【コレ読んで!】希望のゆくえ

2020年6月5日 

リビング編集部

京都の書店員やカフェ店主がおすすめの本を紹介。
すてきな一冊に出あえそう!

希望のゆくえ
寺地はるな 新潮社(1650円)

さまざまな印象を抱かせる弟の真実の姿とは

放火か事故か、とにかくぼや騒ぎに関わった可能性のある弟・希望(のぞむ)が姿を消した―。兄の誠実(まさみ)が、面倒なことに巻き込まれていくところから物語は始まります。

女性と失踪してしまった弟の行方を捜し、関係のあった人々を訪ねますが、それぞれが語るのはまるで異なる弟の印象。弟はどこにいるのか、一体どんな人間だったのか…。人々の記憶と思いが交錯します。

実の息子に「希望さん」とよそよそしい呼び方をする母と、疎遠になってしまってから目にした弟の生活を悲観しつつも、兄らしいことをしてやりたいという誠実の思い。
何とも表現しがたいですが、リアルな描写が読む手を止めません。

■本の紹介者
大垣書店四条店
小林素紀さん

https://www.books-ogaki.co.jp/

(2020年6月6日号より)