源氏物語の世界へタイムスリップ!「風俗博物館」へ

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KAROプロフィール
2023年11月17日 

2024年のNHK大河ドラマは『源氏物語』の作者 紫式部が主人公とのこと。ドラマの中で平安時代の絢爛豪華な装束や季節に合わせた美しい調度品や装飾が見られるのを楽しみにしています。

平安時代の王朝貴族の風俗や装束を四分の一のサイズで精巧に再現し、展示している「風俗博物館」という博物館があると知り、『源氏物語』を描いた大和和紀のマンガ『あさきゆめみし』が大好きな私は「是非見に行かねば!」と思い訪ねてみました。

場所は西本願寺の斜め向かいのビルの5階

場所は市バス「西本願寺前」の停留所の近く、西本願寺の一番北あたりの堀川通の向かい側のビルです。出入り口に案内がなかったので「多分ここかな?」とそれらしきビルに恐る恐る入って行くと…ありました!エレベーター手前のロビーに「風俗博物館」の小さな案内看板が。ホッとしてエレベーターで5階へ上がります。

エレベーターが5階に到着しドアが開くと、いきなり平安時代の人形たちの世界が広がっていました。

さっそく入館料を払い、見学スタートです。嬉しいことに、館内は写真撮影OKとのことでした。

平安貴族の華やかな装束や暮らしをリアルに再現

風俗博物館は1998年のリニューアルで、装束が生活の中でどのように使われてきたかを見ていただくため『源氏物語』の様々なシーンを選び、四分の一の縮尺で展示されています。

今年の11月11日までは「貴族社会の権力抗争を文学で支えた紫式部、史実に裏付けられた『源氏物語』虚構の美」と題し、平安時代の貴族たちの服飾の流れを人形や調度品などで立体的に表現されていたそうです。

一番大きな展示は、藤原道長が「この世をば我が世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば」という有名な和歌を詠んだ場面の再現です。この歌は、道長の三女威子(いし)が天皇の中宮(皇后)になることが決まったお祝いの宴で、道長が自分の栄華を誇って詠んだ歌とされています。

宴の会場となった藤原道長の寝殿の簀子縁(すのこえん)には時の右大臣、左大臣や多くの公卿が座り、庭には多くの楽人がお祝いの音楽を奏で、まさに王朝絵巻さながら

旧暦の9月9日の重陽の節句は、日本では菊の節句とも呼ばれます。9月8日の夕方に綿を菊の上にかぶせ、その菊の露に濡れた綿で9日の朝に肌を撫でると、老いを棄てるという習慣があったとか。写真は藤原道長の正妻から紫式部に菊の着せ綿が贈られた場面。紫式部は、藤原道長の長女で中宮になった彰子の教育係の女房(女官)でした。

偏(へん)と旁(つくり)に分かれた札を使った遊びが「偏つぎ」です。漢字の旁に偏を付けて文字を完成させるもので、主に女性や幼い子どもが漢字の知識を競い合ったそうです。平安時代の人々も、こんな知的なゲームを楽しんでいたのですね。

このように、衣裳や調度品や小物類にいたるまで一つ一つ本当に丁寧に作られており、平安貴族の生活がリアルに再現されています。その美しさ、繊細さにはため息が出そうでした。私の後に来館された女性二人組も『源氏物語』のファンだったようで、展示品をじっくり眺めながら嬉しそうに語り合ったり、一眼レフのカメラで熱心に撮影されたりしておられました。

平安王朝の美意識を感じる四季の「かさね色目」

平安時代には、日本特有の移ろいゆく四季の彩りを色目として表現する文化が登場。「かさね色目」は、一枚の装束で異なる表地と裏地の重なり具合で楽しんだり、幾枚も重ね着をした装束の襟もとや袖口に見られる色のグラデーションやコントラストで楽しむなど、多くの平安貴族の装束に用いられました。

展示では四季折々の自然の美を色の重ね方で細やかに表現した様々な「かさね色目」を紹介。その色合わせの妙に表れた平安時代の人々の美意識の高さは、同じ日本人としても誇らしく、いつまで見ていても見飽きない美しさでした。

左:桜かさね(表地が白で裏地が赤。表地の白色に裏地の紅がほのかに透けた様子が、夕暮れ時の桜の美しさを象徴しています。)
右:若菖蒲かさね(菖蒲の花ではなく根と葉の色の対比を表現。緑の葉先から根に近づくに従い白くなり、根本は鮮やかな紅梅色、白く長い根などの色を表現)

千年の時を超え平安時代の世界を体感

『源氏物語』の立体展示の他に『竹取物語』の一場面を再現したものや、実物大の十二単の女房装束、草木染と化学染料の違い、衣裳や装飾などに使われた文様などの展示もあり、それぞれに詳しい解説がついているので、千年前の平安時代の世界観をつぶさに体感することが出来ます。ビルのワンフロアのみですが、私はじっくり見て回ったので、全て見終わるまでに一時間ほどかかりました。『源氏物語』を始めとする古典や歴史好きの人はもちろんのこと、そうでない方も十分に楽しめる展示が多数揃っています。半年に一度展示替えが行われるようですので、また別の時期にも訪ねて、源氏物語の世界に浸ってみたいと思います。

風俗博物館

京都市下京区堀川通新花屋町下る(井筒左女牛ビル5階)
TEL:075(342)5345
https://www.iz2.or.jp/
開館時間等はHPから確認を

プロフィール

KARO

在住エリア:京都市右京区
メインテーマ:知っているようで知らなかった京都のあれこれ/食に関すること
お散歩をきっかけに、近くにあるのに詳しく知らなかった素敵なスポットを再発見。寺社仏閣や公園、美術館、古墳など、京都の古くて新しい魅力を発信していきます。
料理が大好きなので、カフェやレストランなどの食に関する取り組みなどもご紹介していけたらと思います。