【コレ読んで!】水上バス浅草行き

2023年9月29日 

リビング編集部

京都の書店員やカフェ店主がおすすめの本を紹介。
すてきな一冊に出あえそう!

水上バス浅草行き
岡本真帆 ナナロク社(1870円)

日常の中にひそむ いとおしい瞬間

〈平日の明るいうちからビール飲む ごらんよビールこれが夏だよ〉

著者の第一歌集である本書では、情景が浮かぶしあわせだったり切なかったりする場面が自在に視点を変えて詠まれる。

〈パスワードの中に犬の名住まわせて打ち込むたびに君に会いたい〉
〈うんまいときみが唸った うんまいの「ん」はおそらくバターの部分〉

パスワードに入れたキーワードが、実は打ち込むたびに大切なものを思い出すためのものだったこと。思わず出た言葉に、その対象の特別な部分があふれ出ていたこと。
人生を左右することはないかもしれないが、そんないとおしい瞬間で毎日は確実に豊かになるだろうと思わせてくれる。

■本の紹介者
マヤルカ古書店
なかむらあきこさん
 
http://mayaruka.com/

(2023年9月30日号より)