【コレ読んで!】首里の馬

2020年9月11日 

リビング編集部

京都の書店員やカフェ店主がおすすめの本を紹介。
すてきな一冊に出あえそう!

首里の馬
高山羽根子 新潮社(1375円)

沖縄で暮らす孤独な女性が出合ったのは一頭の迷い馬

物語の舞台は沖縄。かつて何度も権力者の争いに巻き込まれた島であり、台風が来る度に影響を受ける町でもある。

登場するのは淡々と暮らす孤独な人たち。資料館を建てた順さん。誰もいないオフィスで働く主人公の未名子。パソコンの向こう側の通信相手。そして電気屋の主人。
黙々と生きることは企業や社会にとっては扱いやすく都合がいい。みんな少しずつ誰かとつながりながら孤独に生きている。そんな日々を突然現れたおとなしい馬がゆがませる。

社会のしくみと離れて〝いま〟見る景色は、自分にしか見られない風景に変わり、記録されてゆく。
いま、ここで、私が目にしたささやかなものを大切にしようと思う一冊。

■本の紹介者
開風社 待賢ブックセンター
鳥居貴彦さん

http://kaifusha-books.com/taiken/

(2020年9月12日号より)