【コレ読んで!】うたうおばけ

2020年6月5日 

リビング編集部

京都の書店員やカフェ店主がおすすめの本を紹介。
すてきな一冊に出あえそう!

うたうおばけ
くどうれいん 書肆侃侃房(1540円)

歌人がエッセーでつづる〝ともだち〟との日々

「ぼた雪の降る様子を『もっつもっつ』とあらわす方言があるので岩手に住んでいてよかった」

この一文だけで、太平洋沿岸で育ち、雪といえばただ〝雪〟である私は「もっつもっつ」と降る雪を感じに岩手に行きたいと思う。
歌人である著者の周りには抱きしめたくなるような〝ともだち〟とシーンが東北の澄んだ空の星たちのようにキラキラと存在する。

失恋して喪服でラーメン屋に来たミオ、〝ウニの上〟で働くおりょう、たまたま見かけたナンパ現場の思わぬ結末。
今すぐ忘れたいほどの失敗も喜びも、著者の言葉の前では等しくいとおしく、心地よい。日々の一瞬一瞬、一言一言を大切に書き留めたくなるようなエッセー。

■本の紹介者
マヤルカ古書店
なかむらあきこさん

http://mayaruka.com/

(2020年6月6日号より)