
デジタル機器が普及しても、まだまだアナログの文房具は健在。その魅力や、はやりについて、京都の文具メーカーや雑貨店に聞きました。各店の担当者や読者に、愛用しているアイテムも教えてもらいましたよ。
写真/桂伸也ほか
あたたかみのある紙製品は思いを伝えるのにぴったり
京都は和文具店も多数。1953年創業の「嵩山堂(すうざんどう)はし本」は、日常使いできる便箋やはがき、冠婚葬祭用の金封、書道用品などの紙製品を扱っています。
「当店のお客さまは手紙を書くことが習慣になっている人が多いですね。書道用品の需要は減少傾向ですが、便箋などは変わらず購入されています」とは、同社社長の田中利男さん。
最近は、従来の祝儀袋にちょっとしたメッセージを書き添えて渡すという人が増えているそう。
「形式にとらわれすぎず、カジュアルに思いを伝えたいということでしょうか。『心ばかり』など文字が入ったポチ袋も人気ですね」
同店では、いずれも高品質な和紙を使用。
「和紙は、その質感にあたたかみがあります。時代に合わせて商品の形や用途は変わっていきますが、受けとったときに心があたたかくなるようなものを作り続けたいですね」


嵩山堂はし本
田中利男さん
「文房具を通して、日本の四季や行事を次世代に伝えていきたいです」
愛用の文房具

「ZOOM505」(トンボ鉛筆)
「万年筆とボールペンの中間のようなサラッとした書き心地。私は字が下手なのですが、線に強弱がつきやすく、上手に見えるのも気に入っています。仕事で普段使いしたり、お礼状を書いたりとかれこれ10年くらい使っていますね」(田中さん)
身近な人に〝手渡す〟一筆箋やメモが注目されています
1932年に創業した和文具メーカーの「表現社」。同社のアートディレクター・高倉英俊さんによると、近年は一筆箋やメモ帳の種類が豊富になっているとか。
「プレゼントにカードを添えたり、職場でメモを残したり。たった一言でも、手書きの文字が届くのはうれしいもの。遠くの人ではなく、身近な人に手渡せるようなものがよく売れています」
同社は、イラストレーターとコラボレーションした文房具ブランドを展開しています。
「日本にはたくさんの作家がいますが、実際に作品に触れる機会は、意識しないとなかなか作れません。そこで、多くの人が暮らしの中で自然に作品を楽しめる〝土壌〟を作りたくて」と高倉さん。
文房具イベントに出店すると、これらを購入するのは、大半が女性。ポストカードなどに描かれたイラストを切り抜き、ノートや手帳に貼ってコラージュするという楽しみ方もはやっているそう。


表現社
高倉英俊さん
「コラボしている作家から、いずれ日本を象徴するような絵が生まれるかも。文房具が、作家や作品と出会うきっかけになれば」
愛用の文房具

「コピックマルチライナー」
(トゥーマーカープロダクツ)
「20年くらい同じシリーズの黒ペンを使っています。線幅の種類が豊富で、文字を書くのも、プライベートで絵を描くのもこれ。スラスラ書けて、にじみにくいんですよ」(高倉さん)
豊富な種類から選んで〝自分だけの世界〟を表現
「今、男子中高生の間ではインフルエンサーが紹介した3000円前後のシャーペンがはやっています。また、男性は『質がよく、ちょっとよい物を持ちたい』という傾向があるようです」と教えてくれたのは、「京都ロフト」の文具雑貨フロア担当の西村由紀乃さん。
「一方、カラーバリエーションが豊富なペンは自分好みの色を選ぶ面白さがあり、幅広い年齢の女性に人気。ノートや手帳をデコレーションするための、ラメ入りペンも需要があります」
手帳は、〝複数持ち〟が今どきのスタイルだそう。自分と向き合うための日記、体調管理、推し活の記録など、目的ごとに手帳を使い分け、細々した予定はスマートフォンで管理する人も。
「手帳はあくまでツールですが、書き込む過程を楽しむ、という側面もあります。読み返したときに当時の思い出がよみがえり、いっそう愛着も湧きますね。また、お気に入りのシールやペンでページを埋め、〝自分だけの世界〟を作れるのも魅力です」とは、同スタッフの久保亜沙美さん。
「自分らしくカスタマイズした手帳やノートを、SNSでシェアする文化も生まれています。そのため、昨年はページを広げたまま固定できる、透明なクリップが人気になりました」
下記では、注目の文房具と、その使い方を紹介します

