“新しい生活様式”を家づくりで快適に

2021年5月21日 

リビング編集部

「新しい生活様式」がスタンダードになりつつある今。より快適に過ごすための住まいのしつらえについて、専門家に聞きました。

イラスト/米光マサヒコ

昨年、厚生労働省により示された「新しい生活様式」。人との接触を減らすことが求められる中、自宅で過ごす時間は増加傾向に。読者にアンケートを行うと、「ここ一年で住まいに不便を感じている」という声が多数挙がりました。

「人々の暮らし方が変われば、求められる住宅も変わります」とは、京都橘大学工学部建築デザイン学科専任講師の半海宏一さん。読者の〝困った〟を解決する、これからの家づくりについて教えてもらいました。

花粉やウイルスが気になる…

玄関周りにひと工夫

「手洗いや入浴前に、家の中でウイルスを広めてしまわないか」。多くの読者が心配している点の解決案として、「玄関に入ってすぐに手洗い場を設ける住宅が増えています」と半海さん。あちこち触れる前にさっと手が洗え、来客時にも便利ですね。

「また、玄関周りに家族みんなのコートやかばんなどがしまえる収納スペースがあれば、外で付着したほこりや花粉、ウイルスなどをリビングに持ち込まずにすみます」

同様の理由で、宅配便や梱包のダンボールを置ける土間スペースを設けることも。

戸建てにも宅配ボックス

不在時でも宅配便などが受け取れるセキュリティー機能付きの宅配ボックス。マンションに多く見られましたが、戸建てでも玄関先に設置する人が増加しているそう。ネットショッピングをする人が増えて、ニーズが高まっているようです。

洗濯の手間をどうにかしたい

〝家事室〟を設けてスムーズ

「洗濯物が増えて、干したり片付けたりが大変」という読者に知ってほしいのが〝家事室〟。

半海さんによると、「浴室に続く脱衣室、洗面所のスペースは近年、家事室(ユーティリティールーム)として広めに設計されることが多くなりました」とのこと。タオルや衣類の収納、アイロンがけのスペースも作れば、脱衣から洗濯・乾燥・収納まで一室で完結。

「キッチンでいうと、食料などまとめ買いしたものを置ける広いパントリーが人気です。家事室とキッチン、パントリーを動線でつなげれば、家事がより効率的に」

屋外干しは減少?

サンルームなどで屋内干しをする人が増えているよう。「花粉やウイルスが衣類に付くのを防ぐため」という声のほか、「共働きで夜に洗濯を行う家庭が多いことも一因。乾燥機も多く活用されています」(半海さん)。

自宅でもアウトドア気分を楽しみたい

テラスアウトリビングで外を感じて

自宅でも屋外を感じるスペースがあれば、より楽しく過ごせそう。「テラスやサンルームを設けてみては。それらを一体化して造る場合もあります」と半海さん。

「アウトリビング」として、リビングと続きでウッドデッキや広めのバルコニーを設けても。「バーベキューをしたり、風を感じつつ朝食を食べる、といったこともできますね。庭に植栽をほどこせば、緑が近隣からの目隠しになります」

1人になれるスペースがほしい!

個室が無理ならコーナー

「在宅ワークのためのスペースがほしい」といった声のほか、多かったのが「家族が家にいることが増え、一人になれる空間がない」という意見。個室が作れれば解決ですが、難しい場合は「キッチンやリビングの端に、座って作業できる趣味や仕事のコーナーを設けて。廊下や階段下などのスペースを活用しても」(半海さん)。新築の場合、「リビングとダイニングを少しずらした造りにすれば、それぞれの部屋で視線を合わせず過ごせます」。

スペースの兼用を

「部屋を兼用で使うのも方法の一つ」と話す半海さん。「昼は寝室の一角、夜はリビングで仕事をするなど、他の家族が使っていないところの利用も考えてみては」

おうち時間が増えると光熱費が…

気密性アップで省エネ

省エネ家電などもありますが、家づくりでいうと気密性の向上が重要なポイントに。「窓には耐熱性の高い複層ガラスを用いる、壁や床下、天井には隙間なく断熱材を入れるなどの対策を」。冷暖房の効きがよくなれば光熱費も削減できますね。

一定の省エネ性能を満たす家の新築などに対しポイントが付与される「グリーン住宅ポイント制度」にも注目。ポイントは対象の家具・家電、食料品などと交換できます。申請締め切りは10月31日(日)まで。詳しくは国土交通省のホームページ=https://greenpt.mlit.go.jp/=へ。

家族単位だけではなく個も大切にした家を

外出しづらいこともあり、家族の団らんの時間は持ちやすくなりました。「しかし、家族といえど一人一人の人間。家の中で〝個〟でいられる場所も大切です」と半海さんは話します。

「リビングとダイニングを別空間にする、個室や趣味に没頭できるコーナーやテラスを設けるなど、いっとき一人になれる〝隠れ場所〟が自宅に数カ所あれば、家族の息遣いを感じつつゆったり過ごすことができると思いますよ」

教えてくれたのは

京都橘大学工学部
建築デザイン学科専任講師
半海宏一さん

大学では「建築設計」「住居論」を教えるとともに、一級建築士として住居、店舗、駅などを多数設計

「リビング京都」特別編集
京都でかなえる家づくり2021年度版

京都リビング新聞社では、5月31日(月)に、「リビング京都」特別編集の住宅本「京都でかなえる家づくり2021年度版」を発行。地元・京都で活躍している工務店や設計事務所の数々の施工例を掲載しています。本・送料とも無料で自宅にお届け。限定5000冊。詳細は「京都でかなえる家づくり」へ。

(2021年5月22日号より)