の可能性が。

最近よく聞く「スマホ老眼」も、スマートフォンを長時間見た結果、生じる老眼のような症状。「医学用語ではありませんが、毛様体筋が緊張してピントがうまく合わない状態を指すようです」

近年、子どもの近視が急増している背景にも、デジタル機器の普及があると考えられています。

気づかない人も多いドライアイ 原因はまばたきの減少や空気の乾燥

さらに、最近多いのが「ドライアイ」。「通常、人は1分間に12~13回のまばたきをしますが、集中してスマホやパソコンを見ていると、それが1分間に1~2回まで減るといわれています。すると、目から涙が蒸発する上、涙腺からの涙の分泌も減少します」。エアコンによる乾燥、コンタクトレンズの着用といった要因が重なると、より目が乾きやすい状態に。

また、涙には脂分も含まれ、涙の表面に膜をつくって蒸発を防いでいます。その脂を分泌しているのが、まぶたにある「マイボーム腺」。加齢や目の汚れなどが原因で、マイボーム腺からの脂の分泌が不足することもドライアイの一因です。

「ドライアイは、気づかずに放置している人も多いですが、悪化すると痛みが生じたり見えづらくなったりして、QOL(生活の質)にも影響します。時には眼精疲労やうつ病を引き起こすことも。ドライアイや眼精疲労が疑われる場合は、早めに眼科へ。眼科では検査をした上で、点眼薬などで治療をします」

ドライアイチェックリスト

※いずれかの症状が1~2週間以上続いている場合は、ドライアイの可能性があるので眼科医に相談を

スマートフォンやパソコンを見た後の目の疲れをやわらげ、眼精疲労、ドライアイ、スマホ老眼といったトラブルを予防するには? デジタル機器を使うときに気をつけたいことや自宅でできるケア方法を、鈴木先生に教えてもらいました。

画面を見るときは正しい姿勢で

デジタル機器を使うときには、何に気をつければいいのでしょうか。

「まずは姿勢を見直して」と鈴木先生。下のイラストのように、いすに深く座り、背中を真っすぐに伸ばして、デスク上の画面から目を30cm以上離すのが正しい姿勢。

「スマホの場合は、同様の姿勢でいすに座って手で持ち、目から30cmほど離して見ます。首を曲げてのぞき込んだり、寝転がったまま見たりしないようにしましょう」

目を続けて酷使しないことも重要。アメリカでは、20分間近くを見た後に、20フィート(約6メートル)以上離れたところを20秒間見るという「20・20・20ルール」が推奨されているとのこと。

「ぜひ取り入れてほしいルール。子どもの近眼対策にもなります。パソコン作業をする場合は、1時間につき10~15分の休憩を挟みましょう」

めがね、コンタクトで気を付けたいこと

近視の人は、遠くがよく見える度数でめがねを作るのが一般的ですが、そのめがねで近くを見続けると、ピント調節のために毛様体筋に負担がかかるといいます。

「遠距離用のめがねとは別に、自分がよく見る距離に合わせた近業用のめがねを処方してもらうことをおすすめします。

また、強い乱視だと目が疲れやすくなります。眼科で検眼をし、合うめがねを作るといいですね」

コンタクトレンズを着けている人は、角膜の知覚が低下して涙の分泌が減るため、ドライアイになりやすいそう。

「特にソフトコンタクトレンズは、レンズが涙を吸収する上、レンズ表面の涙が蒸発しやすく、装着しているだけで目が乾きがち。コンタクトレンズを使う場合は、必ず取り扱い方法を守り、帰宅したらすぐ外すなど、装着時間を短くする工夫を。異常がなくても定期検診を受けてください」

あったかアイマスクでリラックス

「疲れ目の解消には、約40℃でまぶたを10分ほど温める方法が有効。マイボーム腺に固まった脂が詰まっている場合は、温めると脂が溶け出してドライアイが緩和される可能性も。蒸しタオルだとすぐに冷めて、気化熱でかえって冷えてしまうので、市販の蒸気が出るタイプのアイマスクを使うのがおすすめ。タオルを使う場合は、お湯に浸して絞ったタオルをラップかポリ袋に入れて使うなど、温度を下げないように」(鈴木先生)

くぼみを押してマッサージ

「デジタル機器を使った後や、仕事の休憩時間に目の周りの神経の出口をマッサージすると、眼精疲労やスマホ老眼の予防になります」(鈴木先生)

1

眉頭の少し下の骨がくぼんでいるところを、両手の親指で上に押し上げるように3秒ほどプッシュ

2

目の下にある骨のくぼみを、両手の人さし指と中指で3秒ほどプッシュ

12を眼球を押さないように気をつけながら、心地よいと感じる程度の強さで数回繰り返します

40歳からは「アイフレイル」予防を定期的に眼科検診を受けましょう

年齢を重ねると何かと体の不調が増えてきますが、「フレイル(回復できる未病の状態)」のうちに適切に対処することで重症化を防ぐことができます。眼科分野でも「アイフレイル」予防が重視されているとか。

「40歳以上の人は、症状があるときはもちろんですが、年に1回は眼科で検診を受けましょう。目の不快感や見えにくさは、眼精疲労やドライアイのほか、緑内障、糖尿病網膜症など、失明のリスクがある病気の兆候かもしれないからです。『ちょっとドライアイ気味なだけ』『年のせい』と思っているとつい放置してしまうので、定期検診で早期に発見して治療することが大切です」(鈴木先生)

(2021年10月9日号より)