「美は生活の中にある」と唱えた民藝(みんげい)運動の芸術家たちの作品に初めて出合ったとき、安らぎと心地よさを感じ、河井寛次郎さんの作品に心惹かれました。「あなたならきっと気に入るから絶対に行っておいで」と友人にも勧められていた「河井寛次郎記念館」に、ようやく行くことができました。
寛次郎さんのお宅が丸ごと記念館
陶芸家が多く集まる五条坂近くにある河井寛次郎記念館は、生前寛次郎さんが住まわれ、制作もされていたお宅。館内いたるところで作品と蒐集品が観られるため、寛次郎さんの魅力がいっぱい詰まった記念館なのでした。
河井寛次郎さんというと、私が美術館で良く拝見するのは陶芸作品なのですが、館内では木彫作品も多く、それぞれの場にしつらえられた寛次郎さんデザインの椅子が目を惹きました。
さりげなく置かれた椅子の座り心地の良さに驚きました。柔らかな曲線を描いた形はお尻にフィットし、木の幹に包み込まれているような安定感です。
ところどころにあったベンチも、微妙な傾斜がついていて座り心地が良いのでした。
生活感のある調度品が心地よい
館内は1階、2階とあり、登り窯や中庭なども鑑賞でき、広い敷地内を来館者はそれぞれのペースでゆっくりと鑑賞できました。作品が置かれている各室内も見どころが多いのですが、窓から中庭を眺めたり2階から部屋を見下ろしたり、様々な角度から鑑賞できるのも醍醐味ですね。
ここで書き物をされたのかな?窓辺の椅子と机は寛次郎さんの暮らしぶりを連想させ、ついさっきまでそこに座られていたかの様な生活感を感じました。壁にかかった拓刷りの作品で、寛次郎さんの書が拝見できましたが、特徴的な文字も一つのデザインのよう。
調度品は経年により日焼けや摩耗もあるのですが、全体の統一感やバランスのよさ、使い込まれた艶感や角の取れた円やかさのようなものが心地良く、「用の美」を感じるのでした。
陳列ケースには、作品だけでなく、愛用されていた品々もお写真と共に並べられていました。
室内の調度品と窓の外のグリーンが、どこを切り取っても美しく、それを眺めていると、いつもよりも時間がゆっくりと流れるような、落ち着いた静かな気持ちになってゆきました。
制作室には陶芸作品と共に、学生時代の直筆のノートや釉薬の試作が並び、制作過程の一端に触れることもできました。
初めて見た登り窯
登り窯を見ることができるのも貴重な機会でした。火度を1350℃にするため2000束の松の割り木を使い、近所の20軒と共に使用したそうで、大きな窯でした。私は初めての登り窯見学でしたので、窯の内部までしっかり見させていただきましたよ。
感動の気持ちを忘れなかった寛次郎さん
「驚いている自分に驚いている自分」という寛次郎さんの言葉があります。私たちは美しいものや素晴らしいものに感動するけれど、そんな感動の気持ちが持てるということも、大切にしなければなと気づかされる言葉です。
寛次郎さんは、生涯を通じていつも子供のように感動する心を持ち続けていらっしゃったそうです。
そんな河井寛次郎さんに倣って私も、幾つになっても、美しい光景や作品に感動する心を持ち続けたいものです。
河井寛次郎記念館
京都市東山区五条坂鐘鋳町569
TEL:075(561)3585
http://www.kanjiro.jp/
開館時間等はHPから確認を
プロフィール
大好チヨ子
在住エリア:京都市西京区
メインテーマ:博物館などのアートイベント/パン屋さん
子育てを終えて、ようやく京都歩きを楽しめるようになりました。知識がない私でも「楽しい!美味しい!美しい!面白い!」と感じたり「知っていたらお得」な情報をゆる~く伝えてゆきたいです。趣味はドラム演奏と、博物館ボランティア。
最新の投稿
おすすめ情報
- カルチャー教室
- アローズ
- 求人特集
- 不動産特集
- 京都でかなえる家づくり
- 医院病院ナビ
- 高齢者向け住宅 大相談会
- バス・タクシードライバー就職相談会in京都
- きょうとみらい博