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【お店の食品ロス削減レポート】軒下青果店などで、余った野菜の新たな循環を創る西喜商店

WEBフレンド

KAROプロフィール
2023年12月21日 

こんにちは。WEBフレンドのKAROです。

京都市には飲食店や食品小売店等の「食品ロス」を削減し、生ごみの減量に取り組む「食べ残しゼロ推進店舗」があります。今回、京都リビング新聞社と京都市がタイアップし、こうしたお店の取り組みを紹介するということで、WEBフレンドの私も取材に参加しました。

中央市場の近くで、おいしい野菜を普段使いできる価格で提供

向かって左が店主の近藤貴馬さん、右が社員の海部登生さん

今回訪れたのは、京都で90年以上の歴史を誇る青果店「西喜(にしき)商店」。店主の近藤貴馬さんは四代目。都内企業での営業職などを経て、2015年にUターンし、実家の西喜商店を継がれました。お父さんの代では業務用配達に集中されていましたが、貴馬さんの代になって小売りを再開。現在は小売り、業務用配達に加え、ネットショップも手がけておられ、取り扱う野菜や果物は近くの京都市中央卸売市場からの仕入れが9割、残りの1割は信頼する生産者からの仕入れです。美味しい野菜を普段使い出来る価格で提供することを心がけているとのこと。

市場から徒歩2分の西喜商店は、近くにKRP(京都リサーチパーク)のビル群もある七本松通では異色の青果店。地域の方にもしっかり認知されているようで、取材中にも近所の人と思われるお客さんが徒歩で何人か来店されていました。

軒下青果店で、流通過程で余った野菜をより多くの人へ届け、食品ロスを削減

小売り再開後、「需要より多くの野菜が市場に供給されると、余った野菜は廃棄せざるを得ない」という流通の仕組みに気づいたという近藤さん。規格外品だけではなく、規格品のきれいな野菜も廃棄するうちに、ふともったいないと思ったことから、廃棄を減らし、適正な価格で誰かに食べてもらえる新しい循環を作りたいと思うように。

そんな折、以前から親交のあった、京都カルチャーを体験できる複合施設「マガザンキョウト」から「野菜を売りたい」と声がかかりました。これが、西喜商店の新しい仕組み「軒下青果店」の始まり。異業種の店先に青果販売ブースを設置して、西喜商店の野菜や果物を販売してもらうというものです。

住宅街にあるマガザンキョウトは、施設の軒下で野菜を売ることで、食品ロスの課題に取り組みながらご近所の方の役にも立てるかもしれない!と考えたそうです。スーパーなどが近くに無い「買い物難民」だった地域の方は、軒下青果店に毎週届く新鮮な野菜を買えるようになり、ここに地域の人が集まることで新たなコミュニティも生まれました。西喜商店としても余ったもののまだ新鮮な野菜を買ってもらうことで食品ロス削減になり、みんなにとってメリットが!

そこでこの仕組みを広めようと、昨年クラウドファンディングを実施。その結果1ヶ月ほどで目標を超える金額が集まり、軒下青果店の店舗もカフェ、小売店、レンタルスペースなど2023年11月時点で5店舗に増えました。

軒下青果店の一つ「マガザンキョウト」は二条城の北側 住宅街の中にあります。
画像提供:西喜商店

マガザンキョウトの軒下青果店により、2年間で約700kgの野菜が救われたそうです。一般的な野菜の段ボール箱は約10kgなので、それが70箱分、まさに「塵も積もれば山となる」ですね。余ったから安く買う、ではなく適正な価格で買える機会を広げる地道な取り組みの大切さを実感しました。

また、お店の食品ロス削減の取り組みが評価され、令和5年度に、京都市の「京都環境省」の特別賞(循環型社会推進賞)を受賞されました。

賞状を掲げる近藤さんと海部さん
画像提供:京都市

「さらえるキッチン」や「覚悟の食品ロス削減野菜ボックス」などで食品ロスの実情を知ってもらいたい

西喜商店では、その他にも様々な食品ロス削減の活動を行っています。食品ロス寸前の余った野菜を使って、美味しく楽しく参加者みんなで調理し食べる「さらえるキッチン」や、その日買い手がない規格野菜を15種類ほど詰め合わせた「覚悟の食品ロス削減野菜ボックス」の宅配なども手がけています。

この「覚悟」には「どんな種類の野菜が届いても食べきる覚悟を持てる人へ」という消費者へのお願いと、「採算度外視でも食品ロスを減らす」というお店の覚悟という2つの意味が込められているとのこと。

「覚悟の食品ロス削減野菜ボックス」や、お買い得の野菜情報などは西喜商店のSNSからチェック

食品ロス削減というと、余った野菜を子ども食堂に安く提供する活動を思い浮かべがちですが、西喜商店が食材を提供している子ども食堂は1か所のみ。というのも、余った野菜はその日その日で種類も量も違うので、それらを臨機応変に活用して子どもが好きな料理に仕上げるのには、調理する人の腕が相当問われるのだとか。特に葉物野菜は傷みやすく食品ロスになりがちですが、子どもは葉物野菜をあまり食べないので、子ども食堂に提供しても使うのが難しいようです。カレーに適したじゃがいもや玉ねぎがいつも余っているわけではないですよね。

子どもが苦手な野菜も美味しく調理し、みんなでたくさん野菜を食べることが食品ロス削減につながるのかも

流通の仕組みを正しく理解し、正しく買うことが食品ロスを減らす

食品ロス削減というと、傷んだりした野菜を安く買うことだと思っていましたが、新鮮な野菜も日々余って大量に廃棄されているという現実は、ほとんど意識していませんでした。

今年は猛暑で夏野菜の価格も高騰していましたが、そんな中でも安定した価格で買える野菜もありましたね。「『野菜が高い』と嘆くのではなく、その時安く買える野菜を買って美味しく食べることが、食品ロス削減にとって一番大事。そんな精神を多くの人に知ってもらいたいと思って地道に活動しています」と社員の海部さんは言います。

軒下青果店の野菜を買いたいなあとも思いましたが、私の自宅の徒歩圏内に4軒もあるスーパーから食品ロスが出ないように、それらのお店から野菜を買って、美味しくいただくことが大切だと気づきました。そして、このような食品ロスが生まれる仕組みと、私たちが出来る食品ロス削減の方法を家族や友人にも伝えていきたいです。

西喜商店

京都市下京区朱雀分木町市有地(七本松花屋町南東角)
TEL:075(314)5034
https://nishikisyouten.com/store/
営業時間等はHPから確認を

京都市食品ロスゼロプロジェクト

http://sukkiri-kyoto.com/

プロフィール

KARO

在住エリア:京都市右京区
メインテーマ:知っているようで知らなかった京都のあれこれ/食に関すること
お散歩をきっかけに、近くにあるのに詳しく知らなかった素敵なスポットを再発見。寺社仏閣や公園、美術館、古墳など、京都の古くて新しい魅力を発信していきます。
料理が大好きなので、カフェやレストランなどの食に関する取り組みなどもご紹介していけたらと思います。