京都の書店員やカフェ店主がおすすめの本を紹介。
すてきな一冊に出あえそう!
歌人がエッセーでつづる〝ともだち〟との日々
「ぼた雪の降る様子を『もっつもっつ』とあらわす方言があるので岩手に住んでいてよかった」
この一文だけで、太平洋沿岸で育ち、雪といえばただ〝雪〟である私は「もっつもっつ」と降る雪を感じに岩手に行きたいと思う。
歌人である著者の周りには抱きしめたくなるような〝ともだち〟とシーンが東北の澄んだ空の星たちのようにキラキラと存在する。
失恋して喪服でラーメン屋に来たミオ、〝ウニの上〟で働くおりょう、たまたま見かけたナンパ現場の思わぬ結末。
今すぐ忘れたいほどの失敗も喜びも、著者の言葉の前では等しくいとおしく、心地よい。日々の一瞬一瞬、一言一言を大切に書き留めたくなるようなエッセー。
■本の紹介者
マヤルカ古書店
なかむらあきこさん
http://mayaruka.com/
(2020年6月6日号より)
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