くすみカラーの筆記具
色の種類が豊富なボールペンやマーカーの中でも、特に人気が高いのがくすみカラー。かわいらしく落ち着いた色合いなので、ノートのデコレーションにぴったりです。勉強や仕事のモチベーションも上がりますね。その日の気分によって色を使い分けても。

バインダーとリフィル
バインダー型のノート。ルーズリーフやクリアポケットなどのリフィルの種類が豊富で、システム手帳のように用途に合わせて組み合わせることができます。たとえば、映画の鑑賞メモと一緒にクリアポケットにパンフレットや半券を入れて綴じれば、自分だけの映画ノートに変身。

立体シール、ステッカー
ぷっくりとした立体的なシールは、ホログラム加工が施され、見る角度によってキラキラと光ります。ノートのデコレーションだけでなく、ネイルシールとして使う人も。〝ゆるい〟イラストが描かれたシールは、外国人観光客に人気。キャリーケースや透明なスマホケースに貼ることで、個性を出せるとか。
愛用の文房具
「ほぼ日手帳」(ほぼ日)
「uni:ball one」(三菱鉛筆)

久保さんは自他ともに認める文房具好き。手帳はメモ用、日記用など5冊を使い分けているそう。シールを貼ったり、シールの色に合わせて40本以上あるボールペン(写真右奥)で文字の色を変える工夫も。
「日々の出来事をメモ用の手帳に走り書きして、時間のあるときに日記用の手帳にまとめ直しています。手帳に書くこと自体が趣味のようなものですね。書き込むごとにノートの厚みが増すので、達成感もあります」(久保さん)

教えてくれたのは
京都ロフト 文具雑貨フロア担当
西村由紀乃さん
読者に聞いた愛用の文房具
読者にアンケートを実施したところ、愛用品とそれにまつわる思い出が集まりました。文房具を選ぶときのこだわりも聞きましたよ。
「W’s Diary 和田裕美の営業手帳」
営業職ではありませんが、大変使い勝手がよく10年以上リピート。自分なりにアレンジして、体調管理や食事内容、体重の変移などの記録をつけて、10キロのダイエットに成功したこともあります! 過去の手帳も全てとってあります(SAさん)

「父の遺品の万年筆」
2年前に他界した父の遺品。以前から使っていた万年筆も数本あるのですが、なぜか父の万年筆が一番手になじんで、書き味も気に入っています。日記をつけるときしか使わないとはいえ「お父さん、今日はこんなことがあったよ」と話しかけているような気持ちになります(SKさん)
「ジェットストリームシリーズのボールペン」
社会人になって10年たってから専門学校に入ったとき、このボールペンに出合いました。周りの現役生のノート取りのスピードについていけなかったのですが、書き心地のトリコになり、書くことが楽しくなってすぐ追いつけました(FHさん)
「電動鉛筆削り」
私が小学生のときに使っていたもの。当時、塾でもらったシールもそのまま貼ってあり、我が子が小学生になったときも活躍。今でも立派に働いてくれています(HTさん)
「エルメスのボールペン」
仕事で、お客さまに数千万円の契約書にサインしていただくことがあります。10年以上前に「安価のボールペンでは失礼ではないか」と当時の上司に指摘され、購入。少し重さのあるボールペンですが、それをご指摘されたときには「ご契約の重みですね」とお話しています(RNさん)

文房具を選ぶときのこだわりは?
使いやすさとデザイン、そして価格のバランスが良いもの(YKさん)
仕事用は効率重視、プライベートはデザインなど(YMさん)
小型なもの。持ち運ぶときにかさばる文房具は避けています。または多機能なもの(YOさん)
自然で静かな色合い、流行がないもの(RYさん)
(ペンは)長期間使える、詰め替えできるものかどうか(AKさん)
仕事着のポケットに挿してかわいいペン(EAさん)
(2025年3月8日号より)
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