嵐山の秘境に建つ大悲閣千光寺

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KAROプロフィール
2023年12月1日 

コロナ禍も落ち着き、嵐山はまた世界中の観光客で混雑するようになりました。渡月橋から保津川沿いを上流へ約1キロほど歩いたところに、嵐山の賑わいが嘘のような静かで神秘的な景色が広がっているのを御存知ですか?私もコロナ禍になってからその存在を知り、それ以来とても気に入って何度も訪れている場所です。今回はそんな嵐山の秘境、保津峡を臨む断崖に建つ小さなお寺「大悲閣千光寺」をご紹介します。

保津川沿いに川上へ徒歩1キロで着く秘境

千光寺は、渡月橋の南から保津川沿いを川上へ徒歩15分ほど歩いた先にあります。道中は人も車もほとんど通らない静かな道です。

車一台通るのがやっとの細い道を奥へ奥へと進んで行きます。

川沿いの道の終点から更に上へと登って行くと、千光寺の参道に出ます。大悲閣千光寺は、江戸時代の豪商 角倉了以(すみのくらりょうい)が、大堰川(保津川)を開削する工事で亡くなった人々を弔うために、嵯峨の清凉寺近くにあった千光寺を移転し建立させたものです。源信の作と言われる千手観音菩薩像を本尊としています。

ここから更につづら折れの石段をしばらく登っていきます。ちょっとした山登り気分が味わえますよ。渡月橋から約15分歩いた後なので、「まだここから登るの?」とちょっとひるみますが、10分ほど石段を登ると山門に到着。その奥の鐘は一人三回まで無料で撞くことが出来ます。私の前を歩いていた外国人二人連れも順番に鐘を撞いていました。静かな山に荘厳な鐘の音が響き渡ります。体の奥にまで響くその音を聞いていると、しみじみと厳粛な気持ちになりました。

鐘楼の横から上を見上げると、切り立った岩肌に建つ舞台造りの観音堂(客殿)があります。清水の舞台のミニチュア版のようで可愛らしいですね。この観音堂は大悲閣と呼ばれるため、千光寺自体も「大悲閣」とも呼ばれています。

保津川の対岸にある亀山公園の展望台から撮影。写真左上 山の中腹に黄色いイチョウの木があり、その斜め下にあるのが大悲閣千光寺です。

大悲閣からの眺めはまさに絶景

さっそく境内にある大悲閣へ入って行くと、畳敷きの部屋になっています。様々な資料が並び、気に入った資料のコピーは自由に持ち帰って良いそうです。そして、その奥には嵐山の絶景が楽しめるテラスがあります。

大悲閣からの眺めがこちら。カエデは赤く色づき、保津峡の深い碧色との対比が鮮やかです。大悲閣の周囲は本当に静かで、聞こえてくるのは風の音と時折さえずる鳥の声だけ。この畳敷きの部屋で写経をしたり、坐禅を組んだり、時には昼寝をしたり(笑)一日過ごす方もおられるとか。机の上に雑記帳が何冊も置いてあり、外国語の書き込みもたくさんありました。私が確認できただけでも、ロシア、中国、香港、ベトナム、タイなどの様々な言語で思い出が綴られていたようです。

  遠く比叡山や大文字山、手前には双ヶ丘、写真には写っていませんが京都タワーも見えました

こちらは千光寺を創建した角倉了以(1554~1614)の木像です。了以は私財を投じ、京都の大堰川や高瀬川の開発を行った豪商で、京都経済の発展に大きく貢献しました。また晩年はこの大悲閣からの眺めを愛し、こちらに隠棲していたそうです。了以の像は法衣姿で石割斧を持ち、片膝を立てて太綱の上に座し、今も大悲閣で川の安全を祈っています。

看板犬「すみれちゃん」にも癒されます

私がこの大悲閣を参拝するときに楽しみにしていることがもう一つあります。それは看板犬「すみれちゃん」に会うこと。この日、境内をさっと見渡しましたが姿が見えなかったので、ご住職にすみれちゃんの所在を尋ねたところ「ああ、元気ですよ。まだ寝てるかな?」と言って、奥からすみれちゃんをかごに入れて連れて来てくださいました。御年15歳のおばあちゃん犬なので、だいぶ動きが緩慢でしたが、それでもご住職からエサをもらって元気に食べていました。いつ来ても、のんびりマイペースなすみれちゃんを見ていると、忙しなく過ごす日常をしばし振り返り、もっと丁寧に心穏やかな時間を過ごしたいな、と思います。どうか元気で長生きして、参拝者を癒し続けて欲しいと思います。

千光寺は英語がお得意なご住職のおかげか、コロナ禍以前から日本人より外国人参拝者の方が多いそうです。でも、こんな絶景を見ずに嵐山を後にするのは勿体ないと思いませんか?
今回は紅葉の時期の様子をご紹介しましたが、次は雪景色か、春の桜を見に行きたいと思いました。

大悲閣千光寺

京都市西京区嵐山中尾下町62
TEL:075(861)2913
https://daihikaku.jp/
拝観時間等はHPから確認を

プロフィール

KARO

在住エリア:京都市右京区
メインテーマ:知っているようで知らなかった京都のあれこれ/食に関すること
お散歩をきっかけに、近くにあるのに詳しく知らなかった素敵なスポットを再発見。寺社仏閣や公園、美術館、古墳など、京都の古くて新しい魅力を発信していきます。
料理が大好きなので、カフェやレストランなどの食に関する取り組みなどもご紹介していけたらと思います。